「その言葉が言えるまで・・・罪の意識を乗り越えて、」CLOSE クロース 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
その言葉が言えるまで・・・罪の意識を乗り越えて、
心の成長、そして身体の変化、
性別の違和感を感じる第一次性徵期真っ只中の13歳の二人。
その言葉に出せない違和感や同性への思慕。
子供の視点に立ち、13歳の目線で繊細に描く作品です。
自殺(したらしい)レミ。
黒髪の角度よっては女の子にしか見えないレミ。
金髪の男の子がレオ。
金髪が小刻みにウェーブしていてとても美しいレオ。
この映画、私的にはイライラ。
知りたい事が、中々明かされない。
それとカメラ(撮影)が、
私からしたら見たいものが見えない。
レオの農園の農作業も、季節が変わり収穫した作物や
種付けや、レオがとても真面目に農作業をお手伝いする偉い子、
なのは分かるのだけれど、もっと高いところから遠目に写して、
もっと風景の全体を見たい飢えを感じて堪らなくなる。
台詞は知りたい事が、語られない・・・
なので、正直なところ欲求不満も溜まりました。
バス旅行に現れなかったレミ。
到着間際のバスの中で、事件?
異変が教師から知らされる。
直ぐに察したレオは
「病院にいるの?」と訪ねる。
聞かれたレオの母親は、
「もういないの・・・」
とだけ答える。
(無表情なレオが、無表情だから、痛々しい)
自殺という言葉は一度も使われない。
まるでその言葉を出すと、ダイナマイトで爆発し、
ダムが決壊する様に「タブー視されて、・・・」
そして生徒たちには「心のケア」だと思うけれど、グループセラピー」
として「レミってどんな子だったのか?」話し合われる。
レミのことを、女の子の一人は、
「明るい子だった」とか、
別の男の子は、
「とてもハッピーそうだった・・・」
能天気に、そして他人事として「ハッピーそう・・・」
レオがその言葉に反応する、
(ハッピーだったなんてなぜ言えるんだ!!)
レミとレオを《カップル》と囃し立てたクラスメート。
レオの心に秘めた秘密がレオを苦しめている。
(絶対に秘密を心に隠している)
冒頭のシーン。
夏休み休暇の日々。
頻繁にに裕福なレミの家に泊まりに行くレオ。
スキンシップ、
ピッタリとレミの背中に抱きつく姿勢のレオ。
シーツに包まりじゃれ合うレミとレオ。
(危険な匂いがする)
オーボエが得意で音楽家を目指しているレミ。
「オトコオンナ」の言葉が校庭のどこかから聞こえる。
レオは次第に男の子らしく成長して、
アイスホッケー部に入り夜の練習に通う。
男らしくする事で、レミとの距離を取る。
スケートリンクを見に来たレミは、なんか違和感がある。
カッコいい男の子の出待ちする女の子のファンみたい。
そんな雰囲気がある。
レミの家をレミの死の何ヶ月後かに訪ねたレオは、
お母さんから、「何があったの?」と直球質問を受ける。
狼狽えて何も答えず、慌てて帰宅するレオ。
それでも、レミのお母さんの勤務する産院に訪ねるレオ。
送ってもらう車の中で、遂に真相を話す事が出来た。
「僕がレミを○○○○○」
この映画のまだるっこさはローティーン(13歳の2人)
(レオの幼い知能に合わせた会話と、
風景も身長に合わせてるからカメラが上を写さない・・・
全部じゃないけれど、低い位置ばかり多く写している・・・
今、フッと気付いたけれど、・・・なんかそんな気がしてきた。
13歳の子供に言える言葉・・・
当然、うまく気持ちを言葉になんか出来ない。
だから「自殺」なんて言葉は刺激がキツ過ぎるから
誰も言わない。
感じやすい、傷つきやすい、脆いガラスのようなこころ。
《あやうくて砕けてしまうこころ》
それを掬い取っている映画なのだと思う。
レミはレオが原因で、死んだ。
それもキッカケかも知れないけれど、女性の心を持つ自分が、
男性の身体を持つことに戸惑い、
絶望したのも一因ではないのだろうか?
ルーカス・ドン監督の処女作「Girlガール」では、
トランジェンダーでバレリーナを目指す主人公が
女性として生きる決意をする映画でした。
(とても衝撃的なラストシーンだったのですが、)
レミはレオに拒絶された事とともに、男性として変化していく自分に
失望し、女の子でないからレオは好きになって、くれない、
レミの愛を受け止めてくれない・・・
そう思ったのだとも思う。
レオがやっとレミのお母さんに、心にしまっていた秘密を話せた。
そのことはレオの成長・・・レミの死への罪悪感を乗り越えた・・・
事だと言える。
でも私には死んだレミ(グスタフ・ドゥ・ワエル)の、
はにかむように微笑む顔が常に目に浮かぶのだった。
13歳の進学期9月から始まり、その学期の終わる7月。
見違えるほど大人びた知的な視線を持つレオ(エデン・ダンブリン)
悩み抜いた数ヶ月で見違えるほど成長した姿に驚いた。
(すごく背が伸びたね)
そして一番辛かった事。
子供に自殺されたレミの両親の苦悩。
その癒えない悲しみに、
涙しました。
この作品は思いれのある映画でした。
この男の子の目の表情が素晴らしく台詞が少なくても訴えてくるものがありました。
わたしは気づきませんでしたが…
知りたい事が明かされない
見たいものが見えない
とありましたが。
確かにそうでした。
彼の(レオ)の目線から心の葛藤を描いていたのかなと思いました。
だからレオの悲しみが心の中に響いて知らないうちに涙が出てきたのかと改めて思いました。