「うつくしくてかなしい。」CLOSE クロース だいずさんの映画レビュー(感想・評価)
うつくしくてかなしい。
相手に感じる親しみが、性欲を孕んでいるかが恐らくまだ未分である二人の話。
レオとレミという13歳?の男子で、新学期から中学生。
レオが主人公なのかな。毎日一緒に遊んで毎日一緒に、時に同じ布団で眠り、学校でも一緒にいる。
幼子と母親のような、身体接触を伴う親密さは、13歳の同級生たちには異質に見え、
二人は付き合ってるの?と女子たちにからかわれ、レオは必死に否定する。
レオ自身にレミへの性的な興味などがあるかは、全くわからない描き方だった。
ただ、”ふつうの男らしさ”を身に着けなければ、という圧力は感じていたようで、
レミを遠ざけ、男らしさを補強?するためのツール的に、アイスホッケーを習い始める。
クィアなものへの忌避ではなく、集団からの阻害を忌避したいように見えた。
そこはよくわかる。集団内で異質であることを受け入れるには、13歳は幼すぎる。
四十路の今では自らの異質さに抵抗がない私も、13歳のころには”みんなといっしょ”という安心を、心底欲していたもの。
レオのアイスホッケーのような努力を、私だって必死でやっていたもの。
”みんなといっしょ”が欲しくて、バレーボールやってたもの。
一方レミは、集団内での異質さに無頓着なんだと思う。オーボエが得意で、一人っ子。お母さんがすごくおおらかで素敵な雰囲気の人だった(レオの父母・兄がだめってことではない)。
レオへの親しみに、性的要素があったかは定かではない。こちらもその点は未分な気がした。
自らの異質さに無頓着でいられる、ある種の強さは、13歳が持っているのが珍しい類だと思う。
レオにとっては、考えられないことで、そのまんまでいようとするレミと対立してしまう。
結果、レミは、自死する。
この展開は、全く予想しておらず、辛かった。
レミが儚くなって、レオは当然ショックを受けているけど、そのショックが自分がレミを拒絶したからという
罪悪感であることは、誰も気付いていないし、誰にも言えない様子だった。
レミの両親は、時間がたっても悲しそうだし、自分も悲しい。
一心同体と言えるレミとレオが、小さな対立を経て一人と一人になることは、思春期の必要な成長なので、
対立自体は避けようがなかったと思う。
レオの拒絶は、結構強かったは強かったけど、レオが悪いわけではない。異質さを恐れることも自然なこと。
イニシエーションが一生の傷みたくなってしまって、つらかった。
そして、レミを死なせないことはできなかったのだろうか、としばらく思い悩んだ。
もちろん虚構であるし、実際のレミはいないけど。
レオはどんどん自分を罰し、最終的には、レミの母親に、きっとレミは自分のせいで死んだことを伝える。
レミの母に、話したくてでも言えなくて、家に行き、職場に行き(新生児室のナースだった)、家に送ってもらう
途中で話をし、森の中で苦悩をぶつけて受け止める。後半とてもよかった。
レオのおうちは、花卉農家で、多分香料を作るための花らしく、収穫は花部分のみベニバナみたいに摘み取る。
美しい花畑と夕空のなかを、まだ一心同体だったレオとレミがごっご遊びをしながら駆け抜ける風景も美しく、心に残った。