劇場公開日 2023年7月14日

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「思春期は言葉にならない感情との闘い」CLOSE クロース iccoさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5思春期は言葉にならない感情との闘い

2023年6月9日
iPhoneアプリから投稿

保護猫の兄弟みたいな絶対切り離せない関係の二人が、思春期の集団の中に入ったことで、自分たちだけの世界から、それを外から見るとどう見えるのかを知ることになる。
一方の成長のスピードにもう一方がついていけなかったのかな。
気持ちが言葉に追いつかない日々。
折れたのは腕じゃなくて心。
会いたい、の一言がこんなに沁みるとは。

もっと年齢がいって、レオが持った複雑な気持ちを言葉にできて、レミが納得がいくだけの説明ができたなら結果は変わったのだろうけど。
思春期の入り口付近はまだまだ大人になるまでの第一脱皮段階みたいなもので、全部が未発達だから、気持ちなんていう不確かで目に見えないものを相手に伝わる言葉で表現するなんてなかなか出来ないよな。
何も言わなくても伝わる仲だったのに、片方がもしかしたらこれは他人から見たらおかしいことなのかもしれない、という思春期にありがちな揺らぎを持ったことによって二人は固く結ばれていた心のバランスを崩してしまった。

子猫みたいにくっついて寝て、繊細なレミが不安になったら文学的なアヒルの例えで寝かしつけしてくれて。一人っ子で両親から惜しみなく愛をもらって大事大事に育てられてたレミにとって、レオは間違いなく血より濃い相棒だったと思う。
二人でいて完璧に楽しかった世界から、一歩外へレオが踏み出してしまったけど、レミはその先に一緒に行けなかった。
だって彼はまだその先に興味もないし、二人の関係に疑問も不安もなかったから。
多分裏切りに近い衝撃があっただろうなと思う。
けどレオが外に一歩踏み出したそれは、間違いなく人として誰もが成長の通過点で経験することで、特別なことじゃない。それが皆んなわかっているから、観ている方も余計に辛いのだ。

泣く準備はして観た映画だけども。
彼らの言葉にならない感情が、本当に辛い時、しんどい時は涙すら出ない気持ちが沁みてくる。演者が悲痛に演じながらも泣いてない場面でも、観ているこちらは涙が止まらん。

アフタートークで奥浜レイラさんが、この映画は社会がどういう規範をもって、子どもたちへどのように影響を与えていくのか、という話でもあるのでは、というようなことを仰っていたけど、本当そうだなと納得した。
子どもの世界から学ぶことは多い。
大人の世界と必ず繋がっているからだ。

あの頃の気持ちだけじゃなく、今、子どもたちとどう関わるべきかも今一度考え直す素晴らしい作品だった。

icco
iccoさんのコメント
2023年8月12日

本当ですね。
これはレオの対応は思春期としてはごく普通のことだったと思います。それがわかるからこそ、観ている私たちも辛いですね。。

icco
humさんのコメント
2023年8月12日

〝気持ちなんていう不確かで目に見えないものを相手に伝わる言葉で表現するなんてなかなか出来ないよな。〟そこへ思春期の〝揺らぎ〟によるバランスの崩れ。
レミもレオも成長の中で戸惑った。
悪気などなく訪れた辛い別れ。
もやもやとする不安から絶望感を抱いてしまったレミと後からひとり自分を責めるレオを抱きしめたい気持ちでした。

hum
iccoさんのコメント
2023年8月1日

仰る通りだと思います。
世間の本人は全く悪意なく発する偏見がどれだけ人を傷つけるのかという、わかりやすい例に見えました。

icco
Mさんのコメント
2023年8月1日

ある女の子の一言が、こんなことになるなんて。でも「ある女の子の一言」は、今の社会の持つ姿そのものなのかな、などと考えました。

M