「採点5.0を超える超良作。多くの方に見てほしい良作。」トリとロキタ yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
採点5.0を超える超良作。多くの方に見てほしい良作。
今年108本目(合計759本目/今月(2023年4月度)3本目)。
シネマートではやや珍しいフランス映画の放映。
…が、これが個人的には大当たり。少なくとも「2023年上半期のトップ10」には残るかなという印象です。
お話自体は架空のもののはずですが、諸般の事情があってベルギーにやってきた2人が、滞在する権利を得るために「意に沿わない」職業を強要させられたり(難民問題、難民に対する人権感覚の低さ)、あるいは、一部の方が触れられていましたが、「男女同権思想に対する問題提起」(女性主人公のロキタに対して性的要求をする人が何名もいる)という、少なくとも「2軸」の問題提起が存在します。
お話自体は架空のはずですが、参照されているベルギーは、日本からみれば、「一見すると」男女同権思想や難民問題に関しては「多少の差はあっても」ベルギーのほうが先進国のように「一見」見えます。しかし、映画内でも示されているように、ベルギー国内でさえこうなのであり、難民問題や男女同権思想(特に女性に対する理不尽な性的要求の在り方)等が、「比較的先進国と思われる」ベルギーにおいても、「日本とそうそう変わらないレベル」になっていたのは「ある意味」驚きでした(この点に関しては、作品自体は架空ですが、ベルギー国内においても多少の差はあるとしてもこういう感じなのでしょう)。
確かに難民問題といえばどこの国でも「積極的に」歓迎する国というのは皆無ではないかと思うし、多少の差はあっても、「一定程度の差別」を受けることは確かです(人権の「先進国」と言えるベルギーであっても)。しかし、難民になることや「男女の選択」というのは個人に帰責性がないことです。それを各国(日本も含む)がただ単にたらいまわしにしているのがリアル世界の今の姿であり、また、リアル世界を考えると、ロシアとウクライナの戦争から発生する直接・間接的な難民、あるいは、クルド人難民等、「今も未解決」な問題が山積しているのが事実で(クルド人難民については、2022年の「マイスモールランド」が詳しいです)、それをどうとるかは、各国の裁量権はあるものの、「人権の先進国」であるベルギーがここまで支離滅裂だった、というのは驚きです。
翻って日本を見ると、2022年に「マイスモールランド」が公開されてから10月か11月だったかに難民申請がリアルで認められた事案が実際に存在し、日本では「難民問題」に関しては聞き取り調査を行い、「明確に難民として認められる」ものについては救済される扱いになっています。ただそれはあくまでも入管法ほかの個々の個別の事案ごとの聞き取り調査の結果、行政が裁量で認める認めないの話であり、「その救済からこぼれている方」も多数いるのもこれもまた否定のできないところです。
ここをどうとるかは難しいものの、日本がアメリカに次ぐ第二の経済大国であることを考慮すると、「本人の聞き取りや現地調査等をしっかりと行い、明白に難民申請が認められるか、明白に送り返すことが人道に反するようなものはすべて認めるべき」というのが個人の信条であり(これが国際協調というものです)、この映画は「日本」を舞台にしていませんが、「日本で」放映されている映画ということを考えると、「ベルギーと日本の差」も考える必要があり、こういったことを(間接的に)問題提起された作品は極めて評価が高いです。
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(加点0.5/映画の扱う内容に好感が持てる/評価上5.0を超えられないため、ここで記載)
・ 難民問題というのは、今もまた秒単位・分単位で発生している事柄です。いわゆる「南北格差」や「本人に帰責性のない、生まれ育った国の突然のゲリラ抗争」で逃げてきたなど、「本人にいかんともしがたい部分」は当然存在します。それを支えるのが、社会的に余裕があり、また多様性を尊重する先進国の「当然の役割である」という考え方に立てば、この映画で述べていることは、非常に好感度が高いです。
趣旨的に「若干、一部」「マイスモールランド」等と(その趣旨が若干)重複する部分もありますが、「難民とは何か、難民に対して先進国は何を施すのが良いのか」といった問題提起が感じられる点については、きわめて高く評価しました。
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