「前衛的かつ変態的な正統派B級映画がやってきた!」クライムズ・オブ・ザ・フューチャー 松王○さんの映画レビュー(感想・評価)
前衛的かつ変態的な正統派B級映画がやってきた!
80~90年代に「スキャナーズ」「ザ・フライ」「クラッシュ」「ビデオドローム」「裸のランチ」で一世風靡した鬼才デビッド・クローネンバーグの久々の新作。
B級映画好きには評価の高い作品を鑑賞してきました。
で、感想はと言うと…変。
凄く変。頭がおかしい。変態。
だが、これらの全ての言葉はデビッド・クローネンバーグ作品からすると凄く褒め言葉w
いや~久々に観たわ。前衛的かつ尖って、頭のおかしい作品w
それでいて退廃的思想の近未来に独特な映像美。
前に向いている様に見えて、破滅の美学が漂い、哲学的に感じる。
こんな変態的な正統派B級作品。結構好きなんですよねw
ポスターから凄く変なビジュアルであれが椅子と分かってないと後頭部から変な怪物に食われそうになってるw
ストーリーも普通に観るとツッコミどころ満載で何故こう考えた?何故こうなる?と言う点が多数。
痛みが無くなった結果の未来とありますが、“ホントにそれだけか?”と考えたくなるぐらいに元から変な人達が多数登場w
ソールが寝ているベッドも椅子も気持ち悪さ満点。欲しくはないけどちょっと牽かれるデザインw
それぞれの名前も何処か中二病的で伝説の人体解剖装置「サーク」なんてその最たるっぽいw
普通は痛覚が無くなった先にある退廃的な未来を描くだけで終わるところが大半であるけど、普通の作品がクライマックスに持ってくる描写や思想のの果てを意図も簡単にサクッと前半に披露する惜しみ無いサービス精神w
もちろんその先にある更に混沌としている先に理解を得ようとしていないところが如何にもデビッド・クローネンバーグっぽい。
劇中に「新たに生み出され、タトゥーを施された臓器の摘出」の行為は新たな性行為であると言う言葉になんか納得。
人が進化する過程において、様々な身体の器官や部位は長い歴史の中で無くなってきていて、物凄く先の未来では人間は頭と指だけになるなんて記載を読んだことがあるけど、いろんな部分が無くなったりするとその反動で思いもしない進化が意図せずに生み出されると言うのもあながち無いとは思えない。
その要らない臓器を取り出す行為に性行為と位置付け、食欲と睡眠も巧みに絡ませている。
人間の三大欲の食欲・睡眠欲・性欲をちょっと形を変えて出しているところがこの作品の人の進化に伴いながらも本能を描いているんですよね。
難点があるとすると後半のキーとなるプラスチックを食べる少年のくだりが薄いし少ない。
彼の存在が未来を暗示しているのなら、冒頭の海辺と青空の描写が合わない感じと余計に難解にしている。
かと言って、あの冒頭が無かったら統一感は出るけど、ちょっとストレート過ぎて、クローネンバーグっぽくない。もう少しソール・テンサーとカプリース、そして少年をもっと複雑かつ直球に絡ませても良かったかな。
耳を身体中に取り付け、目と口を縫われてダンスしている男のシーンはもう少しやりようによっては意図や意味合いが深くなるのに、あれだけだと先行的なイメージ感が強くなり過ぎてしまっている。口や目を縫う行為は呪いを意味しているけど、あれもアートとするのであればもう少し劇中で断片的でも描写があれば良かったかなと。
あとレア・セドゥ演じるカプリースの額に人体改造が施されたのはラスト間際では意味が薄くなるのと、蛇足感が強いかなと。
人体改造を含む「ボディ・ホラー」なるジャンルは結構前から存在していて、定期的に映画作品として出てくるけど、個人的にはボディ・ホラーの傑作は1989年の「鉄男」かなと。あの当時見た鉄男に圧倒的な前衛感を感じましたが、それでもあれを観当時て分かったか?と言われたら分かんなかった。
分かったつもりでいても分かんないものは分かんない。だけど、いろんな作品を観ていくとその答えが断片的かつ細い糸で繋がったように感じるときがあるんですよね。
この作品は多分その1つのピースである感じがしますが、宝物のようでいて最後までその用途が分からずに、宝箱の底に埋もれている可能性も高いw
この時代にボディ・ホラーは些か古く感じますがそこがデビッド・クローネンバーグらしくて良い。
良い映画でもないし、観る人を確実に選ぶ作品かと思いますが、ラストを含めて、デビッド・クローネンバーグを堪能出来る作品かと。
エロく、グロく、尖ってていて群れない感じがなんか好き。
とりあえず、ホルモンとチョコバーと流動食的な食べ物は当分パスしたくなる感じの作品ですw