劇場公開日 2022年7月1日

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「罪悪感と欲望の狭間」哭悲 THE SADNESS rainさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 罪悪感と欲望の狭間

2025年9月3日
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昔、好きで見ていた『TWD』は、ゾンビに噛まれることで、感染、死亡して、ウォーカーとして蘇るみたいなストーリーだったと思う。だからもちろんグロい描写はあるんだけど、彼らウォーカーは、人間に襲いかかることを目的とする、知性のない動物のようなもので、残虐的な行為をしたくてしているわけではなく、彼らの目的が結果として人間側を恐怖に陥れるだけだった。だから、TWDにおいて必要以上に残酷な描写といえば、ゾンビvs人間ではなく、人間vs人間だった。この映画もそうだけど、結局自分たちが恐れているのは、理性をもたない動物ではなく、知性を持つ人間だってこと。

哭悲における「ゾンビ役」は、生きているので理性はあるし、罪悪感ももちろん持っている。ただ、人間の隠された欲望を、隠すことができなくなった、半野獣のような状態。だからこそ観客側は、過激なエログロ描写に嫌悪感を感じつつも、自身にその欲望がまったくないかと問われると、はいとは言い切れない人が多いのではないか。

何巻だったか、進撃の巨人の、人は残酷なのが見たいんだよってセリフを思い出し、改めて、自分に言われているような気がした。やりすぎだ、倫理観のかけらもないと糾弾しても、それを観にきたのは自分だろと、後ろ指を刺されるような感覚。目を瞑りたくなるような展開なのに、目が離せない矛盾。自身の残虐的な思考回路に、我ながら少し陰鬱としてしまったが、敢えて言葉を選ばずに言うなら、良い映画を見たなと思う。

rain
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