「狂人病かと思いきや?」哭悲 THE SADNESS 雨雲模様さんの映画レビュー(感想・評価)
狂人病かと思いきや?
ウィルスによる未曾有の危機と概要欄にあったので、気になり見てみたら目を瞑りたくなるシーンの連続。グロが苦手な方は閲覧しないほうが良いかもしれない。
ウィルスによる脅威を受け続ける台湾。主人公カイティンとパートナーのジョンジュー。
序盤のジョンジューがベランダから覗くと白髪のお婆さんが屋上に立っているがよくよく見たら腹部には大きな返り血を浴びたであろう血痕があり、何事かと思いながらもカイティンを会社に送るまでの道程でお婆さんが亡くなり警察による捜査が行われている現場を目撃する。
ウィルスが突然変異により、人間の脳にある知性や理性がはたらく機能がやられたにしても、感染して発症するスピードがはやくないかが疑問ではあるが、前述したように台湾はウィルスによる脅威に晒されている。
ジョンジューはそのために仕事が激減してカイティンを支える主夫となっている。
したくてもできないことの苛立ちや鬱憤は捌け口や発散方法がないと溜め込むしかない。社会のせい、ウィルスのせい、皆が思っていても中々口に出せないやるせなさやイライラがやがてウィルスのせいによって違う形で発散されたのではなかろうか。
電車の中のおじさんも、ビルを管理しているオーナーも心の裏側で思っていたこと、或いは隠していたことが、避難指示が出たと同時に露わになったのならば、ウィルスのせいというより、社会に対する苛立ちがウィルスが拡散され今まで溜め込んでいたストレスが溢れた結果。
ラストのカイティンを迎えに来たジョンジューは既に発症の傾向があり、一緒に避難したかったであろうカイティンも、問いかけにジョンジューが、君の肉を食べたい等と普段とは違う様子にカイティンが見切りをつけ、ひとりヘリコプターが待つヘリポートへ向うシーンが、二人の別れを意味していたのだろう。
意味がわかったのか、ウィルスを発症してもう何も出来ない無力さから、ジョンジューがカイティンを見送るラストが切なかった。