「これもまた、体調の良いときの鑑賞を推奨したい一作」哭悲 THE SADNESS yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
これもまた、体調の良いときの鑑賞を推奨したい一作
たまたま『ボイリング・ポイント』と続けて鑑賞して、後味の悪さに二度にわたって打ちのめされる、という経験をした観客による感想です。
良くあるゾンビ映画とパニック映画のミックスじゃない?という印象を持たれそうで(実際そうなんだけど)、畳みかけるショック描写の演出など、シーンごとに見せ方が練られていて、作品としての完成度の高さが印象的でした。アニメーター出身で、これが劇場長編映画の初監督作品であるというロブ・ジャバズの並々ならぬ手腕を感じさせます。
予告編で結構いろいろな場面を見せているんだけど、その「前フリ」が強烈で、直接的な暴力という意味でも言葉の暴力という意味でもかなり突き抜けた感があります。ジャバズ監督自身は単に残酷描写が売りのホラー映画を作ったつもりではなく、コロナ禍によって変化した世界を描きたかったとのこと。確かにウイルスの遺伝子的な変化によって急に人々が凶悪化するという設定は、まさに現在、世界中の人々が思い描いている悪夢そのものです。単に下劣に思えるようなセリフも一つひとつを検証して、ぎりぎり悪趣味の域に達しないようにしているとのこと(十分達しているようにも思えるけど…)。
人が急に怪力のゾンビになるのではなく、あるちょっとした気質的な変化で異常を来してしまうという設定、そして黒目が拡大するだけで人相を異様に感じてしまうという人の認識を上手く使って、凝ったメイクに依らずして異常化した人々を描くと工夫は見事です。
いろいろ見所はあるけど、基本的には宣伝文句の通りのエクストリーム・ホラー(R18+)なので、心身ともに良好なときの鑑賞がおすすめです!