劇場公開日 2022年7月1日

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「それが人間の持つ本来の残虐性だとしたら…。」哭悲 THE SADNESS レントさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5それが人間の持つ本来の残虐性だとしたら…。

2022年7月31日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

興奮

やたらとゴア描写が話題の本作は今までのいわゆるゾンビパンデミックものとは一線を画する作品。
開始早々繰り広げられるパンデミックによる惨劇は今までの同様作品のパターンを踏襲しながらも、本作特有のパワー溢れる展開で新鮮味を感じた。

何よりも本作は人間が持つ本来の残虐性にフォーカスしているところに新鮮味を感じる。劇中、感染者たちによる様々な残虐行為が繰り広げられるが、少し立ち止まって考えるとこれは人類が今まで行ってきた行為を凝縮して見せているだけではないかと思える。
人類史においてネイティブアメリカン、ユダヤ人、中国人などに対する虐殺が行われてきた。現在ウクライナでもそれが進行形だ。戦時下では特に人類はその残虐性を発揮してきたと言える。ただ、それは戦時下に限られない。アメリカでの銃乱射事件、日本での無差別通り魔事件と、思えば毎日のように世界中で凄惨な殺人事件が起こっている。
なんだ、本作で描かれているのは人類史的に見れば日常茶飯事的なものだとさえ思えてしまう。そう思えてしまうこと自体が恐ろしいのだが。

本作はホラー映画慣れしている人にとっても満足のゆく見せ方が上手い作品だと思う。個人的には列車内の惨劇で頸動脈からの出血が天井まで噴水のように飛び散るシーンに興奮した。誤解をされては困るがあくまで演出がうまいなという意味で。
そして本作は題名が意味する通り、感染者たちが元の感情を有していながら残虐行為を抑えられないというところに人間の持つ業の深さをみいだしている点でも高く評価されるべきだろう。
自分が残虐行為をしてしまうことへの罪悪感をひしひしと感じながらも、考えうる残虐行為をせずにはいられない。この欲望との葛藤、本作は人間の持つ本来の残虐性とそれに対する罪悪感とのせめぎあいを見事に描いた秀逸な作品ではないか。また、感染者とそうでない人間との境界線をあえてわかりにくく見せてる点も秀逸。電車内でヒロインに話しかける中年男性はいったいどの時点で感染してるのか、ウィルス研究者の最後の最後に出た本音など。本作をただのスプラッター映画と片付けることができないものを感じさせられた。

レント
NOBUさんのコメント
2023年1月6日

おはようございます。
コメント、ありがとうございます。
今年も宜しくお願いいたします。

NOBU