「女性の地位向上に貢献した活動家を描き、啓発効果も大。冗長な構成が玉にキズ」グロリアス 世界を動かした女たち 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)
女性の地位向上に貢献した活動家を描き、啓発効果も大。冗長な構成が玉にキズ
日本ではかつてウーマンリブ、昨今はフェミニズムという言葉で語られることが多いようだが、社会的に女性が男性よりも低く見られていた時代、男性だけでなく女性の大半もそれが当たり前と思い込んでいた頃に、ジャーナリストとして働き始め、女性解放運動を先導して米国社会を、そして世界を変えていったグロリア・スタイネムの半生を描く伝記ドラマだ。思い起こせば中学の英語では独身女性のミス、既婚女性のミセスという敬称を普通に教わったが、ある頃からじわじわとMs.(ミズ)を見聞きするようになったのは、グロリアが創刊した雑誌のおかげだったということを本作で初めて知った。
日本でも少しずつ女性の社会的地位が向上しているとはいえ、組織や家庭の中で依然として男性優位の状況が残っていることに理不尽な思いをしている女性たちにとっては特に、勇気づけれられる内容になっている。男性観客の中でも、知らず知らずのうちに「男性らしさ」「女性らしさ」というステレオタイプが刷り込まれていた面が少なからずあったと気づかされる人が多いのではないか。
監督・共同脚本は、映画では「フリーダ」「アクロス・ザ・ユニバース」、舞台ではブロードウェイ・ミュージカル「ライオン・キング」などの演出で知られるジュリー・テイモア。グロリアの人生をじっくり丁寧に描くという意図は確かに伝わってくるが、現在69歳、大御所になったせいで周りに意見できるような人がいないのか、世代ごとにグロリアを演じ分けた女優たちが内面を語り合ったりする演劇的なパートがたびたび挿入されるなど、だらだらとした構成が冗長に感じられた。本編147分だが、2時間以内に収まっていたらもっと評価できたように思う。