君を想い、バスに乗るのレビュー・感想・評価
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終活のバス旅行日記
ロードムービーにありがちな不自然さを感じさせない路線バスの旅
以前、日本にも似たような設定のロードムービーがあったが、キャンピングカーで旅をする主人公が、そんなに多くの人々や出来事に遭遇するわけがないだろうと、不自然さを感じざるを得なかった。
その点、この映画の移動手段は、自家用車でも、鉄道でも、長距離バスでもなく、様々な人々と乗り合わせる機会のある路線バスであり、しかも、シニア用のフリーパスが使えるからという理由も、ちゃんと用意されている。そのため、ロードムービーにありがちな、わざとらしさや違和感がなく、たくさんの出会いや別れが、自然な形で描かれている。
道中、主人公が回想する過去は、断片的で、時系列のとおりにもなっておらず、何があって、何のために旅をするのかが分からないため、特に、最初は、少しイライラさせられる。だが、この映画が、悲しい過去を振り返るよりも、生きている今を慈しむことに重きを置いていることが分かってくると、ゆったりとしたテンポに身をまかせ、旅のエピソードを楽しめるようになる。
主人公がトラブルに巻き込まれるたびに、必ず誰かが救いの手を差しのべる展開は、ご都合主義にも思えるが、それと同時に、人間の善意を信じている作り手の姿勢も伝わってきて、暖かい余韻に浸ることができた。
これから出逢う想い出を
妻に先立たれた老人の男が、ある目的の為にスコットランド最北端からイングランド最南端へとバス旅をする物語。
老体に鞭を打ち、長い旅に出るトム。「妻との約束」とのことだが、目的地へ行く理由や、何故妻と2人では行けなかったのか、頑なに手放そうとしないカバンは何なのか、そして何故そんなに焦っているのか・・・色々と気になりつつ、バス旅は続く。
終始、ちょっとしたトラブルとその都度見せるトムの勇気や周りの人の優しさにホッコリするロードムービー。トムの頑張りを乗り合わせた人が動画投稿し、いつの間にか有名になっていくトム。
後半になり、上述の疑問が観客側にも鮮明に。成程~そういう理由で・・・。
ちょっとさすがに皆親切すぎでしょ~現実はこんなんじゃ・・・なんて思ったり、良い話とは言え動画投稿にどうしても少なからず嫌悪感を覚えてしまうワタクシだが、それでも本人はいざ知らず、皆に出迎えられた所なんかはググググッときた。シンプルではあるかもだけど、クライマックスも良かったですね。
上映時間も90分に届かないコンパクトさ。このくらいのボリュームが一番好きだけど、逆に本作はもうちょっと時間使って大袈裟に泣かせに行っても良いかなぁなんて思いつつ、やっぱりこの規模でやるからこそ、らしく光る作品なのかなと思った。
そして何より、ワタクシ自身も人生終盤になった時に、トムのように振り返りたくなる想い出なんてないなぁ~と思い。。
だからこそ、いつか自分自身が再会する想い出をこれから作っていきたい、柄にもなくそんなことを思わせてくれた作品だった。
全英が泣いた!?おじいちゃん回顧録
人生とゆうロードムービー
1350kmを路線バスで旅する、イギリス版終活ロードムービー!
カッコいいおじいちゃん
人生をかけた愛を貫く1350kmのロードムービー
ティモシースポール演じるトムハーパーが亡き妻との約束を果たすためイギリス最南部ランズエンドまでの1350kmをバスで横断する。
本作は題名にもある通り、路線バスということでイギリスの各地をゆったりと巡っており、トムと観客が一体化して各地の人々の違いに触れることができる人間にフォーカスしたロードムービーだった。
本作の主人公はハリーポッターのピーターペティグリュー役で知られるティモシースポールでこれまでのイメージと異なった最高に渋いおじいちゃんとなっていた。トムの持つ優しさが行く先々の人々に伝わっていく様子や巻き起こるトラブルや心温かくなる人情が丁寧に表現されていた。
トムが頑なに手放さなかった鞄の中身が明らかになった時、涙が止まらなくなった。
旅が進むにつれ、明らかになるトムが持つ悲しい過去や妻メアリーへの一生涯の愛を貫くため、信念を持って目的地を目指す姿は心からかっこよく憧れの生き方だと感じた。
エンドロールで行く先々の人がトムを讃えるSNSの様子は心が温かくなった。
人と人が密接に関わることが難しい今だからこそ観るべき映画だと感じた。
淡々と進む旅路が呼ぶもの
(原題) The Last Bus
主人公の気持ちが切々と伝わってくる
老人が主人公のロードムービーである。満身創痍の彼は、亡き妻との約束を果たすために、不自由な身体に鞭打って、イングランドの遥か最南端の町を目指す。
バスを乗り継いでいく設定がいい。飛行機でも特急列車でもない。バスである。妻との思い出が詰まっているバスの旅。しかし彼には残された時間がない。予定通りに到着しなければ、それまで命が持たないかもしれないのだ。
ロードムービーらしく、思いがけないアクシデントが次々と起きる。親切な人もいればそうでない人もいる。不運にめげず、人を非難せず、黙々と進んでいく。流石に名優ティモシー・スポールである。優しくて寛容な老人を枯れた演技で淡々と演じてみせた。それが逆に主人公トムの気持ちを切々と伝えてくる。
「Amazing Grace」を歌い上げるシーンなど、泣ける場面も多く散りばめられていて、演出も脚本もとてもいい。ラストシーンで、トムがバスの旅の道中にスーツケースをとても大切にした理由がわかる。高倉健の遺作となった映画「あなたへ」を思い出した。
心に染み入る傑作です。
トムにとってはバスで横断するその道のりは人生の出来事や思い出が凝縮されたものなのでしょうね。旅自体が人生そのものってよく言われますが、本作を見たら「あぁ、電車よりバスの方が人生っぽいかな?」って思ってしまいました。それは本作の旅途中のエピソード作りが巧みだからそう思ってしまったのかもしれません。まさに喜怒哀楽がたくさん。晴れの日もあれば雨の日も。急な雷雨もあるし。
トムが今住む場所からスタートし目指した場所とその意味が物語が進むにつれ徐々に明らかになってきます。彼が真摯に歩んできた人生をなぞるように、人生で育まれた彼の人格を描きながら。ありふれた人生かもしれないが、深いシワに刻まれた喜びも悲しみも全てかけがえのない人生の証であり思い出。トムにとって愛おしいものなのです。老体に鞭打ちながら愛おしいものに全てを注ぐトムの姿を旅の途中で出会い方々とのエピソードをユーモラスかつハートフルに描き、かつ妙な感動ポルノにならずにとっても爽やかな後味を醸し出してくれます。「さぁ、泣きどころですよ!」演出が全くなく、一人の老人の歩んできた人生を横に寄り添いながら描いているこのスタンスがとっても心地よく、心に染み込んでくるのです。
(ゴール到着シーンは秀逸です。それを描きたいんじゃないんだよ!って製作陣が言っている声が聞こえてきそうな展開です。邦画ではこうはいかないだろうなぁ(笑))
あぁ、なんと素敵な人生なんだろう。こんな人生を過ごしてみたい。愛情に溢れる世界は素晴らしい。そんな気持ちでいっぱいになった作品でした。
心が穏やかになる作品
意外と明るく、ハートフルな、イギリス珍道中
ロードムービーの王道の手法
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