君を想い、バスに乗るのレビュー・感想・評価
全48件中、1~20件目を表示
英国では珍しいロードムービーを人情味豊かに仕上げた名作
イギリスの端から端まで、高齢のおじいちゃんが路線バスを乗り継いで旅をする。そんなティモシー・スポールの相貌と過ぎゆく車窓の風景を見つめるだけで、胸の辺りがキュッと締め付けられるのを感じる。主人公トムの距離移動は、そのまま彼の心の移ろいをも表しているのだろう。ジョン・オグローツからランズ・エンドへと進むにつれ、記憶の中の「若き夫婦」が時間を逆戻りしていくという構造がシンプルながら味わい深い。それに彼の旅がこの国で暮らす幅広い世代、多様性に富んだ人々との出会いの連続となるのも面白い。そこでの交流でちょっとした親切が差し出さるたび、こちらの心はひだまりで包まれるかのよう。多様な形状のバスを乗り継ぎ、スコットランドの大自然からイングランドの市街地を経て、気持ちの良い海風の注ぐ目的地まで。低予算の壁を知恵と工夫で乗り越え、イギリスでは極めて稀な”ロードムービー”を成立させているところに気概を感じた。
人生の後半を迎えるにあたり
近年、90歳で父を亡くし、自分も60代に突入。いつまでも若いと思っていた自分も、いよいよ人生のカウントダウンが始まったと感じるようになった。子供も独立し、夫婦2人の生活。これからどのように暮らしていこうかを、考えさせてくれた。静かだが、とても幸せな映画。
私ならコロコロカバンにするな
ホームムービーでこういうのを作ろうと
思っていたのでのめり込みました。
過去と現在を同じフレームに入れるところは
おお、と。
予定外の出来事をそんなにフォーカスせず
家族の絆が〜なんてこともせず
よ~し、泣くほどでも無いな
と思っていたら
最終バス停で思いっきり泣けました。
ヨカッタです。
80点
4
アップリンク京都 20220616
パンフ購入
亡き妻と共に人生の想い出を辿る最後の旅。
人生は出会いと別れを繰り返し、そして人生の終わりを迎えるとき再会をはたす。
愛する妻と暮らした想い出の地ランズエンドへバスの乗り継ぎだけで目指す高齢者トムの旅を描く。それは人生におけるささやかな幸せと悲しみを辿る旅。
これはトムの孤独な旅のはずだった。しかしゆくところ様々なトラブルや出会いがあり、またSNSの影響で彼は一躍有名人に。しかしそんなことは彼にはどうでもよかった。
彼は愛する妻との約束を果たすために妻を想い出の地へと連れてゆく。
旅はまさに今までの妻との想い出をたどる旅であり、そこには淡い想い出からつらい想い出も。まるでそれは走馬灯のように人生を振り返る旅。
そして旅を終えた彼は愛する妻に再会し、二人を乗せたバスは死のない永遠の世界へ。
鑑賞中涙が四回は頬をつたった。年齢的にこの手の作品は涙腺を刺激する。
実年齢よりもはるか上の役をつとめた主演の方は素晴らしかった。
ちなみにSNSに動画をあげてるやつ、そんな暇あれば車を押すのを手伝え、酔っ払いのレイシストをバスから追い出せと言いたい。
【”想いでの地をローカル・バスを乗り継いで、訪ねて・・”この、年老いた男のロードムービーには、人の善性が詰まっている。今作は、抑制した演技を魅せる、ティモシー・スポールの魅力全開作でもある。】
■最愛の妻を亡くしたばかりのトム・ハーパー(ティモシー・スポール)は、ローカルバスのフリーパスを利用して妻との思い出がある”ランズ・エンド”を目指してのイギリス縦断の壮大な旅に出ることを決意する。
行く先々でさまざまな人と出会い、トラブルに巻き込まれながらも、妻メアリー(フィリス・ローガン)と交わしたある“約束”を胸に、彼は旅を続けるが…。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・劇中に描かれるトム・ハーパーが、経験した事。
1.それは、バス停留所で大切なカバンを盗まれかけたり・・。
- で、彼はその少女に大枚を渡す・・。その意味はラストで分かる。-
2.ヒジャブを被った女性に対し、侮蔑的発言をする若き愚かしき男に対し、毅然と注意する姿。
- 分かっているようで、ナカナカ言えないよね。-
3.終点を乗り越した彼を、家に向かい入れる夫婦の姿。
4.フリーパスが使えないと言い、田舎でトム・ハーパーを降ろす不寛容な運転手。
ー これらの、事柄がSNSで拡散して行く・・。SNSは好きではないが、この拡散の仕方は人間の善性を感じる。ー
<そして、トム・ハーパーが漸く到着した”ランズ・エンド”で最初に向かった場所。
それは、愛娘のマーガレットの墓であった。
そして、彼が大切にカバンに入れていたモノ。
それは妻の遺灰であった。
それを、海に流すトム・ハーパーの姿。
今作は、人間の善性が詰まっているロードムービーである。>
死ぬまでにやりたいことは?
寿命がわかり、身体が動く間にやりたいこと、やらないといけないこと、約束を果たすために、バスに乗る。なぜ、バスなのか。なぜ、向かうのか。イギリスのいろいろな風景とともに出会う人たちの心情に、観ていて何か感じることがきっとあると思います。
道程を辿ってみたい
とても美しい映画だった。
素敵なロケーションのロードムービーでイギリス映画、好きな要素満載。
実話を基にしたと錯覚しそうな、なんかありそうなお話に、SNSで誰でも発信出来てしまう今の世の中を融合させた良い映画。
国民性や個人情報保護などを踏まえると、日本映画では難しいかな?
道中出会う人々も、良い人悪い人多彩なラインナップ。それぞれの場所での回想シーンで、少しずつ明かされる夫婦で歩んできた人生。
若かりし頃の奥さんのコート素敵だなとずっと思っていたけど、缶をくるんでいたスカーフ?が同じ色だったのはグッと来た。
ふと思い出して何度も観たい映画。
残念ながら自分にはあわなかった
亡き妻との約束を果たすためイギリス最北端から最南端へローカルバスを使って移動するおじいさんのお話です。
評価は高いのですが、残念ながら自分にはあわなかった。
手段と目的が混同しているというか、ローカルバスを使う必要性が全く理解できなかったため。
××のため残り時間が少ないのに何故ローカルバスを使うの?昔の思い出をたどるため?目的地にたどり着けないと意味ないよ、お金のため?宿泊費かかるけど割安なの?お金出してでもサッサと目的地に行った方がいいのになあ、と思いながら見てました。
何か重要な要素を見落としているのかなあ・・・
SNSがある今ならではの良作
2022年劇場鑑賞165本目。
多少映画を観る人ならぜったい顔は見たことあるけど何の映画のどの役で、ましてや名前なんか全然出てこないでおなじみティモシー・スポール主演作。
正直あまり期待もせず鑑賞したのですが、いやこの作品、ものすごくじんわり来る良作でした。
老人トムが約1500キロを路線バスで乗り継いで行く話です。テレ東の路線バスの旅のすごい版ですね。路線バスの旅もネットは使わず、制限時間内にゴールをめざすという点では一緒です。彼もスマホなんか持っていませんし、ある理由で無限に時間があるわけでもないのです。
彼が旅をする上で冷たい人もいれば親切な人もいます。前半は特に冷たい人が多い印象で、彼を映しているカメラでさえ彼より早くパンするのでおい、トム映ってねえじゃねえか!カメラまで冷たいな!とツッコんでいました(笑)
ただバスに乗って移動するだけのはずなのにやたらケガしながら旅を続けていき、大小様々なエピソード(2階建てバスの事件は結構大事件じゃないか?)に遭遇しながら目立つので勝手にSNSにアップされるトム。そこらへん最初の時点で終盤効いてくるのは誰でも予想できると思うので書いちゃいますが、これが三十年前ならこういう展開には絶対ならないな、とSNSのすごさを感じられました。
号泣することはないですがところどころツーッと涙がこぼれる作品でした。
ゴールが見えた時
今年も折り返し後半だが、特別なナンバー1はといわれれば悩むところだが、コレは現在ナンバー1になる
キーとして現在の象徴である“スマホとSNS”が伏線である
人生の最後にどうしてもと、北から南にバスで横断
イギリスの風景や空気感をバックに、老若男女と様々な人との触れ合い(いやなヤツ含め)
大切な思い出と悲しい思い出が詰まった地への旅路での、それらが交錯し“人生とは”が凝縮されていたように思えた
しかしあんな辺鄙な到着地である田舎に様々なあらゆる人種がいたが、そうしないといけないのか
時代の要請だろうか
一服の清涼剤
殺伐としたニュースが多い今の時代、老人が1人でこんな長旅をしていたらみんな応援したくなる。そっと静かに見守りながら。
たいしたクライマックスがある訳でもなく、粛々とストーリーは進んで行く。
静かにエンディングを迎えるのもほっこりして良いです。
以下は蛇足です。
1.スコットランド・カレドニア地方から南部方面に行くのであれば、北海沿いにインバネス⇒アバディーン⇒エディンバラのルート設定の方が謎めいていて良かったのでは。
2.スコットランドでゲール語の会話や看板が見られなかったのは残念。
3.ロードムービーにありがちな名所・観光地のシーンが無くて良かった。ヒースの丘はあったけどロンドンなんか出てきたら全くのツヤ消し。
4.挿入歌に1曲くらいウェールズ出身のEnyaの曲を使って欲しかったな。バスの走行シーンにピッタリだったと思う。
5.道中でウクライナ人グループと仲良くなるけど、これはまったくの偶然?
この映画の製作はウクライナ侵攻以前だもんね。
6.邦題はいただけない。単純に「ラスト・バス」とか「最終バス」で良い。
窓から見える景色は妻が丹精込めて作った庭。
誰にも当たり前に訪れる死。死を前に人が行動する時、そこには人の数だけドラマが生まれる。もし妻が亡くなったら、私は何をするだろうか?妻との思い出が深く染み付いた家に住み続けられるだろうか?しかし家が朽ちるのは、一緒に思い出が朽ちるようで耐えがたいので、きっと私は家から離れられないだろうな。。。そんな事を考えながら観ていた映画。周りを見渡すと観客は比較的年配の方が多かった。そして私と同じように共感できるんだろう。時折啜り泣く声が聴こえていたのが印象的だった。若向けの映画でないのは明らかなので、若い人が観てもピンと来ないかも知れません。
彼が目指した場所、遂げたかったこととは。
今年のMyベスト10入り確実。90歳の老人によるスコットランド北端からイングランド南端まで1350kmに及ぶ路線バスの旅を描くロードムービー。なぜバスでそこを目指すのか…小さな出会いやアクシデントを繰り返しながらも彼の過去と旅の謎が少しづつ明らかになり…しみじみと泣ける良作。
過去の回想の映像や挟み込み方がとても上手い。過去についても、現在起こることについても、説明しすぎず描きすぎない。何を話したの?なにがあったの?それを想像する余白を残し、すべては描かない。そういう作品がすごく好き。その方がリアリティも出るし。
現在の険しい顔のトムに対し、若い頃のふたりがほんとにかわいくて美しくて、途中からだんだん過去のシーンが映るだけで訳もなく泣いちゃう。そしてイギリスの雄大な自然の風景、都会の街並み、バスの車窓からの景色やバスの車種も変わっていくのが一緒に旅してる感じにさせられる。
やっぱり日本版のポスターと邦題はほのぼのにされがち。羊は出てくるけどこんなシーンはないしね。
原題の「The Last Bus」の方がLastに何重もの意味がこもってて良い感じがする。「過去に戻ってみることで、彼は未来を見つけた」っていうキャッチもいいよね。
既婚者の皆さんには、それぞれのLANS END があるのだろうか?
UKのお爺さんの路線バスの旅。
「THE LAST BUS」
「君を思い バスに乗る」
英国が、老人福士の先進国であるかと言うと・・ケン・ローチの映画を観ても、そうでもないのはわかる・・が、少なくとも、日本よりは社会が成熟してるのだろうなぁ・・PLAN75 の様に老人が困窮するお話では無い。
日本では、あまり 老人が主役の映画って作られないよね・・そこらが・・日本の高齢化政策のお粗末さの象徴かも・・。
で、無料パスでバスに乗ってどこまでも行けちゃう・・UK。
バスという時間軸がお話を味わい深いものにしている・・、新幹線や飛行機であれば、ひどく味気ない話になるだるなぁ・・・。
そういう点では、新幹線網と高速道路網は日本人の感受性を劣化させたかもしれない・・。
県境の長い笹子トンネルを超えても そこは、快適な二車線高速道路だった・・だもんな。
おじいちゃんの旅の途中、意地悪な人もいるけど、優しい人、人としての道理を身に付けた人がやはり多いのだよ・・と言う安心感を与えてくれる映画。
スコットランドの北の端から、イングランドの西の果て、LANS END までの、妻との約束を果たすための路線バスの旅。
良き人との出会いで、目的をはたすのだけど・・タイミングよくウクライナ人の移民たちの、優しさや人の良さに・・こう言う人達の国なんだぁ・・早く、ウクライナに平和が訪れるといいなぁと・・。
主人公も含め、深く理解し合い、愛し合ってる夫婦が出てくるが・・羨ましい。
僕には LANDS END は無いなぁ・・。これからでも遅く無い??? 千里浜は LANDS END(笑)
亡き妻を追い求めて辿り着いた思い出の地
80代のトムが、亡き妻との思い出の地まで、スコットランドとイングランドをバスで縦断するロードムービー。
老いた体には厳しい旅を強固な意志で実行する彼の秘めたる想いが、現在と過去を行き来する構成で次第に明らかにされる展開も、旅の中で彼が様々な人々に出会うエピソードも悪くない。
けど、予告編で感じる明るさや高揚感を、私は本編で感じられず、トムの意固地さと老いた体で続ける過酷なバス旅の悲壮感と焦燥感に、どこか居心地の悪さを感じ続けた。
その居心地の悪さが、ラストシーンで腑に落ちた。
冒頭、彼は近所の子供に「遠い所に行く」と言い、劇中医師に「やるべき事がある」と言う。
彼の人生は、全ては今は亡き妻の為にあったのかもしれない。そして、思い出の地に辿り着いたことで、彼は満ち足りてやるべき事を成し遂げたのかもしれない。
観ている間よりも、観終わってからの方が考えさせられる映画でした。
あと、予告編と本編の温度差もある映画でした。
そして特筆すべきは、50代で特殊メイクなしに主役を演じ切ったティモシー・スポールの演技!一見の価値あり。
バズったおじいちゃんの人生振り返りの旅路。
「物理的な移動」と「時間軸上のフラッシュバック」、二つの旅を鑑賞する。
何かしら訳あり、悲しみを背負ったらしき若いカップルの逃亡?から始まる謎解きの時間の旅。
メーンは現実世界で90超えのおじいちゃんの長距離バス旅行。決して甘くなかった。最初のうちは身軽な旅を羨ましく感じたけど、だんだん見ていて辛いことの方が多くなった。出会う人はいい人とそうじゃない人がほぼ同率だ。それが現実。(道中のエピソードで遭遇したウクライナ人たちの明るさと屈託ない親切さにはグッときた。)
理由はともあれ、片道旅行であることは容易に想像がつく。命よりも大切なスーツケースとの同行二人。原題THE LAST BUS のままでよかったんじゃないかなあ。
人生で真に幸せな時期なんてほんのいっとき、かもしれない。でも反芻すればするほど輝くような思い出を持っている人は強いなあと思った。あんな風に愛し合える夫婦って、すごいなあ(友だち少なそうだけど)。愛妻の外套の蜜柑色が一貫して画面を鮮やかに引き締めていた。
アメイジング・グレイスに拍手!!
ティモシー・スポールといえば『ハリー・ポッター』に出てくるピーター・ペテグリューを思い出し、悪い役のイメージを持っていました。しかし、今作で一気にイメージが変わりました。ティモシー演じるトムは最愛の妻を亡くし、自身も癌に侵されながらも「イギリス1350キロ縦断」を決意する。90歳のトムはバスを通じて様々な人たちと触れ合って自身の人生を振り返る。
設定上トムは90歳という年齢だがティモシー・スポールは60歳で30歳年を取った「演技」はなかなか見れない映画でした。この映画は現代のイギリスを舞台に撮影されていて、トムが乗るバスにいる乗客のほとんどがボランティアで構成されていて、演技なのか本音なのかわからない演出をしていたので新鮮な状態で観賞出来ました。
物語中盤のティモシーが歌う「アメイジング・グレイス」には心打たれました。歌詞と今作のテーマにピッタリで、すこし鳥肌が立ちました。
全48件中、1~20件目を表示