劇場公開日 2022年6月3日

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「ロードムービーにありがちな不自然さを感じさせない路線バスの旅」君を想い、バスに乗る tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0ロードムービーにありがちな不自然さを感じさせない路線バスの旅

2022年6月16日
Androidアプリから投稿

以前、日本にも似たような設定のロードムービーがあったが、キャンピングカーで旅をする主人公が、そんなに多くの人々や出来事に遭遇するわけがないだろうと、不自然さを感じざるを得なかった。
その点、この映画の移動手段は、自家用車でも、鉄道でも、長距離バスでもなく、様々な人々と乗り合わせる機会のある路線バスであり、しかも、シニア用のフリーパスが使えるからという理由も、ちゃんと用意されている。そのため、ロードムービーにありがちな、わざとらしさや違和感がなく、たくさんの出会いや別れが、自然な形で描かれている。
道中、主人公が回想する過去は、断片的で、時系列のとおりにもなっておらず、何があって、何のために旅をするのかが分からないため、特に、最初は、少しイライラさせられる。だが、この映画が、悲しい過去を振り返るよりも、生きている今を慈しむことに重きを置いていることが分かってくると、ゆったりとしたテンポに身をまかせ、旅のエピソードを楽しめるようになる。
主人公がトラブルに巻き込まれるたびに、必ず誰かが救いの手を差しのべる展開は、ご都合主義にも思えるが、それと同時に、人間の善意を信じている作り手の姿勢も伝わってきて、暖かい余韻に浸ることができた。

tomato