一生売れない心の準備はできてるかのレビュー・感想・評価
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勇気と安心感をありがとう
本作の主人公は、バンド「やちむん刺激茄子」を率い、30年以上にわたって音楽活動を続けるもヒット曲のないシンガーソングライター奈須重樹。
一体どんな人物で、どんな音楽なんだろう?と興味が湧き、鑑賞してみた。
すると、いい意味で軽薄かつKY、俗世的で、等身大、酒が好きで飾り気がない、自分にも他人にも正直で、独特のポリシーを持つ、、、不思議な魅力を発する男が、そこにいた。
メロディーラインも歌声もなかなかに素敵なのだが、伝わり来るメッセージはおおむね薄っぺらい(笑
(胸にジーンとくるバラードなど薄っぺらくない曲もあります)
多くの歌詞やMCの中にウケ狙いポイントがあるのだが、天は彼に笑いのセンスを与え賜わなかったようで、時おり映画館の中に苦笑や失笑が漏れる。
だが、である。最後まで鑑賞するうちに、たとえ曲が売れなかろうが、バンド仲間に去られようが、諦めることなく楽しげにオリジナルソングを歌い続けるこの男から、勇気と安心感をもらっている自分に気づいた。
人生につまずき、迷いの中にいる皆さまには、本作のご鑑賞をお勧めします。
最後に、全編にわたって散りばめられるライブ映像はバックバンドのクオリティー含め十分に楽しめるものだったことをご報告しておきます。
「曲が先か詞が先かと聞く人がいるが、愚問。まずはテーマだ」
「ライブ終わりによくある、一度ひっこんでアンコールを受けてまた出てくる演出、、あれは悲しみしかない」
「はい、もう帰っていいですよ〜」
といった味わい深い名言も出て来るのでお楽しみに。
勿論、みんな売れたいんだよ
この挑発的・刺激的タイトルを目にしたら、こりゃぁ観たくなってしまいますよね。
奈須重樹率いる、沖縄バンド「やちむん」の結成25周年コンサートの模様を収めたドキュメンタリーです。奈須さんも「やちむん」もこれまで名前すら聞いた事がありませんでした。
彼らの音楽は、「やまと」の僕が想像(期待?)する様な沖縄音楽ではなく、さりとて、同じく沖縄出身の「紫」の様なハード・ロックでもありません。カントリーの様であり、ポップでもあり、フォークの匂いもして、ぶっ放しもあり、ステージ上には何故かベリーダンスが繰り広げられと、ごった煮的世界なのです。歌も決して上手いとは言えないのに何故か惹き付けられてしまいます。
ステージ上での曲の合間に、その曲の背景と自身の半生についての奈須さんの語りが入ります。この交互の往復の構成が心地よいのです。そして、奈須さんの語りが上手い!
ご自身も、バンドメンバーも、勿論売れたいと思っているだろうし、「一生売れない心の準備はできてるか」どうかも分かりません。でも、彼らのステージを観ていると、「人間は自由に生きていいんだ」と何故か心が湧きたって来ます。これは儲けものの作品でした。
なお、このコンサートの舞台は、名前だけは聞いた事があった沖縄最古の映画館「首里劇場」です。僕は、地元大阪の「新世界国際劇場」を思い出してしまいました。しかし、昨年この建物は取り壊されたのだそうです。映画館としては勿論、薄汚さが魅力の歴史的建造物としても残して欲しかったなぁ。
また、當間早志監督も、若さでぶっ飛ばした『パイナップル・ツアーズ』の「爆弾小僧」の頃よりグッと渋みが出て(監督はそう言われて嬉しくないかもしれないが)よかった。
売れてなくても幸せそうだ
初上映は今はなき首里劇場にて
沖縄在住のバンドやちむんの結成25周年記念ライブを中心に、バンマス奈須重樹氏へのインタビューで繋いだ音楽ドキュメンタリー映画です。
今まで脚光を浴びてこなかったのが不思議なくらい魅力的なやちむんの楽曲への入門としてはかっこうの映画であり、ベストアルバムにしてもいい名曲揃い。奈須重樹氏のひょうひょうとしたキャラクターと、その一方で『一生売れない心の準備はできてるか』と歌い上げてしまう覚悟と意地を是非劇場で見届けてほしい。
見終わった後には心に残る歌詞とメロディがきっとあるはず。
初演は2022年に館長の急逝により惜しまれながら閉館した沖縄最古の映画館首里劇場にて(映画館の選択になかったので「試写会」としました)。その、他にはない年季の入ったたたずまいにもご注目。
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