シネマ組踊 孝行の巻のレビュー・感想・評価
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沖縄芸能普及の意義
「シネマ歌舞伎」というのはよく知られているが、沖縄独特の組踊を映画に収めた点に意義があるようである。しばらく解説やみどころの映像があり、本編となった。解説でもあったように、能や歌舞伎の舞台の物語に似た感じだった。父親が亡くなった後、母親は子どもたちを大事にしていたが、子どもたちは大蛇の生け贄になることを母親に内緒にして実行しようとして、潮汲みに行くと言い、波が荒れると風が荒れる、というような逆の原因ではないかという言い方も出てくるが、母親は心配しながらも姉に出かけることを許し、申し出を受けた役人が姉を大蛇のところに連れて行くと、神が奇跡を起こす。家に残った弟は、母親から罵りを受けるが、生きて戻った姉を連れた役人から、孝行娘と褒められ、姉も弟も国王の子どもの結婚相手に迎えられることが告げられる。何が孝行になるのかよくわからない気がした。事後にプロデューサーの挨拶があり、組踊の舞台の興行をしたかったが、コロナ禍のためにできなくなったため、映画収録を進めたという。質疑応答では、映画に字幕があったため、言葉の意味がわかって良かった、というものが複数あった。沖縄の劇場でも字幕表示はしているという。私は、大蛇の模造物が石見神楽のものに似ていたので、その影響について尋ねると、作者は江戸での芝居見物をした記録があり、その影響を受けたことは裏づけられるが、山陰でそうした行跡はなく、裏づけることはできない、大蛇伝説は沖縄に元々あり、戦前に別の形の模造物で演じられていたが、戦時中に失われた後、やまとのどこかから援助を受けて確保したらしいけれど、明言はできないということであった。
亜熱帯の南の島の最高に美しい、雲の上の天上世界で起きている神話
ユネスコ世界文化遺産に指定された沖縄の伝統的歌舞劇「組踊」をシネマ歌舞伎のように 映画館で観られるように製作された作品。 沖縄の伝統芸能関係者の皆さんの思いが詰まった一作です 大感激です! 沖縄出身者として5点満点! 宮平貴子さんという那覇出身の映画監督と沖縄古典芸能の国内外の舞台公演のプロデュースをされている大野順美さんがタグを組んで製作した作品で、よくぞ企画してくれました!「したいひゃあ!(したり!)」とウチナーンチュ(沖縄の人)は拍手をおくりたくなる一作です。 この作品、国立劇場おきなわの天空にひろがる「あやもどろ」な美しい夕焼け空(朝焼け?)から始まります。 ピンクと紫が混じった南国の美しいアコークロ―の時間の美しい空。 最高にロマンティックな沖縄の空が画面いっぱいに広がって、しょっぱなから胸がホワンとします。 そこから琉球古典歌舞劇「組踊」の世界に入っていくのですが、 始まる前に「組踊とは何ぞや」の歴史の解説がついているので、初めて組踊を鑑賞する方も楽しく、組踊を知ることが出来ます。 組踊は70以上の演目があるんだそうで、今回は「孝行の巻」という人身御供のお話を映像化したということで、当作品は分かりやすいストーリーでした。 沖縄の古典の言葉ははっきりいうと、何を言っているのか(謡っているのか)、はっきり言ってしまうと、ほとんどの方が分からないと思うのですが「字幕」が付いているので、すんなりと物語の世界に没頭できます。 また、琉球舞踊特有の、細かい所作や目線なども、さりげなく見どころが分かるようにアップになって、かぶりつきで観ているかのように、しっかりと観ることができるので、沖縄出身で何度か組踊を見たことがある私でも、「ええっ!こんなに繊細な演技をしていたの!」とびっくりするシーンがいくつもあって、驚きの連続でした。 ピンクや紫に染まる雲と光が美しい「あけもどろ(朝焼け)」の空を彷彿とさせる美しい色の紅型の衣装を身にまとった演者たちが、雲の上を移動するように舞うゆったりと抑揚の効いた琉球舞踊の不思議な所作に、日本の古語に近いとされる沖縄の古い言葉の台詞を、滔滔と謡いあげていくのですが、反して、地謡は内面の感情を爆発させるように歌います。 たしかに、人はたとえ心の中に嵐が吹き荒れていても、理性的に行動しようと努力します。 琉球舞踊の抑揚の効いた所作と、地謡が吐露する激しい感情のギャップが、特に封建時代を生きた人たちのリアルなのかもしれないなと思いました。 今回の「孝行の巻」の衣装が、冒頭に出てくる「あけもどろ」「あやもどろ」の空の色をしていて、美しい空の下で生きている私達は、もともは天界の人だったのかもしれないなあと、ふと思ったりしました。 組踊、エモいです。楽しめます。
シネマ組踊
沖縄に生まれ育ちながら、ユネスコ無形文化遺産にもなっている組踊に全然関心ありませんでした。 本作の宮平貴子監督が、自身も全く知らない世界で正直オファーにおじけづいたが、組踊に向き合って、その魅力を映像化した心意気に興味を持ち、劇場に足を運びました。 多角的なカメラアングルで収められた、役者、奏者の佇まい、予想のつかないストーリー展開、そしてアッと驚くスペクタクルに圧倒されました。 映画の冒頭で組踊についての簡潔な解説があり、全編日本語字幕がついており、門外漢の私にも分かりやすく、充分その魅力を感じ、楽しむことができました。 今後順次各地で公開されるようです。沖縄が誇る荘厳な'ミュージカル'をぜひ少しでも多くの方にも観ていただきたいです。
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