「どこにも行けない、ワンダの旅」WANDA ワンダ imymayさんの映画レビュー(感想・評価)
どこにも行けない、ワンダの旅
最後のシーン、途方に暮れたワンダが、楽しそうなパーティーに混ぜてもらう。その同じ空間にいる一員のはずなのに、とても孤独に見える。人間が最も孤独を感じる時は、たいてい、大勢のなかにいて、自分だけがその誰とも違う、と感じる時だ、とおもう。そんなとき、周りの人はみんないい人で、意地悪なんかしたりしない、だけど、あの、どうしようもない疎外感、わたしの居場所はここではない、でも、どこかにはあるのだろうか、どこにもないかもしれない、というはてしのなさ。だけれど、そのうちどうでもよくなって、考えることもやめてしまう、ワンダの目の前の酒とタバコのようなものだけが、じぶんの全てみたいに見えたりもする、
ワンダの感情とは真逆に楽しい音楽が流れ続ける、ワンダだけが、ストップモーションで止まってしまって、音楽は流れ続ける。ワンダは世界に置いていかれる、
ワンダは、なにも成してこなかった人生で、はじめてなにかを成し遂げる(それが犯罪だったのだけれど、)。嘔吐を繰り返していて、自身が変化することに拒否反応があることがわかる。普段は感情なんてほとんど表出しないのに、「できない、できない!」と激しく抵抗する。それでも、自分と似ている男のために、はじめてやり遂げる。それによって、男も死んでしまうのだけれど。そうすると、いままで、男たちに簡単に身体を預けてきたのに、激しく拒否することができるようになる。
それでも、最後はもう、何かを成すことも何かを拒否することも、ワンダにとって何の意味も持たないみたいだ、もうワンダには、目の前の酒を飲むこととタバコを吸うこと、しか残されていない、ワンダがこれからどうするのか、わたしには皆目検討がつかない。それでも、ワンダは死んだりはしないような気がしている、
映画館をでて、渋谷の街を歩いていると、この街から疎外されているような気がした、わたしとはぜんぜん生き方も空気感も違う人々の中に、ひとりだった。ゴミが散らばっていて汚かった、水溜りのなかでぐちゃぐちゃになったタバコの吸い殻をみて、またワンダを思い出した、