スギメのレビュー・感想・評価
全3件を表示
「知る」より「考えるきっかけ」になる作品。
国立科学博物館が企画した、3万年以上前に祖先たちがどのように日本列島へ渡ってきたのかを再現する「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」を映像化したドキュメンタリー作品。
定期的に科博へ足を運ぶ私ですが、この作品は知らなかった…。つい先日初めてポスターを発見しましたが、あまり日本館を見ない(狭くて息苦しくなってしまうので😓)私にとっては、新たな発見がありそうだと思い早速鑑賞。
思ってたのと少し違ったかなぁ。日本民族のルーツを知ることができる作品かと思っていたのですが、台湾から与那国島までの過酷な航海を収めたドキュメンタリーであって、民族の文化や人種の特徴などについてはあまり説明はありませんでした。良くも悪くもテレビ的編集と演出。スタッフさん、研究に携わった方々は本当に素晴らしい成果を挙げたと思います。しかし、本作を観る側と観せる側との間に感覚の齟齬が生まれてしまっている気がします。
まぁ、そもそも3万年も前の文化を解説するには資料が足りなかったのかも知れません。それでも、石器の紹介や船の製作過程、実際に航海する様子には感銘を受けました。このプロジェクトはゴールが明確なので、物事がテンポよく進みますが、古代の祖先たちが何百年、何千年という時間をかけて航海技術を習得したと考えると胸が熱くなります。
本作は知的欲求を満足させる作品というよりは、古代文明を考えるきっかけになる作品という位置づけの方が正しいかも。そういう意味では子供たちには是非見て欲しい作品ですね。
知的な営みを脳筋が編集すると、こうなる。残念!
現生人類、つまりホモ・サピエンスはアフリカから世界中に広がり、南西諸島にも 3 万年前からいたことが分かっているそうです。しかし、大陸と島々の間には海があり、これは海水面の低かった氷河期でも変わらなかったそうです。ということは、祖先は海を渡ってたどり着いたことになります。では、原始の技術だけで人類は海を渡れるのか試してみようと、ある人類学者が言い出したのがこの映画の始まりです。僕らのルーツを知るという、知的にも学問的にも興味深い試みに、観ている僕らの期待も高まります。
しかし、残念なことに、この映画の重点は、この研究の冒険的な側面ばかりに焦点が当てられています。自然の材料だけで作った舟に乗って黒潮を横切るのは本当に大変そうです。だから、ここに目が行くのは当たり前です。ただ、そればかりではつまらない。元々知的好奇心から始まった話なのに、舟を作る技術面は薄味、考古学や文化など学術面はほとんど触れられていません。知的好奇心の強い人は、そんな蘊蓄が大好物だと思うんですが、僕だけかなあ。
ということで、「これだけの材料と人がいながら、出て来たのがこれですか。」という感想は否めません。作品を編集した人に科学への思いとかリテラシーを持つ人がいなかったんでしょうね。残念です。
ルーツ
国立科学博物館と国立台湾史前文化博物館が取り組んだ国際共同研究「3万年前の航海・徹底再現プロジェクト」の6年に渡る膨大な映像の記録をもとにしたドキュメンタリー。自然科学の専門家たち、それに冒険家たち。まずは推測をもとに草舟作りから始まったが、黒潮という難関に阻まれる・・・
次は台湾に渡ったスタッフたちが竹舟を作るプロジェクト。しかし竹の舟でも黒潮を乗り切ることは出来なかった。そこで縄文時代に存在した丸木舟に注目するが、3万年前にそんな技術があったのだろうか?大陸と陸続きではなかったのか?などと、試行錯誤を繰り返し、能登町の杉の木を用い、旧石器で加工することができるのかという前代未聞の実験&冒険。
初めて日本にやってきた人類を探るという決定的な解決にはならないけど、琉球列島で発見された3万年前の痕跡。探求心と冒険心が一つの可能性を示してくれた。
大昔は日本列島も陸続きだったと思い込んでいただけに、なるほど~と勉強になった。まぁ、朝鮮半島から来るほうが近いんだろうけど、琉球に残る人骨の存在は否めない。これだけ苦労するんだから、大半の日本人のルーツは朝鮮半島からなんだろうと、こちらの検証もやってもらいたいものだ。
全3件を表示