「PTSDを抱えた女を表す「緑」と「赤」の色彩」戦争と女の顔 regencyさんの映画レビュー(感想・評価)
PTSDを抱えた女を表す「緑」と「赤」の色彩
レニングラードの病院で看護師として働く長身女性イーヤが映るも、耳障りなノイズが鳴り響いた途端、彼女の瞳孔が開き、立ったまま発作を起こす…この冒頭のシーンでもう惹きつけられてしまった。
本作では終始、ストーリーを盛り上げるための劇伴が流れない。だからこそ、イーヤが発作を起こした際のノイズがより強調され、観る者の心をかき乱す。
イーヤの知人女性マーシャ。戦地に赴いていた間、息子をイーヤに預けていたが、発作が原因でその子を死なせてしまう。しかしマーシャは、息子の死を悲しまないばかりかイーヤを責めない。
PTSDを抱えた2人の女が安息の生活を求めるも、その道はあまりにも困難。それは「緑」と「赤」という作品全体を覆う色彩でも露わとなる。
ウクライナ侵攻により、期せずして注目されるロシア。しかし本作のプロデューサー及び監督は戦争反対を高らかに叫ぶ。
ロシアに抵抗するウクライナ軍には女性兵もいるという。ただ性別問わず、PTSDに苦しむ事になる者は増えるだろう。
5月公開の『チェルノブイリ1986』といい、今、ロシア映画が熱い。
コメントする