モガディシュ 脱出までの14日間のレビュー・感想・評価
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実話ベースだが一級の娯楽作品
圧巻の脱出行だけでなく、外交官のかけ引き、南と北の確執、ソマリア内戦、少年兵、等々よく描かれており、見どころ満載。
アフリカ風の音楽とその使い方もうまく、スピーカーから流れる韓国のアピールをよそに暴動がエスカレートしていくシーンや、祈りの声の中を脱出移動するシーンなども実に効果的。
韓国映画は本当に見せかたが上手いというか、見ているこちらをぐいぐい引っ張っていてくれる。
内戦、暴動、カーアクションなどもハリウッド映画と比べても遜色なし。
目を合わせることさえできず違った方向へ進んでいく沈黙のラストや、食事を分け合うシーン、ラスト近くの元企画安全部の韓国参事官が北の人たちのために取った行動など、韓国・北朝鮮の人たちにとっては、日本人には想像できないくらいに切なくて感慨深いものがあるんだろうな。
実話ベースだからモデルがいるはず。日本ではこうした作品は絶対に作れないだろう。
本当に面白くて良い作品が大ヒットして、賞も与えられる。韓国映画からすごい作品や人材が出てくるのも頷ける。
「シュリ」や「JSA」を公開当時観ていなくて、グロくてエモい娯楽作品から韓国映画にはまってしまったんですけど、「国際市場でこんにちは」で韓国の現代史を知ってから、韓国映画がより楽しめる(楽しめるという表現は不適切かも知れませんが)ようになりました。
韓国映画面白い。もっと拡大公開してほしい。
敵対する者達の壮絶な危機脱出劇
2021年度韓国映画興行収入NO.1に相応しい作品である。本作は、敵対する韓国と北朝鮮の大使館員達のソマリア内戦からの壮絶な脱出劇である。前半で脱出までの経緯を丁寧に描いた上で、後半で壮絶な脱出劇を描いている。前半は会話劇主体の静的ストーリーで、凡庸、退屈なところもあり、そんなに面白い作品?という感じもしたが、尻上がりに面白さが増し、後半の脱出劇でピークに達する。脱出劇は斬新なカーアクションであり、韓国映画のポテンシャルの高さに圧倒される。
本作の舞台は、1990年のアフリカ・ソマリア。国連への加盟を目指して、韓国、北朝鮮大使館は激烈なロビー活動を繰り広げていた。しかし、ソマリアで内戦が勃発し、各国大使館も攻撃対象となる。大使館を追われた北朝鮮大使リムは、敵対する韓国大使ハンに助けを求める。その後、両国は、一致団結してソマリア脱出に奔走し、イタリア大使館の協力を得る。そして、イタリア大使館を目指した脱出劇を決行する・・・。
本作は、序盤はイマイチだが、中盤、終盤と尻上がりに面白くなる。作品の理解度が深まるに連れて面白くなる。作品の勝負所は、やはり、後半、終盤、ラストであり、本作は、そういうストーリー構成だから面白い。
前半は、韓国と北朝鮮大使館の熾烈なロビー活動をコミカル風味で描いてはいるが、両大使館の協力は有り得ないと観客が納得するには十分の敵対ぶりを見せつける。
身近なもので防弾対策をした車両で、弾丸を浴び続けながら、戦場を突破していく脱出劇は、従来にない斬新なカーアクションであり、何としてもイタリア大使館に辿り着くのだという韓国・北朝鮮大使館員達の強い思いが画面から伝わり胸が熱くなる。
ラストシーン。脱出劇は成功するが、韓国・北朝鮮大使館員達は従来の国家の枠組みを崩さない配慮をする。本作のメッセージは、危機が迫れば人は敵対する相手でも助け合えるである。
いつの日か、このメッセージが国家レベルで実現することを期待したい。
【”同一民族分断の壁を越えて・・。”国連加盟の為にソマリア大使館にいた韓国大使館員、北朝鮮大使館員が経験した激烈な脱出劇を描く。現況下の世界情勢の中で今作を観ると、色々と考えさせられる第一級の作品。】
ー 実際の事件の基づいた大使館人質映画と言えば、ペルー日本大使公邸占拠事件を扱った「ベル・カント とらわれのアリア」や、在イランアメリカ大使館人質事件を扱った「アルゴ」が記憶に新しいが、この映画の元となった事件は知らなかった・・。-
■1991年、ソマリアで起きたバーレ大統領の政策を独裁的である、と批判する反政府派が起こしたソマリア内戦。アイディード将軍が制圧したソマリアの首都、モガディシュの混乱を収めようとしたアメリカ軍が壊滅的被害を受け、撤退する様を描いた「ブラックホーク・ダウン」を思い出す。
◆感想
・国連加盟のために、“第3世界”であるアフリカ各国の支援を受けようと、当時の韓国と北朝鮮が、ソマリアを始めとした各国に大使館を設け、国連加入を求めようとする動きがまず、冒頭で描かれる。
ー この際の、韓国大使館のカン参事官(チョ・インソン)と、テ・ジョンギ参事官(ク・ギョファン)の険悪な会話。テ・ジョンギ参事官が言い放った、”我が国は、南よりも20年も前からアフリカ諸国と関係を築いて来た!”
だが、そんな南北朝鮮の目論見を、反政府側のゲリラの銃撃が打ち砕く。-
・首都、モガディシュは混乱の極みとなり、北朝鮮大使館が襲撃され、大使館員及び家族たちの命に危険が及ぶ。
ー ご存じの通り、大使館の土地に許可なく踏み入る事は出来ない。如何に異常事態だったかが分かるシーンである。-
・北朝鮮大使、リム(ホ・ジュノ)は、大使館に留まるのは危険と判断し、中国大使館に向かうが中国大使館も火を放たれていた・・。
ー 仕方なく、韓国大使館に身を寄せようとするリム大使。テ・ジョンギ参事官は不本意そうだが、そんなことを言ってられる状況ではなく・・。-
・韓国大使ハン(キム・ユンソク)は、リム大使の”家族の命が危険だ・・”と言う訴えに、渋々扉を開ける。そして、韓国大使館の家族たちが“北の子供たちは、素手で人を殺すそうよ‥”と呟く姿。
ー 長きに亘る、同一民族分断は、ここまで相手に対する誤った認識を育んでしまうのか・・。一緒に食事をする際にも、北朝鮮側は食事に手を付けない。それを見たハン韓国大使は、敢えてリム大使の前の飯を取って口にする。ー
・カン参事官は密かに、北朝鮮大使館員達のパスポートから”転向書”を密かに偽造するシーン。”そんなことをやっている場合ではないだろう!”と内心、激しく突っ込む。カン参事官の偽造に気付いたテ・ジョンギ参事官とで、取っ組み合いの喧嘩になるが、その間に韓国大使館を護衛していた警官達は”人数が多すぎる”と追加料金を請求。そして、却下されいなくなる。
ー 韓国大使館の護衛が居なくなった瞬間である。本来であれば、同一民族同士、助け合うべき時なのに・・・。だが、流石に事、ここに至り両国大使館員たちは、力を併せ脱出することを決意する。車の外面に大使館中の本や、衣服を弾丸除けとして取り付け、韓国大使側は、イタリア大使館へ。北朝鮮側は、エジプト大使館へ。-
■ここまで観ると、平常時の外交力の大切さが良く分かる。
イタリア大使館は韓国大使館員たちを赤十字の避難機に乗せる事を許すが、北朝鮮側は、エジプト大使館側から匿うのを拒否される。
■コーランの祈りの時間に、4台の車に分乗した南北大使館員達は、遺体がゴロゴロと転がる道を猛スピードで、イタリア大使館へ突っ走る。物凄い銃撃を受けながらも・・。
ー 観ている最中に”早く到着しろ!”と内心、叫ぶ。物凄い緊張感と、迫力である。
そして、漸く大使館に到着するも、最後に着いた北朝鮮テ・ジョンギ参事官は、運転席で事切れていた・・。-
◆沁みたシーン
・韓国、ハン大使は北朝鮮大使館員達を”南に転向した”と、イタリアに説明し、南北朝鮮大使館員達は無事、赤十字の避難機に乗れたシーン。
・そして、安全な土地に下りた際に、北朝鮮テ・ジョンギ参事官の無念の死を見たそれまで彼と対立していたカン参事官が、自分達を迎えに来た韓国の(多分、KCIAであろうと、推測。)の姿を見て、北朝鮮大使、リム達、北朝鮮の大使館員たちに言った言葉。
”俺たちの後についてくるな!外国人たちの後から下りて来い!”
- 勿論、北朝鮮の大使館員たちの身柄を気遣っての事である。-
<朝鮮の同一民族分断は、この事件をきっかけにしても一向に改善の兆しは見受けられない。更に、ソマリア内戦も一向に集結する見通しはない。
現況下の世界情勢の中で、今作を観ると、イロイロと考えさせられる作品。
だが、後半の大使館脱出のシーンの、物凄い緊張感と、迫力を醸し出す演出力や、重いテーマを一級の娯楽作品として魅せる韓国映画の力業には、改めて驚いた作品でもある。>
よく再現した。。!
内戦時の街の惨状、少年兵達の病んだ様子など、よく再現出来たな、と驚きました。
北朝鮮のメンバーには子ども達もいて、韓国の大使達のほうは大人だけなので少し違和感あるな、と思ったら、北のほうでは故郷にも家族を残していると。まるで家族を両方の土地に人質として置きながら仕事しなきゃいけない大使館員の苦労が垣間見えました。
なんとか、やっとの思いで脱出しますが、協力のためにほんの僅か絆が芽生えたところで脱出の地、ケニアの空港に到着してしまう。
そしてこの安全な土地ではもう絆なんてわずかでもバレたらいけないという切ない現実。
救難機から空港に降りた瞬間、顔見知りですらいられない。
「救難機から降りたら我々は完全に他人です、知らない相手です、別れの挨拶は今この救難機の中だけで行ってください!」、という切なさ。
頑張って協力し合ってなんとか多くのメンバーが脱出出来て良かった、だけでは済まない、予想外な展開、南北の現実を見せ付けられました。。!
衝撃の実話…手に汗握る壮絶な脱出劇!
通常スクリーンで鑑賞(字幕)。
実話なのだから恐れ入る。事実は小説よりも奇なり。映画よりも映画みたいな出来事の映画化、心底から堪能しました。
冒頭で韓国と北朝鮮が国連加盟のために行っている駆け引きの模様を映し出し、両国の関係性を示した上でソマリア内戦へと突入していく導入部が堅実で素晴らしい。
このプロローグのおかげで、常に互いの足の引っ張り合いをしている仲の悪い両者がどう云う経緯で手を組むことになるのか、とても気になってしまったからです。
反乱軍に大使館を追い出された北朝鮮大使一行が韓国大使館に助けを求めた瞬間から、物語が大きく動き始めました。
戦場と化したソマリアから如何にして脱出するか。緊迫した展開が続き、政府軍や反乱軍が溢れている市街地を疾走していくシーンは、ダイナミックなカメラワークも相まって手に汗握り、息を止めてスクリーンに見入っていました。
まるでハリウッド映画のような迫力で、韓国映画のすごさをまざまざと見せつけられた思いでした。これは映画史に残る名シーンだな、と…。日本映画も負けていられない。
韓国と北朝鮮の両大使館員が国同士のしがらみを一旦忘れ、極限状況から生還するために協力し合ったと云う事実は本当に意外過ぎたし、苦難を共にしたことで生まれていく仄かな友情に次第に胸が熱くなってしまいました。
しかし、無事脱出した後ケニアの空港で別れたシーン、両者が二度と会うことのないであろう暗示が、両国間の関係の複雑さを物語っており、なんだか切なくなりました。
[余談]
韓国映画だから仕方無いとは言え、あくまでも韓国側をいいもんに描いているのは明らかな脚色だろうなと感じて(事実なのかどうか分かりませんが、韓国側は死者ゼロに対して北朝鮮側は参事官1名が犠牲になっているのが少々違和感)、視点の偏りに両国の相克を垣間見た気分。
[以降の鑑賞記録]
2022/12/25:Amazon Prime Video(レンタル,吹替)
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