エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのレビュー・感想・評価
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あらすじと考察
Everything, Everywhere, All At Once
エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス
アメリカ社会に生きる中国系移民の女性が、中年の危機を迎え、自分の過去を振り返り、人生にあり得た様々な可能性を検討しながらも現実と向き合う物語。
家族の絆や、人種問題の融和といった感動的なテーマを掲げる。
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主人公はクリーニング屋を経営し、コインランドリーも兼ねている。
注)アメリカには「洗濯屋は中国人がするもの」というステレオタイプなイメージがある(あった)※1
彼女には夫と一人娘がいる。
夫は優しいが頼りなく、娘は反抗的で大学を中退し、今はガールフレンドと付き合っている。
映画が描くのは、そんな彼女が確定申告に追われながら、中国からやってきた父親の介護に追われ、新年会(旧正月?)を取り仕切る慌ただしい1日の出来事である。※2
確定申告は彼女の仕事。父親の介護も女の仕事。新年会を取り仕切るのも彼女。夫に指示を出して動かすのも彼女。
夫は離婚を切り出そうとしているけれども、彼女が忙しすぎるせいでゆっくり話し合う暇もない。
娘は新年会にガールフレンドを連れてやってきたが、主人公は、そのガールフレンドを父にどう紹介するか迷った挙句「友達」と紹介したため、娘は不機嫌に。
確定申告へ向かった国税庁では、監査官の白人女性との間に以前から確執がある。
言語や文化の違いもあってか、人種間摩擦にも似た問題を抱えている。
そんな彼女が自宅の食卓で確定申告業務をしている場面から映画は始まる。
家族との会話を交えつつ、自宅併設のコインランドリーの内部を経て、カメラはようやく屋外へ出て、国税庁へと向かう。
これは「自宅→仕事場→彼女を取り巻く社会」という順番になっている。
いずれも問題だらけで、彼女の人生の行き詰まりを「内→外」と、身近な順番で紹介していると言えるだろう。
そのあとには、夫と駆け落ちしてアメリカに来たこと、父親からは勘当同然の扱いを受けたこと、アメリカンドリームを抱いてコインランドリーを購入した当初の希望に満ちた様子が描かれる。
しかし彼女はずっとクリーニング屋=社会の底辺(成功者とは言えない)。
父の介護のためにいよいよ身動きが取れず、夫からは離婚を切り出されそうだし、娘との確執もあり、映画の中でアメリカ社会(白人社会)の代表として登場する監査官からは真っ当に扱われている感じがしない。
「クリーニング屋として社会の底辺に固定され、家庭に縛られ、アメリカ社会の中でも不自由している」ことを理解させる設定がふんだんに盛り込まれている。
★あらすじに間違いがあればコメントにてご指摘ください。
※1 ロマン・ポランスキー監督の名作『チャイナタウン』(1974)の中で、「中国人の洗濯屋はまだツバで洗濯しているのか?」というセリフがあり、ここから中国系移民に対する見下した意識が見て取れる。ちなみに『チャイナタウン』の舞台設定は1930年代。
※2 アメリカの確定申告の〆切は4月だとか
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人生の停滞を迎えた主人公だが、そんな彼女のために用意された救いの手が「マルチバース」だ。
確定申告のために国税庁へと向かった彼女は、監査官を前にいよいよピンチを迎えるのだが、「別の宇宙からの夫」が登場。
彼女こそが全宇宙の救世主であること、全宇宙を崩壊させようとする恐ろしい追手が彼女にせまっていることを告げる。
そこから後半にかけて、物語はカンフーアクション映画の様相を呈し、「別の宇宙の自分が持つ能力をダウンロードしながら戦う」という斬新な設定が盛り込まれている。
アクション自体は革新的なものではない。
ダラダラと進行する感も否めないが、「能力のダウンロードのためには何しらの奇行をしなければならない」との条件が伴う。
そのためアダルト描写を交えながら、ドラマ『スペック』の堤幸彦監督のセンスさながらのシュールでコミカルな笑いを誘う。
彼女に襲いかかる追手もまた、別の宇宙の自分の能力をダウンロードしながら戦いを挑んでくる。
『マトリックス』のエージェント・スミスによって乗っ取られた一般市民さながら、別宇宙の自分自身によってコントロールされている様子。
よくよく考えてみると、オフィスで無線で指示を受けながら追手から逃げ回るのもどこか『マトリックス』っぽい。
終盤には「あの有名なシーン」(どのシーンでしょう?)が再現されており、明確にオマージュを捧げている。
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【マルチバースについて】
本作におけるマルチバースは、量子力学の「多世界解釈」に影響を受けているようだ。
「私たちが何か選択をするたびに世界が分岐し、その蓄積によって無数の世界(宇宙)が同時に存在している」というものである。
加えて、別の宇宙の自分との意識の共有が可能で、別の宇宙の自分に意識を転送したり、別の宇宙の自分の意識が、現在の自分に転送されてきたりする。
主人公はその結果として、「すべての宇宙の自分の人生を、同時に1カ所で経験できるようになった」という設定だ。
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【まるで『インセプション』?】
このように、「全ての自分」を1つの肉体で経験できるようになった主人公だが、実はその主人公もまた別の宇宙の自分だった、と考えていい。
あるいは「『マルチバースにアクセスできる主人公』は主人公の妄想である」と解釈してもいい。
というのも、この映画は現実改変モノではない。
どのような選択をしようともあくまで分岐した世界が存在している、と設定しているからだ。
主人公はカンフーの能力を手に入れるが、それによって現実が改変されるのではなく、あくまで普通の人生を送る別の自分も存在している。
ということは、
解釈①「マルチバースにアクセスする主人公」は、普通の人生を送る主人公の妄想である
か、
解釈② 普通の人生を送る主人公もまた、分岐によって生じたマルチバースの1つであり、意識の共有によってカンフー能力を手に入れた世界線の主人公の意識が転送されてくることによって、現実世界をより良いものにしていく
ということになる。
クリストファー・ノーラン監督による有名な『インセプション』(2010)は、夢の世界を舞台にしている。「夢から覚めた世界もまた夢だった」という演出が印象的だ。
"Dream within a dream" (夢の中で見る夢)というセリフが記憶に焼き付くが、終盤には「夢の中で夢を見る」ことを繰り返し、夢の第1階層、第2階層、第3階層、そしてもっと深い階層でのアクションが同時進行していく。
本作も同様に、複数のマルチバースを同時に経験しながら物語は進んでいく。
マルチバースが全て「夢」、そして普通の人生を送る主人公が「現実」だという解釈も可能だ。
解釈①によれば、"エブエブ"は、普通の人生を送る主人公が、「マルチバースにアクセスできるようになった自分を夢見る」という白昼夢だということだ。
解釈②は、国税庁のあたりで主人公の世界は「カンフーマスターになった人生」("Kung-Fu Timeline")と「平凡な人生を送り続けた人生」("Reality Timeline")に分岐しており、"K"タイムライン(万能になった主人公)から"R"タイムラインに情報が転送されてくる、ということだ。
主人公は特殊能力を獲得して現実を改変できるはずなのに、物語は平凡な人生へと着地していく、という点に注目したい。
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【物語の結末】
この映画は、マルチバースという最先端のSF設定を採用しながらも、ごく平凡な人間ドラマとして着地する。
主人公はマルチバースにアクセスし、宇宙一のカンフーマスターとなり、様々な能力を手に入れるけれども、人生の問題を解決するのは夢のような能力ではない。
あり得たかもしれない別の人生を想像し、さまざまな検討を加えた結果、彼女はただ、目の前にいる夫を愛した。
夫はただ、白人の監査官と会話し、主人公はただ監査官とタバコを吸いながら話し合った。
さまざまな葛藤を経て、娘とただ胸の内のありったけをぶつけ合った。
父親にはただ「娘のガールフレンドです」と紹介した。
その「ただ〇〇した」が、物語を平和な結末へと収束させていく。
確定申告の〆切は1週間延長され、白人とも打ち解け、事業拡大への希望もつながった。
夫とのあいだに愛も取り戻したし、娘も一緒にいてくれる....
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今ある人生からは逃れることができない。
この映画は、観客に向けて「今ある現実、その生活は変えることができないのだから、まずは目の前にいる人を愛しなさい。優しくしなさい」と無条件の愛を訴える。
カンフーマスターとなった主人公。
だが彼女は戦いの型をとるのではなく、無条件の愛を持って手を差し伸べる。
エンドロールを最後まで見れば、まるで脳死の"I love you"が連呼される...
「家庭の問題も、人種間の問題も、愛があれば、優しさで解決できるよね」と
・・・・・・・
【映画の問題点】
マルチバースを導入した斬新なカンフー映画であり、ユーモアも豊富だが、見せ場のアクションが真新しいものであったというわけではない。
マルチバースの設定もやや不明確だ。
インセプションのような入れ子構造が、明確なものだとも言えない。
「ベーグルってなんだ?」「結局全宇宙をかけた戦いはどうなったの?」「悪役ジョブ・トゥパキはどうなったの?」「夢オチってこと...?」
そういった娯楽面や表現面での批評はさておき、この物語が下した結論、物語が掲げたテーマについて考えてみる。
ジョン・レノンの「イマジン」が如く、この映画は「脳死の愛や優しさで人生をポジティブに変えよう」と訴える。
けれども主人公の家計や収入が良くなったわけではないし、父の介護によって縛られるのも変わらない。なぜ「娘のガールフレンドよ」と伝えただけで父の理解が得られるのかもわからない。
この映画は、パラレルワールドにおいて、家族や白人と主人公が繰り広げる葛藤が、あたかも現実世界に作用したかのように描いている。
けれども実際は、現実の主人公と登場人物たちの間には何も起こっていない。
パラレルワールドの登場人物たちと現実世界の登場人物たちを重ね合わせる演出が錯覚を生んでいるだけだ。
だから「パラレルワールドで色々と起こったからといって、なぜ全てがうまくいくのか」という疑問を生む。
「サリーとアン課題」という心理学の実験があるが、この映画を見て「主人公が家族や白人と和解した」と感じるのであれば、それは編集の巧みさと、サイケで時にサブリミナルな照明効果によるものではないかと思う。
現実世界の多種多様な問題に具体的な解決策を提案したわけでもない。
主人公が人生の問題や生活の問題を解決したわけでもないが、「愛の力」で人間関係だけは良好になる。
「貧しくても優しさですよ、愛ですよ」と説くが、「経済的余裕こそが精神的余裕を生むのでは?」「衣食足りてこそ礼節を知るのでは?」という疑問が生まれる。
現実のアメリカ社会で生活する貧しいアジア系移民に向けて「愛だ、優しさだ」と説いても意味がないが、支配階級に向けてアジアと白人が融和する映像を見せると満足する(態度が軟化する)ということなのだろうか?
社会問題に対して具体的な解決策を提示するわけでもないが、白人に対してアジア系への融和的な態度を促すのには効果的に思えた。
「マルチバース」というホットなテーマを導入しつつ、『マトリックス』のようなアクションと『インセプション』のような入れ子構造で描き、「性的多様性」や「アジア系と白人との融和」といったアメリカ人左派の価値観を再確認した、といったところだろうか。
自分は「夢と現実」のような映像表現が大好きなので、マルチバースという設定を整理・理解する経験が楽しくて少し高めの評価になった。
(3月4日 改筆済)
なぜ今生の自分にこの映画を見せてきたのか疑問が増えた。
うまくまとめられらないです。
平行世界の自分と突然繋がれることに気付かされる主人公。
その世界観と人間愛、家族愛を重ねて壮大な物語に見えます。
場面はかなり進んだところからですが、
平行世界のジョイ(娘)の負のエネルギーに飲み込まれて、ヤケクソになる場面もあるけどとりあえず何かがきっかけで戻ってきます。(忘れた)
その要素がスピリチュアル的な物で、どっかで主人公の夫ウェイモンドが争わないでみたいなことを言います。そこから主人公は攻撃ではなくて敵に対して幸福、愛?喜び?のエネルギーで応戦しす。
愛のエネルギー = 彼ら(敵)の喜ぶことを施し戦意を喪失させる。
こういうところはモンスターズインクのエネルギーの転換に似てるかなと思います。
エネルギーという面から見るとモンスターズインクも同じ方向性でスピリチュアル的な話で負のエネルギーから愛とか喜びのエネルギーへの転換かなと思います、はじめは子供を脅かして泣かせたりを、笑わせて喜ばせる。
スピリチュアルに傾倒してる人なら理解できる世界観だと思うのでそういうのをちらっと調べるだけでも分からやすいのかな?
それとスピリチュアル的な意味でもなぜ今生の自分にこの映画を見せてきたのか疑問が増えた。
この映画を見て自分や家族と重ねる人は沢山居るのでは無いかと思う。
また思い出したら書き込みします。
一回見ただけでは覚えきれない。
それと印象3つまでしか選択出来ないけど
寝られる以外全部欲しい。
アカデミー賞も納得の映画だと思う
騙されちゃいけない!SFじゃないよ。
まず予告では、マルチバースに行った主人公が〜って話しだったんで、ちと期待して鑑賞。
え〜と序盤からついていけなくて睡魔が。
SFとして観ようとしても、ストーリーについていけない。いくらマルチバースと言ってもあんなに行ったり来たりして、現実では普通に時間が経過してるし。
ようやくこれは、SFではなくオバさんの精神世界の話しだと考えたらなんとなく理解出来た。
理解出来たが面白くない。
良い意味では哲学的?いろんな要素が含まれているというか、ごった煮?日本人にはわからないアメリカンジョークがあったようだが全然笑えない。下ネタというか、玩具ハッキリ見せて良いのか?
犬好きとしては、あれを笑えというのは無理。アメリカじゃ愛護団体が抗議しなかったのが不思議なくらいだ。
エンジェルウォーズという映画があったけど、あの作品に、ほんの少しだけ似てるというか匂いがした、あくまでも匂いで、あっちのほうがストーリー展開は共感出来た、重いけど。
話題になってた作品なので鑑賞したけど、見事な肩透かしでした。
「Just be a Rock」
ザラザラとした質感の映像がなんとなく郷愁感漂う、しかしハイパーカット切り返しのとんでも無い撮影になった作品である
有名な映画のオマージュを挟みながら、しかし実際の舞台とすれば国税局と自宅件コインランドリーの二箇所しかない ただ、テレビのリモコンをザッピングするかの如く並行宇宙のそれぞれの世界へと切り替わり、その都度哲学めいたモノをベースにしたシーンなので、映像表現としては凝った作劇である
テーマは、家族愛、夫婦や親子、そして保守的な組織が保たれなくなっていく時代に、それでも最小単位である家族の絆みたいなものの大事さを、アジア的な感覚で表現する内容であろう
夫役の俳優が、日本で言うところの滝藤賢一にしか見えなかったのはどうでもいい話である
映像イメージは、ベーグルの穴を代表するように斬新な表現を試みているのだが、結論としての落としところが甘かった印象が否めない 飲み込むのも愛、しかし我慢せずに主張するところは言い合おうという、そのカオス感が家族なのだというメッセージは、手垢が付いた帰着である
自分的に興味を抱いたのは、この世界では自己肯定感が低い主人公は、マルチバースな設定に於いては、他の並行世界でのYes/Noチャートの逆の選択肢を選んだことでの成功している本人を配置していることで、一手に負の運命を受け入れている、そこで宇宙の平衡を保っている考え方である 冴えない自分のお陰で、他の世界では可能性を爆発させている自分を想像するというのも面白いかも知れない まぁあくまで物語だけどw そしてカエルの子はカエルであり、子供の可能性なんてものは、親の可能性以上には脱する事は困難であるという件も面白い そして表題のシーンでの石同士の字幕会話のシュールさは今作品の白眉だと思う
直接的なプロットではなく、喩え話のような内容が散りばめられていて、考察し甲斐のある造りであることは近年のトレンドに沿った作品である
壮大でハチャメチャなホラ話(でもないか)を描きながら、生活に追われ疲れて自分の居場所がなく自分が何者でもないと思っている人々に希望を与える快作。レッツ・ゴー・トゥ・ザ・シアター!
①ミッシェル・ヨー適役熱演。冒頭の生活に疲れた中国系アメリカ人のオバチャンから、終盤の凛々しいお母さん像まで、間に京劇風メイクの歌手・カンフーの達人・華やかなスター女優等を挟みながら演じられるのは彼女しかいないだろうね。
②「あたしゃ、ここで何してるんだろ、このままで人生終わるのかいな」と思っていたオバチャンが自分の可能性や人生の意味(や周りの人々の大切さ)を見つけて再び前を向いて歩きだす話とも、心が離れてしまっていた母娘が絆を取り戻す話とも取れる。
③『アントマン&ワスプ:クワントマニア』(映画は残念な出来だったけど)を観て“量子力学をちょっとは勉強しとかなくちゃ”と思って二冊ばかり関連の本(寝る前に読むと直ぐ眠れます…オススメ)を読んで臨んだのでマルチバースのことはそれほど奇想天外だとは思わなくなった(それでも『クワントマニア』に対する評価は変わらないけど)。
④「ナッシング・ノーウェア・オール・アット・ワンス」⇔「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」なんだね。
このユニバースで何者にもなれなかったエブリンだから何者にもなれるというロジックにした脚本が良い。
同時に無数の平行宇宙(マルチバース)が存在していて、それぞれのユニバースに違う人生を送る自分がいるとしても、“いま、この自分が生きていて愛する人々がいるユニバースが何よりも大事”というところに落としどころを持ってきたのが大変心暖まる。
⑥ただ、笑わせてくれる場面も多いが(生物が発生しなかったユニババースで石となった母娘が何故か会話できるシーンも笑えたし、指がソーセージになったユニバースでミッシェル・ヨーとジャミー・リー・カーティスがレズビアンの関係というのも可笑しくも心暖かい。
一方、やりすぎと下品で笑えないシーンも幾つかあるのも確か。
1)ジョブ・トゥパキが長~いぺ⚪スをムチ代わりにするところとか
2)ア⚪スに突起物を突っ込もうと躍起になっている敵を“そうはさせじ”と攻防するシーンは長いし、とうとう⚪の穴に突っ込まれた物を抜いたのは良いが嗅ぐな!
⑦オチは人情話と分かっていても、そこまで飽かせずに引っ張り最後にホロッとさせるのは良質のアメリカ映画は上手い。
本作でも、最初エブリンがアルファ・ウェイモンドの言うことを信じられず、信じるようになっても“なんでアタシがせにゃならん?”と思うのも普通の人間なら当たり。それが、娘が絡んでいる・娘を救わにゃならん、とわかった途端に“アタシやる!”となる流れも自然で宜しい。そういう意味で脚本と演出は上手い。
⑧ミッシェル・ヨー以外のキャストもおしなべて好演。ジョイ役の子も良かったが、なんといっても『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』のキー・ホイ・クァン(すっかりオッサンになってしまったのは月日の流れを感じてしまった)が演じるウェイモンド、カッコいいアルファ・レイモンドではなく、タキシード姿のウェイモンドでもなく、冴えないけれどもエブリンとジョイとを見守るウェイモンドの優しく暖かい存在感がミッシェル・ヨーに負けないくらいの存在感。
鑑賞動機:ダニエルズ監督5割、あらすじだけ見れば100%シュールなバカ映画4割、それなのに…があるんでしょ?という予感1割
昨年夏にアメリカでロングランになってる頃から、ずっと楽しみに待っていたEverything Everywhere All at Onceをこの際だからIMAX で鑑賞。大正解。
アカデミー賞は作品、監督(ごめんねマクドナー)、主演女優、助演男優、脚本、編集の6部門受賞と予想。助演女優は二人とも良かっただけに票割れしそうで。
演技部門で評価が高いの何でだろうと思っていたら、マルチバースの違う自分に切り替えるからなのね。クアンが瞬時にジャッキー・チェンに見えたり、トニー・レオンに見えてくる。ある意味ステカセキングか『重力が衰えるとき』かも。
『スイス・アーミー・マン』でもそうだったけど、バカなネタを大量にぶちこみ、現実離れしたシュールでとっ散らかった様に見えるストーリーなのに、いつしか一周回って誰しもが考え突き当たる、人として普遍的なテーマを問いかけるところへ着地する。宣材でチラチラ出てるあの石ころにあんな意味があったなんて。
映像表現もワンパターンにならず、それどころか段々エスカレートしていくし、いやこれ編集が大変だったのでは?
バカなことして切り替わるパターン、ひび割れみたいなパターン、視点(カメラ)が左右に振られて切り替わるパターン、衝撃を喰らって切り替わるパターン、いつしかそれらも流動的になっていく…。ああ、好き。
ダニエルがダニエルズになると製作能力が乗算されるのだろうか。
そして今作も下ネタが大量に投入されている。おいそれ、武器じゃな…。ネタモザイクの下は実は履いてるんではと疑っている。このためのこんな形にしてあるのか。そこでそんな伏線回収せんでいいから。とはいえみんなそれぞれ違う人生があるのが垣間見えたりして、実はちゃんと下ネタも理由がある(気のせい)。
アクションもミッシェル・ヨーがすごいのは知ってたけど、キー・ホイ・クアンもこんなにできるんだ。
最後のキスシーンは愛が溢れていて、好き。ミッシェル・ヨーがとてもいい顔してて、つい萌えた。
あとあちこちで『花様年華』みが深すぎる(これ言いたいだけ)。
アカデミー賞とったら史上最も下品な受賞作かも。ぜひお願い。あと、さっさとスタント部門作って、裏方仕事を評価して。それがアカデミー賞の意義。
2回目観賞で面白さを実感
エヴリン(ミシェル・ヨー)を主人公にしたクリーニング屋の物語。
マルチバースの世界の中で情報量が多く、場面の切り替わりが多いのですが、退屈することなく観ることができました。
アニメーションの場面は、クスッと笑え、石ころの場面も芸術性を感じ、想像を遥かに超えていました。
一方、ジョブトゥパキという敵が出てくるのですが、結局、エヴリンとは戦わず終わってしまって盛り上がらなかったです。
この映画は、ピカソの絵の価値が分かれば、映画の良さが分かるのかなと思います。
シュールな設定は良いのですが、もう少し盛り上がりがあればなあと思いました。
3月8日再観賞で、何度も笑い、少し感動しましたので、星3.5から星4.5に変更します。
自分の存在は間違っている。と思う全ての人たちへ
この映画を一言でいえば、世界と宇宙とマルチバースを巻き込んだ壮大な家族愛の物語です。
正直、刺さらない人は刺さらないと思います。
ですが、ギャグや映像は大人なら多くの人が楽しめると思うので、刺さらなかったとしても大丈夫です!きっと!
特に、見てほしい人物像でも書きますね。
○あの時の選択が間違っていたと後悔して、先に進めない人。
○自分が産まれなければ両親はもっと幸せだったのではないかと思う人
○自分の人生は、重要な選択をマルバツ問題に例えると、全て不正解を選んできたと思っている人
です。
私の人生はこれにまみれていたので、刺さりに刺さり、マスクをあっけなく沈没させてしまいました。
主人公の全てを捨ておいてでも
見えてしまった、他の幸せを諦めても
あの時の間違った選択を認め、辛い道へ進むことになったとしても
娘がいる、この娘がいるたった一つのこの世界線を選んでここで幸せになることを選ぶのです。
多くの人にはささらないかもしれない、みんなにウケがいい訳では無いかもしれない、でも
後悔と失敗にまみれズルズルと足を引きずるような人生を送ってる方はぜひ見てください。
救われるとは言いませんが、何か、ハッとして動きだす動力源になる、そんな映画です。
追記
アカデミー賞7部門受賞おめでとうございます!!!総ナメってこう言うことですね。
ミシェル・ヨーさんがアジア人初の主演女優賞受賞ということもあり、本当に歴史に残る映画になりましたね、
私はこの映画を好きになれて、映画館で見ることが出来て心から幸せです。
大好きだ〜!
タイトルなし
面白かったー。どのスケールで個人史を描くか。個人は分岐によって個になる。
前半は眠気との戦いで、それは(私の)脳とは意味を求めてしまうからだろう。
あと、納税から個人史が切り拓かれていくのも、まさに今確定申告の作業をしている身としては「分かる〜」と思った。自分を問われるんだよ、納税。
あと、ジェイミー・リー・カーティスとステファニー・スーがとても良かった(ミシェル・ヨーとキー・ホイ・クワンは言うまでもなく)。
(20230304追記)結末が保守的という批判もあるのかー。あれは、自分を徹底的に手放せたからこそ相手を手放すことができ、それ故、個人同士としての関係をようやく結べるようになったということで、支配する-される/支配し合う関係からの解放という表現と受け取ったから、進化した家族関係を描こうとしてるのだと思った。着くか離れるかという関係そのものからの解放というか。
眠気は厳禁。
序盤から眠気がきてしまってストーリーに追っつかない。
リアルと異世界を並行して進んでく話しなんだけど映像がリアルと宇宙でチョイチョイ切り替わるし、作品の世界観も凄いからストーリーが分かりにくいってのが率直な感想。
個人的面白かったシーンは、超◯太◯ング◯ィルドを両手使いで武器にしちゃうところと、◯ナ◯に◯ナル◯ラグ的な物を挿入しよう(覚醒の為)と、頑張る男二人達のシーン。
あと終盤の目のシールを額に貼ってからの香水を振り撒く、ずれた骨を矯正するシーンは笑えた。
あとキー・ホイ・クァンはグニーズぶりで懐かしいな!ってのと、お互い歳取りましたね!って感じ。
あと1回、2回観ればストーリー把握出来るのかな?観ないけど(笑)
美しくて愛おしいマルチバース
スイス・アーミー・マンと似てる
下品でぶっ飛んでるけど愛おしいし美しい
哲学的で芸術的でユーモアを忘れない
またお前か〜!
ここに繋がるのか〜!
が作中で多くて本当に最高
自分がいるこの世界を愛したくなるラスト
とにかく好きなシーンが盛りだくさんだった
これを映像にしたのが凄いし
このカオス映画を家族の話として着地させられる
俳優陣の演技が本当に素晴らしかった
もう一回観たい!
トドメの愛
2023年期待作の1本。まさかまさかの試写会に当選し、ウッキウキで会場へ。
そしてまさかまさかの期待外れ…。いや悪くはないんですが、今年のベスト候補だと思っていたのでそこの空振りは想定外で脳がバグりました。
先に良かったシーンを列挙していくと、カンフーアクションや他のユニバースから得た能力をガジェットの差し替えのようにチェンジして戦うシーンはとても良かったです。次はどんな能力が来るんだろうというワクワク感がありましたし、ぐるぐる回るカメラワークや意外なところから飛んでくるモノに対しての反応は大いに楽しませていただきました。
娘と母が声の出ない世界で石になり、感情で話し合うシーンもシュールでなかなか良かったです。劇中意外と笑うシーンが少ない中で、言葉と石の動きだけで笑わせてたのは凄かったです。
衣装のデザインも印象的なものが多く、アカデミー賞にノミネートされるのも納得する色や飾りの豊かさでした。
カット数が尋常じゃないのも凄く、実際に撮影されたものはもっとあったと思いますし、製作陣も編集もめちゃくちゃ頭フル回転したんだろうなと思うと頭が上がりません。
家族愛が想像以上に濃く描かれていて、それがくどく感じてしまったのが今作を楽しめなかった1番の要因だと思います。娘と父と夫への愛をマルチバースの自分を見ていくごとに深めて、最終的に家族や周りの人物との日常を取り戻したって感じで終わるんですけど、レズビアンを普通に描けばいいのに、わざわざ主題に持ってくるあたりもなんだか嫌でしたし、それでいいのか?と思うくらい駆け足かつ展開が目まぐるしいので情報整理ができないまま終わってしまった感が拭えないです。映画にある程度のストーリー性を求めるタチなので、どうにも勢い任せにいってしまったなぁと。
前半で光っていたアクションも後半は垂れ流しかつスローモーション多めでゆったりしたものになってしまったのも失速してしまった要因だと思います。RRRのように肩車突撃みたいなシーンはありますが、とって付けただけのように思えて惹かれなかったです。様々なユニバースの人々を拳で救っていく感じの爽快感を演出したかったんだと思いますが、それにしても長すぎました。こういう感じのスタイルに耐性が無いのも痛かったです。
映画は観るまで分からないの法則を痛感させられた一本でした。チャプター分けする映画に難ありというのも今後付き纏ってくるのか…。今年はどうも荒れそうな気がしてならないです。
鑑賞日 2/16(試写会にて)
鑑賞時間 18:30〜20:50
座席 M-21
タイトルなし(ネタバレ)
のっけからアドレナリン大放出。あまりにも凄まじい情報量。矢継ぎ早に展開されるマルチバース、とにかく早い、早い。誰も思いつきようのない「唯一無二」の世界観に終始振り回されっぱなし(イカれすぎてどうかしてる)ダニエルズの頭の中、一体全体どうなっているの、、、
だけど要所要所で時代を捉えたものになっているし、ミシェルヨーが登場人物たちを順番に心のハグをしていき、最後も普遍的なところへ着地する。
とにかくいろんな映画のオマージュがあるので、ネットで調べて予習していくのありかも。あからさまなので知ってみると楽しい。
あと、話の設定が複雑なので、おおよその話の筋と世界設定は理解した上で行った方がいいと思う。特に最初は、どのバースのキャラクターが話してるのかワケがわからず、混乱した。
劇伴なくなる石のシーン、緩急のつけ方上手い。ずーっと情報量すごいので、あれぐらいの強弱が定期的にあるとよかった。あまりに最初からずっと過剰なので途中でダレたのはある。
とにかくバースの切り替えの多さと勢い中心に駆け抜けるので、ストーリーに深みがあるかと言われればちょっと疑問。
あと犬好きは要注意。扱いが、、、
下ネタ具合は個人的にはコーダの方が断然不快。
エンディングの「This Is A Life」、エンドロールでももっと流れて欲しかった。
【試写会にて】A24初のSF超大作‼️
2/16のFilmarks東京試写会にて、A24史上No.1大ヒットそして第95回アカデミー賞最多の10部門11ノミネートを取ったのですごく楽しみにしてました🤗
スイスアーミーマンのコンビ「ダニエルズ」が監督と脚本、マーベル映画のキャプテンアメリカやアベンジャーズシリーズを手がけたルッソ兄弟がプロデュースした作品ということでマーベル的要素も含まれてるし、監督をしたダニエルズのコメディ要素もミックスされてまさに"A24らしいエンタメマーベル作品"といっても過言ではない映画に仕上がっているのではないかと思いました。
キー・ホイ・クァンさん演じる主人公の夫ウェイモンドが別の次元を生きる(アルファ・ウェイモンド)に体を乗っ取られ、国税庁で最初繰り広げるカンフーアクションに興奮しました🤩✨✨
別次元のありとあらゆる世界に生きる可能性(自分達)にアクセスして能力を覚醒させて戦うという設定がすごく斬新でとても面白かったです。
主人公のエヴリンと娘のジョイが監視カメラのモニターの前で喧嘩してる時にモニターに少しフォーカスが当てられるのですがその時から夫のウェイモンドが別次元に生きるアルファ・ウェイモンドに体を乗っ取られはじめて、国税庁ではじめてエヴリンに対して別次元のアルファ・ウェイモンドに「全宇宙を救えるのは君だけだ」といわれそこから予想も常識も超えたマルチバースの世界で壮大な闘いに巻き込まれてゆくのですが…
全宇宙のカオス(悪の根源)の正体は娘のジョイでものすごく流暢な英語で表情や声を変えてダークサイドのジョイ=ジョブ・トゥパキなどを演じていてステファニー・スーさんの演技の幅びっくりしました。
そしてエヴリンのお父さんでジョイにとってはおじいちゃんのゴンゴンの別次元のアルファ・ゴンゴンが別次元の世界のリーダー的存在で、エヴリンがジョブ・トゥパキを倒すのを躊躇すると娘だろうがあらゆるマルチバース(別次元)に影響を及ぼすものは絶対に滅ぼさないといけないというところでエヴリンが葛藤する部分だったり、母と娘の(エヴリン)どう理解してあげればいいの(ジョイ)なんで理解してくれないのという家族愛がメインテーマになっていて最後はハッピーな感じでおわってよかったなーと思いました。
まだ公開日が2週間後と全然先ですがダニエルズの2人が日本が大好きということで反響によっては続編かこういうテイストの映画をまた製作してくれるのではないかと期待しています😳
※結構色々と詰め込んでて、ダイナミックかつスピード感があったりするので1回みただけでは作品を理解するのは難しいかなと私は思いました🤔私自身も公開日の3月にまたみてみようかなって思ってます。
コリャア…たまげタア……
怒涛の情報量に頭パンク
すごい疲れた
ラストの展開には気持ちよさがある
壮大なことをやっていても家族愛に着地
湯浅監督のマインド・ゲームの神様のように目まぐるしく変わるビジュアル、テーマ性も多少通ずるか。
普段フィクションの愛玩動物、特に犬に対しての残虐行為は許容的だったが、なぜかわからないけれど、今作の犬に対する扱いはギャグとしておもろいと思えず少し観てて辛かった。、犬を武器としてつかうぉ!?からのそれってギャグとして面白いんかブンブン振り回したり可哀想と思ってしまった軽い嫌悪感
初回のテーマの解釈
過去の選択を後悔してはいけない、どんな世界でもそこでの幸せのかたちがある。考え方価値観に囚われてはいけない。幸せ、家族愛は普遍的。
ジョブトゥパキの目的の初回の解釈→ジョイは母エブリンに対してのコミュニケーション不順、不満があり無限のユニバースに行けるようになりおそらく理想の世界を夢みるが、どの宇宙でも同じ関係でショック→すべてをのせたベーグルで宇宙をぶっ壊そうとする?理想の世界がある?ついでに同じ悩みであろう母親もいっしょに来てもらうためにつれてくる??わからん、
ウェイモンドの発言によりエブリン闇落ち回避??
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