「3.3) 「王様は裸だ」と正直に言える人でありたい。」エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス tsukaregumaさんの映画レビュー(感想・評価)
3.3) 「王様は裸だ」と正直に言える人でありたい。
今年に入り、映画館で観た作品はどれも当たり。
そろそろ地雷を踏む頃かな?と思っていたが、まさかこの注目作品でとは。
『マトリックス』を注文したら『レザレクション』が出てきた気分。
「カンフーで世界を救う」
まずこの宣伝コピーからして大嘘。
あくまでミニマムな「内面世界」の話なので期待は禁物。笑いの質も幼稚で「一体何を見せられているんだ」と言う気分に。1時間ともたずにこの作品世界にライドすることを放棄した。これなら日本のカルトアニメ(湯浅作品やクレしん劇場版)のほうが、よっぽどぶっ飛んでるし。カラオケも必要経費だからと言い切る「リベラル属性」作品でありながら、最後には強引に「家族」に帰結させる保守性にも疑問。もういい年の娘が母親の呪縛から解き放たれるのは、むしろ良いことじゃないか!
マルチバースってさ、
たとえ独りでも生きていけるための「心の命綱」なんじゃないかと『スパイダーバース』や『ノーウェイホーム』を見て思えたんだけど、本作でマルチバース設定が機能していたとは思えず。色んなバースのエブリンの能力がハイブリッドされるという訳でもないし。
「アカデミー賞の大本命」
こっちは残念ながら本当らしい。
なんでも本作が受賞することが、ハリウッドにおけるアジア人の名誉回復になる?とのことだが、それはここ数年『パラサイト』や『ドライブマイカー』という「純アジア製作品」が十分証明済みだと思う。結局彼らは「ハリウッド製」という自分たちの狭い箱庭でしか認めない、この作品を持ち上げることで自分たちの多様性理解をアピールしたいという闇をどうしても感じてしまった。セレブたちの自己満足に我々がお付き合いする道理はない。
何でも、どこでも、突然に。
つまり垣根を失くせということか。
ファミリー映画に下品なネタがインサートされるのは単なる悪趣味。それは女湯に「心は女性」が闖入することと同義(橋本愛さんを支持したい)。