「オカルトの扱いが中途半端。」ブラック・フォン FSSさんの映画レビュー(感想・評価)
オカルトの扱いが中途半端。
サスペンスホラーには定番の監禁脱出もの。何人もの少年が行方不明になる序盤の雰囲気は不気味で先を期待させるものの、だんだんと展開にご都合主義や突っ込み所が目立つように。狭い地域で友人や知人の少年たちが何人も行方不明になっているのに、主人公の兄妹は平気で単独行動したり、怪しげな男(まさに犯人)にあっさり騙されて誘拐される始末。本人も周囲の大人たちも危機意識無さ過ぎて呆れる。捕まらないと話が進まないとは言え、こういう地味な所にリアリティを持たせてこそ全体に説得力が出るのに、そこに気を使えないのでは期待薄だなと思ったら案の定。
タイトルにもなっている「黒電話」は、被害者の少年たちとの霊界通信に使われるというものだが、主人公の兄妹の母親が霊感体質だったらしく、そのせいで霊と交信できるというご都合主義。まさに"設定のための設定"でキャラが薄っぺらい。妹の夢もたいして役に立っていなかったのに、何故かラスト付近で監禁されている家を特定でき、しかも警察が妹の「夢で見た」という通報でさっそく家に突撃(笑)。子供の夢の話を真に受けていきなり銃を構えて突入なんかする?
肝心の犯人も、少年たちを監禁して〇してた動機を含むキャラの背景描写が何ひとつ無いため、何でここ最近になって急にこんな狭い地域内で事件を起こし始めたのか、何のために監禁していたのか等、一切不明。「ゲームがしたいから」とか言う曖昧な理由で主人公の少年はいつまで経っても放置するのもよく分からず、犯人側の"ルール"がはっきりしないため、床を掘ったり、鉄格子を外したり、壁に穴をあけてるのに何もお咎めなしと言うのに違和感ありまくり。で、何かコントロールしてそうで何もしていない犯人は床の落とし穴に落ちるただのアホと判明(笑)。
いくらなんでも最後に何かどんでん返し(実は主人公の少年は既に〇されていて、最後の生還シーンは魂だけの存在だったとか)があるだろうと思っていたら、そのまま普通に生還(笑)。アル中気味の父親も最後まで何の役にも立っておらず、母親との過去や親子関係が何も描かれていないので、ふたりに謝罪しているシーンも「いや、お前何もしてないやんけ」と空々しく感じられる。親父も少しは事件解決に奔走していればあのラストにも感動は出来るのにそれも無し。とにかく主役の少年や犯人を始め、登場人物の背景が薄っぺらい上に、霊に情報を教えてもらいつつリアルに知性で対抗するのか、もっと妹の霊能力を活かしてオカルト寄りで行くのか、どちらも中途半端なので何を見せたかったのか不明