ロストケアのレビュー・感想・評価
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安全な高みからどん底で這いずり回る人を見下せる人が、この作品を楽しめる
安全な高みからどん底で這いずり回る人を見下す人とは、松山ケンイチ演ずる被告が長澤まさみ演ずる検事に投げつけた言葉です。
介護で心身すり減らしている人はこの手の映画見る余裕も意欲もないでしょうし、この作品を楽しめる人は冒頭の立場の人でしょうと、思いました。
中々重くてシンどいテーマを扱った作品です。
あと、冒頭で長澤まさみ演じる検事が孤独死の現場を訪問します。なぜ、警察でなく検事が?という疑問は、最後に伏線となって回収されます。
法廷でクライマックスとなる○○の場面を描かず、あっけなく終わるので、好みが分かれるところではないでしょうか。
なお、松山ケンイチの演技はとても良いと思いました。
目を背けてはいけない
原作既読勢として設定改変にはモニョりますが柄本明氏が素晴らしかったので、それで
原作既読勢。
いろいろ物申したいことはありますが、まずは良い点から申し上げますと……
柄本明氏の起用ですね。
もうこれに関してはでかした素晴らしいよくぞこの逸材をこの役に当てたとしか言いようがございません。原作でも例の場面は大泣きしましたが、柄本父の演技が上乗せされたおかげで倍泣きしましたね。ええ、この映画は柄本父にチケット代を注ぎ込む作品と申し上げても過言ではございません。松ケン面白い髭の生え方してんなとか作品に関係ないこと思ったりしましたが、それでもあの場面は松ケン斯波の気持ちにシンクロしますね。いや泣くわあんなん。
さて、個人的に微妙だった点です。
いやごめんなさい。本当にこの作品で褒めるところ柄本氏の起用しかなかった。いえ、無論個々の役者さんは大好きです。はい。
①大友の設定について
原作の大友は男性です。
これに関しては作者の葉真中さんから「今の時代に即した設定」とのお言葉もありました。原作者了承の上の改変、ということですね。
個人的に私も女性にしたことについては、特に問題は無かったと思っています。
問題がその親の設定ですね。
原作では大友の父親を富裕層の有料老人ホームに入れています。そして父親はかなり成功した貿易商でした。
……で、なんでここを変えたのか。
父で良いじゃん、ではなく。今回の映画では《夫と離婚して保険外交員をしていた母》になっていたんですよね。
なんでそこ変えたんだろ。
あと、クリスチャン設定も「母まで」ですね。原作では《父の代からクリスチャン》です。
この設定改変が割とデカくて、要するに大友が斯波の存在を気にするか否かがこの辺由来だったりする。
なお、大友が父をホームに入れた時の葛藤も大幅カット、どころかほぼ無くなってましたね。
②介護保険法について
原作では作者さん何者ですかと思うほど徹底的に掘り下げて解説されていました。
……で、なんかここまで清々しく何も触れないとは思ってもみなかったです。この辺が劇中のいろんな方の行動の理由づけにもなったりするのですが。
③対話シーンの多さについて
正直、予告編で既に不安はありました。
で、見事に不安的中しました。
予算が足りなかったのでしょうか。本来であれば登場人物の動きで解説されるべき場面が、大河ドラマのナレ死並のスピードでセリフで処理されるというある意味超展開ですね。
すみません、これでも言葉選んでフォローしてるつもりです。でも実際そうなんだもん。仕方ないじゃん。
なんか登場人物が脈絡なく突然自分の過去のことを話し始め、周りもそれを気持ち悪がらずに受け入れるというパターンが非常に多かったです。
④ジャンルについて
原作は社会派ドラマです。
この映画は2時間サスペンスになりきれなかった人間ドラマです。
ぶっちゃけ途中で登場人物達が種明かしを始めた時点で、この後、名取裕子氏でも出てくるのかなと思いました。
結論。
柄本明氏の名演技は是非観てほしい。
ただ、原作既読勢の方はあくまで別物としてお楽しみいただきたい。
ただ、未読の方がこの作品を見て全体像が理解出来るかと言えば、ちょっとわからんなという感じはありました。
隙間からこぼれ落ちる砂
…いま直面する問題
高齢者の孤独死も含め
介護する人の負担が大きい
検事役の長澤まさみが
殺人犯役の松山ケンイチを質問攻め
して問い詰める場面で…
殺人犯の松山が殺人ではない
……救いであると
介護を通して家族が
抱える問題を現状を問うところで
検事の長沢が国としての法律を
切々と話すが全く心に響いてこない
表面上の様に感じてしまった
苦しんでいる人たちがいる現状
を見ないでいる
松山ケンイチの語るところで
死刑は殺人じゃないのか
という場面で法で定められているから
…正義としている
私たちの固定観念を揺らがす
松山が検事の長沢に問いかける
私達にも問いかけられている
ようにも思えた
長澤まさみが涙を流すところは
…感極まり
二人の演技に釘づけになった
そしてラストの部分も・・
父のことがあったから
殺人犯の気持ちに少し寄りそえた
裁判の時に
父ちゃんを返してと叫ばれて
ハッとした
皆、それぞれの想いあって
苦しくても生きていて欲しい
…家族の想い
殺害は
決して許される事ではない
けど…
一概に善し悪しを
決めることは出来ない
これから一層進む高齢化社会に
課題を含んだ問題
…映画
PLAN 75を思い出した
心に響かない
テーマは興味深く、簡単に善悪の判断をつけられない問題。高齢化社会を生きる日本人にとっては、身内の介護を巡る心情への共感や理解も深いと思います。
なのに、本作はすごく薄っぺらい倫理観とそれっぽい言葉を並べただけで、綺麗に介護問題描いてみました的なものにしか見えず、全く心に響きませんでした。
俳優陣の演技が悪いとかではなく、映画の作りがひどい…。何度も同じような鏡に映った姿や反射を多用し、ドアップの連続、カメラワークに監督の主張が強すぎてノイズになっています。
とってつけたような由紀ちゃんのその後とか何故差し込んだのか分からないし、介護を巡る当人や家族の想いも中途半端。肝心の介護シーンも、もっともっと目を背けたくなるものなはずなのに、ふわ〜っとしか描かない。
そもそも検事と被告人の関係が非現実的過ぎて入ってこなくてイライラ…。どうしてこの検事は最初から偉そうに説教ばかりするのか…最後の展開も都合の良すぎる…。
きっと原作は素晴らしいのだと思いますが、映画としては残念なものでした。
酷評ごめんなさい。
老後問題と介護問題
綺麗事にできない介護の辛さ。
介護の辛さは経験してみないと分からない。特に認知症が出るとコミュニケーションもままならなくなり、映画のように、私も思わず親でも手を上げたくなるときもあった。だからといって殺してはいけないと言うのは、その通りだが、実際に親を殺さずとも、自分が自殺した人もいるのだ。決して綺麗事にできないことをうまくストーリーにしている。
介護未体験の人には分かりにくいと思うが、認知症は記憶がすべて一度に失われるわけでなく、柄本明が演じた父親のように、まだらになるので、クリアに覚えていることも、理屈通りに話せるときもあったりする。だからといって、普段の苦労がそれで償われるかというと、それほど現実は甘くない。
私も親を施設に入れたとき、そして親が死んだときは、正直なところ、解放感があった。後から悲しくなることもあるが、それまでにとっくに涙も尽きている感じなのだ。だから、この犯人を単純に許せないと語ってほしくない。救われたという家族がいてもおかしくはない。それほど過酷なことなのだ。
長澤まさみも松山ケンイチも力演していて、さすがだと思った。綾戸智恵さんのお婆さん役もよかった。
世界中深刻かも。
【”黄金律。”高年齢化と貧富の格差が進む日本のセーフティネットの綻びと”救いの形””家族の絆”とは何かという重いテーマを描いた作品。松山ケンイチと長澤まさみの渾身の演技が素晴しき作品でもある。】
ー 黄金律:何事でも人々からしてもらいたいことは、すべてその通り人々にもしてあげなさい、というキリスト教の思想である。
今作では、この言葉が見る側に重く響いてくるのである。-
◆感想
・セーフティネットの綻びによる社会的弱者の姿や家族の絆を描いた映画としてはケン・ローチ監督の「わたしは、ダニエル・ブレイク」「家族を想うとき」や、是枝監督の「万引き家族」を思い出すが、今作は更に”認知症”に罹患した親の介護という現在社会の喫緊の課題をも加えて描かれている。
・今作は、誰にでも慕われる白髪の目立つ介護士、斯波を演じる松山ケンイチと、彼を大量殺人者として告訴する大友検察官を演じる長澤まさみの渾身の演技に支えられた作品でもある。
・斯波は自ら手に掛けた認知症が進み、周囲の家族が疲弊し切っている老人にニコチン注射をする事で老人とその家族を”救った”と主張し、大友は彼の所業を”大量殺人”として断罪しようとする。
■中盤明らかになった斯波の脳梗塞で倒れ、認知症が進む父(柄本明)を懸命に介護する姿。斯波の黒髪がドンドン白くなっていく。
だが、行政は彼の生活保護申請を無情にも拒否し、追い詰められて行く斯波親子の姿。
そして、父が一時的に理性が戻った際に斯波に言った言葉。
”殺してくれ”
そして、斯波が父にニコチン注射を打ちながら、”父さん!”と言って涙を流しながら抱き付く姿や、父がリハビリのために折った赤い折り鶴の裏にたどたどしく書いてあった”おれのこどもになってくれてありがとう”という言葉。
観ていてキツイシーンであるが、涙が滲んでしまった。
・構成として巧いと思ったのは、冒頭に大友が死後二カ月経った独居老人の部屋に入り、その遺骸が運びだされるシーンと布団の上に遺った人型の跡を複雑な状況で見ているシーンを持ってきた事である。
・大友も、20年位以上会っていない父からの電話やショートメールを”仕事が忙しいから”と自分に言い聞かせ、父からの接触を拒否していた事を刑務所に入っている斯波に涙を流しながら伝えるシーンも印象的である。
ー 斯波は、中盤、大友を安全地帯に居る人間だと頻繁に口にし”貴方の両親はお元気ですか。”と問いかけた時に激昂する大友の姿の意味が分かるシーンである。
大友も間接的に、父殺しをした人物として自覚している事を描いているのである。-
<今作は観ていてキツイ映画であるが、高年齢化と貧富の格差が進む現代社会が抱える喫緊の課題をテーマにして、観る側に様々な問題提起をしてくる映画である。
そして今作のリアリティさを醸成しているのは、松山ケンイチと長澤まさみと、柄本明の確かなる演技なのである。>
行き着く先は、高齢者不要論か
介護士の斯波(松山ケンイチ)が容疑者となる42人の殺人事件の物語です。
映画としては終始見応えがあり、引き込まれました。
まず、斯波は父親が「殺してくれ」と依頼しているので、嘱託殺人が成立します。
ただ、他の41人の介護利用者については、本人の同意なく殺害しているので、一般の殺人と変わらないのかなと思います。
斯波の父親を殺害したからといって、安易に他の介護利用者を殺人と結びつかない気がします。相模原障害者施設殺傷事件の犯人と考え方が似ているなと思いました。「救う」という名目で、自分の考え方で他人を殺してはいけませんよね。
この映画のラストは、「いのちの停車場」のラストと対照的なんですが、個人的には、生き抜く選択の方が前向きかなと思います。
ただ、安楽死を求める声が世間で多くなっているので、そういった意味では意義深い社会派ドラマと感じました。
人を殺してはいけない・・を、問いかけられる
それは救いなのか
今後日本の問題になる事を扱った映画。
重い。が、目を背けてられない問題。
相模原であった某事件を思い出す犯人の主張
それは救いなのか。
松山の演技には引き込まれた。
そして柄本明の演技は凄かった。
善とは?
連続殺人犯として逮捕された介護士と真実を追う検事の話。
利用者の家族、会社の後輩からも信頼、慕われる心優しい斯波宗典、彼の優しさの向こうにあるものは・・。
劇場へ向かう前にめざまし8に映画の宣伝で出演してる松山ケンイチと長澤まさみ、こんだけキャリアあってベテランな二人だけど、まさかの初共演とのこと。
この二人は本作の役柄もあり、撮影中は挨拶は交わすもほとんど必要最低限の会話しかしてないみたい。てか、あえてそうしたみたい。松山ケンイチの言葉で「初共演は一回しか無いんですよ!」、だから初共演の初々しさでこの役に挑みました!と、なのでお互い会話しなかったんです!・・・という言葉を聞いたら前々から気になってた作品だったけどさらに追いうちをかけられて観たくなりました!
斯波(松山ケンイチ)逮捕され大友検事(長澤まさみ)のやりとり、斯波に家族の事を聞かれ問い詰められる大友演じる長澤まさみの言葉荒げる「関係ない!」が迫真の演技で印象的。
斯波演じる松山ケンイチは落ち着きながらも静かに、ナチュラルな感じの演技も素晴らしかった!
作品ではあるけど彼のとった利用者、利用者家族を救ってあげた行動、私の両親は健在なので介護経験はまだ無いですが、実際に介護疲れしてる人は間違いなくいる、そんな人からしたらこの斯波のとった行動を否定する者がほとんどだと思うが、肯定してくれる者も少なからずいるような気がする。
あと前に百花を観た時も同じ気持ちになったんですが、自分の親が介護が必要になった時、ちゃんと対応してあげられるのか心配。
終始作品に引き込まれました!
虚実と現実のせめぎ合い
なかなか難しいテーマを扱っていたからこそ観賞しようと思い至ったのですが、意外と演出が過剰というかわざとらしいというか、よく見慣れた役者さんが決まったようなセリフを言わされているなぁという印象が強くて、これは単に民の心を引くために現代的な問題をネタとして劇化しただけのものなのか・・・と不快な思いになってしまいました。
確かに見ていて気持ちの良い内容ではありませんでした。それは覚悟の上での観賞。でも虚飾が酷い・・・と思いきや、物凄く切実に感じる部分が徐々に挟み込まれている気がしてきて、もしかしたら、あのわざとらしい演出や演技はリアルなものをより現実味を持たせたり身につまされるものにするために敢えてそうしているのか!と・・・まぁ個人的な勝手な見方であり、そんなうまい具合に作られているようにも見えないですがねー。
とはいえ、虚実と現実がうまい具合にせめぎ合っているような印象を感じて、それによって非常に感情を揺さぶられ、さらには今の、いやこれからの高齢化社会というものを否応にも感じざるを得ませんでした。
予想よりも演出されたドラマだったけれども、内容から受け取ることが出来る思いは予想通りだったような気がします。
とっても考えちゃう映画でした
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