劇場公開日 2023年3月24日

「映画の持つ力に期待」ロストケア R41さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5映画の持つ力に期待

2024年8月5日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

この作品が掲げたテーマはとても重い。
最後に検事の大友は、42人の要介護者を殺害したシバに対し、自分の罪を告白した。
法になど抵触しない心の罪
どうしても自分自身を許せなかった大友は、とても人間的に描かれている。
介護の実態 苦しみ どうにもならない 誰も助けてくれない 地獄という現実
社会に空いた穴
「そこにいるんだと気づいた」
しかし、
生活保護すら受けられないことが描かれているが、日本にやってきた中国人や韓国人が来日6日で生活保護申請をし受理されている大阪
どんどん湯水のように外国人への支援が流れ続けている我が国日本の実態
日本人がする大学の奨学金申請を蹴り、中国人や韓国人に優遇している国日本
その中で映画としてようやくこの闇にスポットをあてたことは、大きな意味がある。
安楽死問題
この作品にはかつて要介護者を社会のゴミだと言って次々刺し殺した「あの事件」の面影などなく、家族という絆が呪縛として鎖のようにがんじがらめになっている「実態」を広く認知してほしいというメッセージが込められている。
限界を見た時に知る「社会の穴」
「安全地帯から見ている人間になどわかるはずのない現実」
「身勝手な正義感」
大友はシバにそう言った。
彼女はそう言いながら、自分自身がした父への背徳行為に葛藤している。
介護士の数はどこも足りてない。
介護士のする介護には医師同様に点数制となっていて、その点数が根拠になり助成金が交付される。
しかし、その根拠を付け合せるための資料が煩雑になり、転記、転記と間違いが絶えない。
介護士の実態とは、介護そのものではなく、この転記しながら作るポイントのための資料作りのほうがウェイトが高い。
だから介護士をやめるケースが出てくる。転記しないシステムは高額となる。
私でも知るこのような一般的な問題を誰も解決しようとしない。
さて、
この作品で描かれるシバの行為
これを擁護するデモと断罪するデモがぶつかり合うのが描かれている。
殺害された梅田の娘は、傍聴席から「人殺し」と叫ぶ。
必ずしもシバの意見が正しいわけではないということだ。
この作品が提示したもう一つのメッセージが「安楽死問題」だろう。
シバの論理はこの事件を議論する重要なテーマだ。
その是非を視聴者に問いかけている。
ただし、
自分が「安全地帯」にいる場合と、そうではない場合、そして重要なのが「社会の穴」にいる場合だ。
この社会の穴をなくすことで、介護問題の最悪部分が緩和されるように思う。
このような社会問題を並べて討論しないのに、どうして政治家など務まるのだろうか?
作品では検事がシバに歩み寄ったが、検事がいくら歩み寄っても問題は解決などしない。
この作品は、テーマが重いだけに難しい。
作品そのものよりも、現実的なテーマに考えさせられる。
しかしこれこそが映画の持つ力なのだろう。

R41
luna33さんのコメント
2024年8月27日

R41さん、共感とコメントありがとうございます。

まさにおっしゃる通り、映画の力って大切ですよね。
社会の穴はしょせん「穴」なので誰の目にも触れることなく、でもそこで確実に誰かが死んでいく。それがまた恐ろしいわけで。

「あんのこと」を観た時にも思いましたが、なかった事にしてはいけない。見なかった事にしてはいけない。そのために自分に出来る事は何か、社会が出来る事は何か、皆が本気で考え始める事が第一歩かなと思います。そのきっかけを作ってくれる意味でも映画の存在意義は非常に大きなものがありますね。

そしてR41さんがおっしゃる通り、その先には法律という事になるのだと思います。僕は医療系の仕事をしているので介護職の「現実」がいかに不条理で過酷なものか、ある程度は理解しているつもりです。はっきり言えば介護職自体が「職業」として本当に成立しているのか?と思う事はよくあります。もちろんその要因はとてもひと言で言えるものではありませんが、根本的な仕組みや建付け自体に問題がある事は明らかであり、これはとても個人の「思い」や「やる気」だけではどうにもならないレベルの話になってきます。現場の人達の多くは「やりがい」という名のもとに酷く疲弊しています。この現実は決して無視してはいけないと思うのです。

そういった問題も含め映画やメディアの力も借りつつ良い社会を作り上げて行くんだ、という「当事者意識」をそれぞれが持つことが大切な気がしますね。

luna33
しろくろぱんださんのコメント
2024年8月5日

共感ありがとうございます。
本当にその通りだと思います。

しろくろぱんだ