「【”黄金律。”高年齢化と貧富の格差が進む日本のセーフティネットの綻びと”救いの形””家族の絆”とは何かという重いテーマを描いた作品。松山ケンイチと長澤まさみの渾身の演技が素晴しき作品でもある。】」ロストケア NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”黄金律。”高年齢化と貧富の格差が進む日本のセーフティネットの綻びと”救いの形””家族の絆”とは何かという重いテーマを描いた作品。松山ケンイチと長澤まさみの渾身の演技が素晴しき作品でもある。】
ー 黄金律:何事でも人々からしてもらいたいことは、すべてその通り人々にもしてあげなさい、というキリスト教の思想である。
今作では、この言葉が見る側に重く響いてくるのである。-
◆感想
・セーフティネットの綻びによる社会的弱者の姿や家族の絆を描いた映画としてはケン・ローチ監督の「わたしは、ダニエル・ブレイク」「家族を想うとき」や、是枝監督の「万引き家族」を思い出すが、今作は更に”認知症”に罹患した親の介護という現在社会の喫緊の課題をも加えて描かれている。
・今作は、誰にでも慕われる白髪の目立つ介護士、斯波を演じる松山ケンイチと、彼を大量殺人者として告訴する大友検察官を演じる長澤まさみの渾身の演技に支えられた作品でもある。
・斯波は自ら手に掛けた認知症が進み、周囲の家族が疲弊し切っている老人にニコチン注射をする事で老人とその家族を”救った”と主張し、大友は彼の所業を”大量殺人”として断罪しようとする。
■中盤明らかになった斯波の脳梗塞で倒れ、認知症が進む父(柄本明)を懸命に介護する姿。斯波の黒髪がドンドン白くなっていく。
だが、行政は彼の生活保護申請を無情にも拒否し、追い詰められて行く斯波親子の姿。
そして、父が一時的に理性が戻った際に斯波に言った言葉。
”殺してくれ”
そして、斯波が父にニコチン注射を打ちながら、”父さん!”と言って涙を流しながら抱き付く姿や、父がリハビリのために折った赤い折り鶴の裏にたどたどしく書いてあった”おれのこどもになってくれてありがとう”という言葉。
観ていてキツイシーンであるが、涙が滲んでしまった。
・構成として巧いと思ったのは、冒頭に大友が死後二カ月経った独居老人の部屋に入り、その遺骸が運びだされるシーンと布団の上に遺った人型の跡を複雑な状況で見ているシーンを持ってきた事である。
・大友も、20年位以上会っていない父からの電話やショートメールを”仕事が忙しいから”と自分に言い聞かせ、父からの接触を拒否していた事を刑務所に入っている斯波に涙を流しながら伝えるシーンも印象的である。
ー 斯波は、中盤、大友を安全地帯に居る人間だと頻繁に口にし”貴方の両親はお元気ですか。”と問いかけた時に激昂する大友の姿の意味が分かるシーンである。
大友も間接的に、父殺しをした人物として自覚している事を描いているのである。-
<今作は観ていてキツイ映画であるが、高年齢化と貧富の格差が進む現代社会が抱える喫緊の課題をテーマにして、観る側に様々な問題提起をしてくる映画である。
そして今作のリアリティさを醸成しているのは、松山ケンイチと長澤まさみと、柄本明の確かなる演技なのである。>
コメントありがとうございます。
松ケンさん
すごかったですね。
迫り来る気迫に見いってしまいました。
長澤まさみさんも
たじろぐところとか
涙を流すところは見事でした。
松ケンの語りから
問いかけられている様で
松ケンが正義なのかと
思ってしまうほどでした。
私たちの意識と共に国も
変わっていって欲しいです。