線は、僕を描くのレビュー・感想・評価
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体感する水墨画の世界
漫画版は読んでいます。
感想
水墨画を描くシーンはカッコいいが、物語としては何処か満足度不足感を感じてしまった。
・物語構成
基本的に原作に忠実に作られている印象です。一部映画として画面映えする様な追加シーンはありましたが、基本的には大筋は原作通りなので安心して観れました。
登場キャラクターの抱える精神的な問題についての場面も繊細に描かれていたと思います。しかし、大満足とはならず、何か物足りない?という印象は持ちました。
・水墨画の作画シーン
本作一番の見せ場である水墨画のを描くシーンはとても美しかったです。特に巨大な用紙に描くパフォーマンス作画のシーンは迫力があり、カッコよかったです。
・美麗画面
制作チームが『ちはやふる』を制作したチームなので、画面が終始美しかったです。
・演技
演技も俳優陣の皆さん役になりきっていていて、引き込まれました。
総評
美しい水墨画の世界を体感出来て楽しめた。一方で、物語としては盛り上がりに欠ける印象を少し持った。
真摯な眼差しで水墨画の道を求める
墨絵の求道者の映画なのだが、今を時めく横浜流星さんと清原果耶さんがメインなのでビジュアルがこの上なく美しい。ただ、この映画の見どころはビジュアルだけにあるのではない。主役の青山霜介を演じた流星さんはコロナ禍の延期もあって時間をかけて練習し、撮影に臨んだという。流星さん以外の水墨画家役の出演者も同様で、それは筆を執るときの真摯な眼差しに現れている。
ストーリーは水墨画の大家・篠田湖山(三浦友和)の孫、千瑛(清原果耶)が抱える悩みを軸に展開。その後、霜介もあるトラウマを抱えていることが、次第に明らかになっていく。指導面では湖山は弟子を教えるのが下手という設定だが、敢えて節目に大枠を示すだけで霜介や千瑛に自由に試行錯誤を重ねさせるという筋の通った指導を行っているように感じられた。
他の登場人物では、湖山邸の食などを取り仕切る西濱に扮する江口洋介が90年代のドラマの“あんちゃん”のキャラとあまり変わっていないのが興味深い。また霜介の仲間の役の細田佳央太さんや河合優実さんが水墨画サークルをつくって盛り上げるシーンは、同じ小泉監督作品の『ちはやふる』の乗りを想起させる。特に細田佳央太さんは4年前の『町田くんの世界』を引き継いだユーモラスなキャラクター。ちはやふるの西田を演じた矢本悠馬さんの後継は彼に落ち着きそう。三浦友和さんや、批評家役の富田靖子さんを含めて新旧青春スターの競演も見どころとなっている。
滋賀の五個荘の屋敷を借りきったという湖山邸を舞台として背景の景色は美しく、役者が映らないシーンでも、明らかに墨絵のテーマを意識した画作りとなっており趣がある。さらに、ちはやふるでもおなじみ横山克さんの繊細なメロディはこの映画でも健在、期待通りの作品となっていた。
清々しい青春映画
スポーツ報知さんの試写会で拝見。
水墨画について私は全然詳しくないので、どの程度の質と再現性なのかとかがよく分かりませんでしたが、セリフに頼らずに絵と周りの反応だけで、技術だけが重要なのではなく、自分自身の心と向き合い自分を描く境地に至ることの大切さ、ということが伝わってくる描き方でした。
セリフにしない感情表現を読み取れない人には、陳腐でありがちで、説明不足で不親切に思えてしまうかもしれませんが、そこがいいと思えました。
そして、人気若手俳優二人のキャスティングをしながら、安易に恋愛方面に行かず、同じ道を進む同志として描いた清々しい青春ものという仕上がりに満足。
流星くん演じる主人公の姿に、頭の中で『君は天然色』を作詞した時の松本隆さんのエピソードが蘇りました。
清原果耶の表情や仕草の上手さは格別だと再認識しました。
爽やかで、少し涙腺を刺激する、良き作品だと思います。
ウルウルはしたけど、ワクワクしなかった
試写会にて
ストーリーはちょい唐突、でも水墨画に出会い心が解放されて成長する霜介と、霜介に刺激されて成長する千瑛にウルウル。
ちはやふるチームの再結成とあって、水墨画の表現がちはやを思い起こさせるけど、全体的にはちはや程ワクワクはしなかった。でも原作は読んでみよう。
世界でいちばん明るい屋根の時も思ったけど、水墨画と果耶ちゃんは似合うなぁ。
想像以上にハードなドラマを構築、線に滲む彼らの迷いと美しさに息を呑む
てっきりキラキラ青春ムービーかと思っていたら、もろカウンター食らったよ…。白黒の濃淡に滲む過去と新たな世界に涙が止まらない。
誠実に実写化したことで支持を集めた『ちはやふる』のチームが再び集結し、次に手掛けたテーマは水墨画。水墨画がなんて中学生くらいで習った雪舟くらいしかイメージない。しかしながら、あくまでテーマの1つであることをしっかりと伝えてくれるので問題なし。セリフの中にあるうんちくの様な言い回しもなく、ただただ忠実に紡いでいく。ここまで直向きさが染みる映画もなかなかない。
そんな中で描かれる線は、不思議と観ているこちらも魅了されていく。彼らの過程をなぞりながら、感性が分からずとも不思議と惹かれていくのだ。それと同時に、それぞれが向き合うべきものが線に滲んでいく。あまり多くは語れないが、霜介の過去が何だったのか、向き合うべき線の行方に、この作品が描こうとしているモノの大きさを感じるのであった。その強さは社会派として括ってもあながち間違いではない。
主演は横浜流星さん。強い姿を多く見せても弱い姿を見ることはあまりない気がする。しかしながら、その凄さを改めて体感。真っ直ぐで力強い眼差しが水墨画と重なる。清原果耶さんは文句なしのヒロインだが、やはり年齢を掴みにくいのが惜しい。何にでもなれるからこその弊害と言っていいだろう。
そしてやはり、細田佳央太さんと河合優実さんの役回りは新たな発見と永く愛されるであろう片鱗を見せる。まだ大学生役だが、社会人役となった時、主人公の肩を叩くような役があまりにも似合う。その中で最も凄いのが、江口洋介さん。美味しい所ではあるけど、飄々とした中に隠した爪と柔らかさがもう…。笑
こういう秘密を持つと議論になりそうで心配だが、過程を見てくれれば大丈夫だろう。進むために必要だと気づけるはずだから。
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