「力みの無い、青春映画。」線は、僕を描く こっこさんの映画レビュー(感想・評価)
力みの無い、青春映画。
私事ですが、幼い時から書道をやっています(下手の横好き程度ですが)。
書道と水墨画ってジャンルは全く違いますが、筆遣いや墨一色だけで表現する事など物凄く親和性が有って、昔から観るのは大好きでした。
そんなテーマのお話で、個人的に大ファンの清原果耶さんが出演と聞き、イソイソと観てきました。
白い紙を前に筆を持った時の緊張感…、観ていてゾクゾクしました。一度筆を下ろしたら、もう後戻り出来ない感覚はやってみないと分からないものです…。「線を書きなさい」も同じだなぁw。
なんて話はさておき、主人公が全くの初心者設定のお陰で、自分も一緒に入門したような感覚で、とても楽しく鑑賞しました。ドタバタした展開は無く、ただ真っ直ぐに水墨画と向かい合う、坦々として静かなんだけれども心的葛藤はスゴく激しい、素晴らしい青春映画だと思いました。
技術レベルは違えども、どんな名人でも悩み、壁にぶち当たる様子は、本当に観ている此方も苦しくなる程で、清原さんと主人公、それぞれの葛藤が本当にツラくて、でも悩んでいる姿が何とも眩しくて、つい涙が出そうに成りました。
後半、ただの助手かと思っていた江口さんが、あんな豪快な画を描く画家なのだとは思わなくて、あのシーンはちょっと笑ってしまいました。師匠とも全~然違う画風でしたしねw。
それでも最後、主人公の彼が「何かを」乗り越えた時、その眼に見える風景は一変したんだろうなぁと感じて、我事の様に嬉しかったなぁ。
清原さんの吹っ切れた際に見せた笑顔も、本当に素敵でした。
三浦友和さんは、いよいよこういう役柄もこなせるお歳に成ったんですねぇ…(あんなに大人しい「師匠」は羨ましいですよw)。
昔、黒革ジャンの刑事だった頃が懐かしいww。
水墨画を主題とした小説(原作)は解りますが、それを映画化するのは相当に大変だったと思います。
表面的な芝居ではなく、心の内を覗かせる様な抑えた演技に惹き込まれました。
賞レース等とは無縁な、のどかで穏やかな作品ですが、個人的には2022年一番だと思えた佳品でした。