劇場公開日 2022年5月21日

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ドンバスのレビュー・感想・評価

全26件中、21~26件目を表示

3.0ノヴォロシア

2022年5月30日
PCから投稿

悲しい

怖い

難しい

2014年、ロシアによるクリミア併合後に「独立」を宣言した、親ロシア派が多くいるウクライナ東部ドンバス地方にて起こっている出来事を描いた作品。

昨今のニュースで取り上げられているようなシーンが随所に見受けられる・・・が、これは決してロシアによるウクライナ侵攻後の様子を描いた作品などではなく・・・。

私自身も恥ずかしながら歴史問題に疎く、2月24日に始まった戦争が、いきなり始まったように見えていたタチです。そんな私と同じような人は恐らく多いのではないかと思いますが、何も知らないで観たら、本作の内容が戦争前の出来事を描いているということに驚くのではないでしょうか。

印象に残ったシーンは数多く・・・

地下シェルターで暮らす人々。何度も言うが、これが本格侵攻よりも前の出来事だなんて衝撃。
この人たちは今この瞬間も勿論、ずっと長い間苦しんでいるんですかね・・・。

「新政府」に協力する警察。車の持ち主に署名を迫る…。ソ連って感じ。。
これと似たようなことは、実は現在はロシアの方で起こってたりするのかなぁなんて思ったり。
この戦争が長引けばどうなることやら。

ウクライナ軍捕虜への非人道的行為。戦争が始まった現在は、これ以上に酷い事がより多く起こっているのかもしれないと考えると辛すぎる。

最後、トラックの中で起きた12人の出来事。パトカーが来たと思ったら。。
哀しきことに、フェイクニュースは戦争の常ではあるが、この「共和国」がニュースを取るために行った行動。。この12人も所謂「共和国」の人達なんじゃないの?

本作についても、どれだけ鵜呑みにして良いのかわからないし、難しくて理解しきれなかった部分も多かったが、人の命の重さとか、今後の情勢がより気になるきっかけとなった作品だった。

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MAR

3.5祖国という幻想から脱却できない愚かな精神性

2022年5月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 19世紀から20世紀にかけてのヨーロッパ史は、軍事技術の発展と戦争の歴史である。第二次大戦の終結をもって一応の落ち着きを得たものの、強欲なスターリンの政策によって東西の冷戦が生まれ、同一民族のドイツは東西に二分された。スターリンの死後もソビエト連邦の人々は、祖国=同志=共産主義というパラダイムに縛られていた。
 それは1989年のベルリンの壁崩壊から1991年のソ連崩壊というエポックを経ても、なお続いているように思える。特にロシア系の住民が住んでいる場所では、祖国=ロシア=同志というパラダイムから抜け出せていない。
 1941年のナチスのソ連侵攻は革命後のロシア人にとって大きな事件であり、東部戦線を戦ってナチスに打ち勝った記憶は、ソビエト連邦にとって最も輝かしい歴史である。ロシア人は祖国ロシアに対立する陣営をことごとくナチと呼ぶ。

 プーチンによるクリミア侵攻は、平和だった21世紀のヨーロッパにとって衝撃的な出来事だった。クリミア半島はウクライナ人よりもロシア人が圧倒的に多く、住民がウクライナ政府の統治を望まなかったという背景がある。
 ドンバス地方も同じように住民がロシア系で、祖国=同志=ロシアというパラダイムに心が支配されている。ウクライナ憲法がウクライナ語を唯一の公用語としているせいか、ロシア人には被害者意識がある。クリミアがロシア人による自治区となったことに力を得たのか、ロシア人は武装してドンバス地方を実効支配した。そのための武器はどこから調達したのか。当然ながらプーチンのバックアップがあったはずである。

 ドンバス地方の武装勢力に対してドローンを使った砲撃を仕掛けたのがゼレンスキー大統領だ。プーチンはゼレンスキー政権に対して何度も警告を出した。ゼレンスキーはウクライナ人ではなくユダヤ人でロシア人である。ドンバス地方のロシア人にとって裏切られたという気持ちが加わり、怒りを更に増幅させた。そしてプーチンはウクライナに侵攻した。

 本作品はドンバス地方を武力によって実効支配しているロシア人の精神性を、茶化してみせたり、醜く描いたりしている。極めつけは結婚式で流れる祖国ロシアの歌だ。祖国=同志=ロシアというパラダイムを相対化して見せている。
 実はゼレンスキーも、何度も祖国という言葉を使っている。もはや祖国というよりも縄張り争いである。暴力団と同じだ。祖国というパラダイムを捨てるか譲歩しない限り、紛争の解決はない。子供でも分かる。ゼレンスキーとプーチンの争いは頭の悪い祖国バカ同士の戦いなのだ。
 にもかかわらず、日本の岸田文雄は「極めて困難な状況の中で、祖国や国民を強い決意と勇気で守り抜こうとする姿に感銘を受けた」と述べている。ウクライナ戦争の状況を何も分かっていないバカである。プーチンを盟友として威張っていたアベシンゾウは更に輪をかけたバカだ。日本の総理大臣はバカしかいないのだろうか。

 祖国というのは幻想にすぎない。たまたまそこで生まれただけだ。人間は生まれた土地を離れてどこにでも行く自由がある。土地の支配者は、土地から人々が流出してしまうと困るから、祖国という概念を持ち出して、人々を土地に縛り付けようとする。祖国という言葉は土地の為政者によるプロパガンダなのである。
 本作品は映画としてはあまり面白い作品ではないが、並べられたエピソードの全体をイメージしてみると、祖国という幻想から脱却できない愚かな精神性を笑い飛ばしているように思えた。

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耶馬英彦

3.5とりあえず毒の強い悲喜劇、、、という事にしとく。

2022年5月24日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

今年の初めにこの映画の存在を知りずっと楽しみにしてました。皆んなレビューに書いてますが、この映画はフィクション(創作)です。監督がドキュメンタリーも作ってる人でそういう見せ方が上手いから勘違いしやすく要注意。

と、断った上で、、、たぶん監督が見聞きした事実をベースに話を構築しているんだと思う。基本的にロシアのやり方を痛烈に批判し、それに翻弄される人々の悲喜交々を人で繋げて横並びに対比している。
「祖国」と言う言葉で縛り付けられ、アップデート出来て居ない人々の悲劇ではあるが、同時にそこに暮らしている人以外は気軽に口を挟むべきではない問題でもある。

あくまで国際法的、第三者的立場でしか僕らは語る事を許されないのでこの映画の感想を書くのは難しいが、侵略戦争直前の混沌とした状況を皮肉混じりに生き生きと描いた映画である事は間違いない。

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masayasama

3.0暴力の津波

2022年5月24日
PCから投稿

ドキュメンタリー監督による、まさかの「ブラックコメディ」。
冒頭から、役者が役者を演じて、「ウクライナ軍のテロで、ノボロシアの市民が命を落としました」とフェイクニュースを作っている現場を撮っているのを見て、すぐに「ドキュメンタリーじゃない」とわかりました。

ウクライナ内で起きている、親ロシア・ノボロシア政府の実話(悪行)を、NHK『LIFE』のノリで、役者を使って大袈裟に再現したコント。
皮肉と風刺、批判、揶揄の混ざった「おちょくり」の精神で描かれますが、だいたいが登場人物の誰かの「命」か「尊厳」か「財産」か「人権」かが、「奪われる」のがオチで笑えません。
TVで流れない大川興業のライブや、アメリカの『サウスパーク』が近いかも。
暴力の津波な舞台が12連発。
尺の半分くらいからちょっとウンザリしてしまいました。

その批判攻撃の手はノボロシア政府相手だけでなく、党派性や祖国への愛着を飛び越えて、同じくらいウクライナ軍や政府へも及び、不正ややる気のなさをおちょくっていました。

映画から自分が感じたのは、
「むしろ理解が遠のいた」
「善悪は簡単じゃない」
「2つの国が抱く歴史も感情も複雑で一口には言えない」
「ロシアは全く信用できないが、ウクライナもあまり信用できない」
「振り回される市民は被害者だが、身を守るために時に加害者になる」
ですかね。
とはいえ、「だからといって侵略と虐殺は正当化できない」
とも思いましたね。
おそロシア。

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コージィ日本犬

3.0無知や被洗脳は罪なのか

2022年5月23日
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悲しい

難しい

ウクライナ東部占領地域ノヴォロシアの様々な場所で起こるいざこざや軍事衝突等をみせるフィクション。
ロシアのウクライナ侵攻以前の話ですね。

やらせニュース番組に始まり、議会や検問所や町中でのありそうな出来事を5~10分ぐらいの尺で次々繋いでみせていく。

全体を通してのストーリーは無いけれど、一つ一つがぶっ飛んでいたりやり過ぎだったり強烈な胸クソ悪さがあったり、そして時々やり過ぎ具合がブラックジョークだったり。
ある意味プロパガンダ的要素もあるのかな。

現地の情勢や人々の思想に詳しかったらもっともっと面白かったかも…とは思うけれど、自分には少し難しいところも結構あった。

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Bacchus

4.0注意して、自身で判断を

2022年5月21日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

難しい

はじめに。本作品にはウクライナ文化省と映画庁が協力している。かつ舞台は「ノボロシア」、親露派が実効支配する地域 。すなわち、これには「あちらではこれほど悲惨で非道なことが行われている」というウクライナ政府のプロパガンダが含まれている可能性を常に意識する必要がある。それほど憎悪を掻き立てるエモーショナルな表現があるので注意してほしい。
実際に観て考えてほしいのでネタバレは避けるが、低強度紛争が続く地で日常を生きる人たちが心の平衡を保つことの難しさを改めて感じた。
小ネタとして、治安部門が対象者に「このとおりに書け」と自発的な書類を強制するのはソ連時代からの伝統なんだなと思った。(DAU.ナターシャ、親愛なる同志たちへに続いて3回目)

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LS