「不安定で不穏、その不気味さ」ドンバス N.riverさんの映画レビュー(感想・評価)
不安定で不穏、その不気味さ
主人公を追い続けるのではなく、街で起こっている様々な出来事を繋いだ群像劇構成になっている。
ゆえに、どういういきさつで登場しているのか、説明を欠いている登場人物やシチュエーションも多々ある。
だがその唐突さが、脈絡のなさが、日常をぶった切る理不尽さを強調する。
何が起きるか全く予測がたたない。
いつ、自分がまきこまれるかもしれない。
気付かづ何かに加担しているかもしれない。
忍び来る、そして浸食を始めた大きな力を前にした不安定で不穏、その不気味な空気感がひしひしと感じられるホラーとも解釈できる本作だった。
そう、フィクションであることを忘れさせる、あたかも事実のようにとられた風刺映画であることを忘れないようにしなければならない。
ラストの長回しの説得力に、思わず錯覚しそうになった。
だが滑稽なことが横行している、ととるにはもう、撮影された当時より時代はいっぽ、すすんでしまったのだと思う。
国家や民族、集団の結束、そこに宿る信念、思想。
それらは一体何のためにある力なのか、今一度、振り返りたくなった。
コメントする