「誰か教えてくれないか。算数がぜんぜん合わないのだが。」仕掛人・藤枝梅安2 お水汲み当番さんの映画レビュー(感想・評価)
誰か教えてくれないか。算数がぜんぜん合わないのだが。
極悪人・峯山又十郎ってのは、商家に押し込み強盗に入るたびに、千両箱を何箱も盗んで行くわけですよ。
たぶん1週間か2週間に1回ぐらいの頻度で強盗に入っているみたいな感じです。
そういう奴が、相も変わらず、あばら家に住んでいる。
盗んだ金を散財している様子もない。
にもかかわらず、金がないので兄貴にセビりに行こうとか言い出す。
全然分からない。
辻褄が合わない。
計算が合わない。
どうなってんだこれ。
千両箱を毎週何個も盗んでいる盗人がもしもいて、年間100万両ぐらい盗んだとすると、それは江戸幕府全体の年間の総収入を上回り、幕府が集める年貢の2倍にあたる金を毎年盗んでいることになる。(徳川吉宗の改革で幕府財政が立ち直った享保15年、歳入全体が約80万両、そのうち年貢収入が約50万両「も」得ることができたのだが、それ以上に盗む盗人って誰?)
こういう基本的なデータは、観客はだいたい知っているものと思って脚本を作らないと。
幕末最後の城・福江城には、14年の工期が掛かっている。
で、総工費は2万両ですよ。
1週間の盗みで、城を1個作れちゃうぐらいの盗みを働むような大怪盗が、金がないから兄貴にセビリに行くとかって。
兄貴の懐具合は、当時の武家の水準からいえば相当に良さそうですが、それでもあの金額を払うのがせいぜいの人なんだし。
肝心の仕置きのシーンそのものも、ショボくてショボくてつまらない。
原作を読んでいないので分からないのだけど、もともとの原作がショボショボの設定だったんですかね?
テレビ業界の人たちが、仕置きにさまざまなアイディアを振り絞って面白いシリーズをこしらえた、なまじ「仕掛人というブランド力」があるせいで、原作のショボショボそのままを映像化した作品には、勝ち目が最初からなかったということなのかも知れません。