「ひたすらに暗い」仕掛人・藤枝梅安2 U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
ひたすらに暗い
見ながらに緒方拳さんを思い出してた。
物語はひたすらに暗い。
滅びの美学といおうか、どん詰まりにある人間の性のようなものを時代劇に落とし込んだような印象がある。それをやりたかったのかなぁと。
2面性とでも言うのかな?
梅安が女性に抱く救済と劣情みたいな事とか、正義でも信念でもなく、生業としての殺生とか。
…そんな思惑を無視したとしてもバランスが悪い印象ではある。主役の身長とか、声のトーンとか、犯される女性とか。
昨今のコンプライアンスを鑑みてあんな表現になってはいるのだが、作品としては必要だから削れずにいる。削れないのだけど、リアリズムを全面に押し出せない。梅安を描く上で、悲劇の女性が必要であってもあの様だ。…最大限やっても中途半端にしかならない昨今。
嘆かわしいったらない。
豊川梅安は単体で映されると雰囲気もあって、グッとくる事もあるのだけれどいかんせん、見栄えがありすぎる。いっその事、松竹お抱えの歌舞伎俳優を日活出身の監督に丸投げしてもいいんじゃないかと思う。
芝居場になってヨリばっかりの演出にもうんざりだ。もっとやれる事あんだろうがと思う。
単調だし、スクリーンによる圧迫感が増すばかりだ。
菅野さんのキャスティングにも疑問は残る。
物語の筋が暗くて暗くてどうしようもないので、アクセントが重要にも思うのだけど、どこにも無かったなぁ。
高畑さんだけが光ってた。
何やらしても上手いなぁというか、ピントを外さないなぁと感心する。
なんだろ。
藤枝梅安ってブランドとして悪くはなかったのだけど、足せるものも削るものもある状態で、芯は食わなかった感じだ。
まぁ、コンプライアンスが猛威をふるう昨今では、梅安自体をやるのに無理があるような気にもなる。
そうなんですよねー。
その明るさに虚しさを感じ取ったり、哀しみや儚さがあったりと、そんなコントラストがつけば、嬉しかったんですが…ただただ暗い印象でした。