「善悪の底無し沼」仕掛人・藤枝梅安2 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
善悪の底無し沼
"仕掛人・藤枝梅安" 二部作第2部。
通常スクリーンで鑑賞。
原作シリーズは未読(※現在は既読)。
前作が「静」なら本作は「動」だ。池波原作ならではな因縁が交錯するドラマはそのままに、アクションシーンが増えたことで活劇感たっぷり。狙う者と狙われる者のヒリヒリした因縁が壮絶な死闘へなだれ込む、緊迫感溢れる演出が見事だった。
前作もそうだったが、仕掛けのシーンに「必殺仕事人」みたいな痛快さは皆無。殺す側にも殺される側にも背景があり、両者を絶対悪とは言えないし、絶対善とも言い切れない。
但し、椎名桔平演じるゴロツキ侍は除く。が、世が世なら武芸で身を立てていたかもしれず、考えようによっては彼もまた世情がつくり出した悪、と云う見方も出来よう。
仕掛人として生きる梅安たちの死生観に胸が締めつけられた。仕事で的に掛ける相手が悪人だったとしても、殺しと云う手段が善いものであるわけは無い。因果応報が世の理なのならば、いつ自分が殺される側になるか分からない。善悪の曖昧な境界線を漂う魂に、いつか安らぎが訪れんことを…
[余談1]
二部作通じて演技巧者を揃えた重厚なハードボイルド時代劇だったが、陰惨になりがちな物語の中で一服の清涼剤となっていた高畑淳子の演技がとても良かった。
[余談2]
彦次郎の「こりゃうめぇや」が聞けなかったのが残念。
[余談3]
前作を観た時にパンフレットを購入していたので分かってはいたが(エンドクレジットを読んだ)、ポストクレジットシーンに登場した「長谷川様」に大興奮であった。
主人公をバトンタッチして来年の「鬼平犯科帳」へ繋げる趣向であろうが、ユニバースの感があり、原作には無い二大主人公が本格共演する作品をつくって欲しくなった。
[以降の鑑賞記録]
2023/12/29:Lemino
2024/12/31:サンテレビ「年末時代劇」
※修正(2024/12/31)