距てててのレビュー・感想・評価
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凸凹コンビの繰りなすちょっと不思議な珠玉の傑作
長閑に走るローカル線の電車の車中、小雪散らつく山並みの車窓の風景を背にし、二人の女性が微妙に距離を空け、互いにそっぽを向いて並んで座っている。作品冒頭のこの短かい1ショットが、二人の主人公女性の関係を一瞬にして雄弁に語り尽くし、観客を一気に二人のドラマへと引き込んでいる。その二人の女性アコ(加藤紗希)とサン(豊島晴香)は友人宅の一つ屋根の下での共同生活をしているが、アコは几帳面でストイックな一方、サンはだらしなく自由気ままな性格。けれども、アコは写真家を目指して修行中の身で収入は不安定で、サンはアルバイトとはいえ定収入は有るので、どうやらサンが二人の共同生活の生計の柱になっており、ここで二人の立場は逆転している。性格、生き様の全く異なる二人の共同生活は当然ぎこちなく、二人の繰りなす凸凹な会話や遣り取りや雰囲気が、4つのエピソードのオムニバス構成で微笑ましく描かれている。
監督はアコ役の加藤紗希、脚本はサン役の豊島晴香と主演二人が兼ねてることからも、作品の手作り感が伝わってくる。けれども、その手作り感は多額な制作費をかけた映画に一歩も引けを取らない。冒頭に述べた一瞬にして登場人物の関係を語り尽くすファーストショットや、映画終盤での深夜の山林の中で手にした石が突如、鮮明に緑の光を放つシーンや、瞬時に山林から砂漠へと場所が移るショットではスクリーンに釘付けにされる。
また、フウという小学校高学年ぐらいの女の子が登場する。この女の子、どこか不思議である。どうやら20代の女優•本荘澪が女の子を演じているからのようである。本荘澪は完璧に女の子を演じているのだが、やはり演者の年齢ギャップからの違和感が醸し出されるのであろうか、結果、女の子の不思議感をスクリーン一杯に漲らす効果を挙げている。
映画はCGや大掛りなセットに頼らずとも、ショットとカットの工夫、俳優の配置•演技により雄弁多弁に語れることを改めて認識できる珠玉の傑作である。
隔たりと
夢に向かって進むアコと、フリーターのサン。
2人はとある一軒家で暮らしているが、マイペースなサンにアコは少し振り回されていて…。
名前の付けられない人との関係性、割り切れないその関わりは時に億劫であり愛おしくもある。
一筋縄ではいかない人々のやり取りは、クスリと笑えて何処か懐かしい。
最後、2人の対立は目に見えなかった隔たりが顕在化したかの様だ。
家や集合住宅の一室、至る所にある人々との隔たりと、その間にある豊かさに目を傾けたい。
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