「労は認める。ただ、その労が必要あったか?と思ってしまった。」ボイリング・ポイント 沸騰 スカポンタン・バイクさんの映画レビュー(感想・評価)
労は認める。ただ、その労が必要あったか?と思ってしまった。
ワンショット撮影というと、私が観た中だとアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督「バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」とサム・メンデス監督「1917 命をかけた伝令」ですね。個人的にはバードマンが好きな作品ではあるのですが、ワンショットの意味があったかというと疑問でした。ただ、時間の進め方や起こることの面まぐるしさみたいな所が体験的に楽しかったというのもあり、娯楽としての意味が十分あったと思いました。
「ボイリングポイント/沸騰」に関しても、私はそういうものを期待していました。一流料理店でのてんてこまいが目まぐるしく展開されるジェットコースターな映画を。ただ、その期待は微妙に外した作品だなぁと思いました。
一番違うと思ったのは、一流の人たちがプロフェッショナルさで地獄の運営を乗り越えていくのではなく、色んな理由でポンコツな連中がそのポンコツさで事態が悪い方へ向かっていくという所でした。勿論、一流料理店ならではの苦労は描かれていたのですが、そこにあまりに多くのポンコツさが内混ぜになってしまっているために、料理店の苦労として飲み込みづらい事になってしまっていると思いました。これもある意味では地獄の運営を乗り切るという事なのかもしれないですが、イマイチどう観てやったらいいのかが分かりませんでした。運営の大変さなのか、人間関係の大変さなのか、個人個人の怠慢の問題なのか。要素は色々あるけれど、結局何が言いたいのかは、散漫になってしまったような印象を受けました。
個人的にワンショットにするなら、運営の大変さに絞った方が上手くいったと思いました。他のドラマ部分をやるなら、カット入れた方が別の場所でのドラマを展開させてレストランに集約していくみたいに、もっとドラマチックに演出することができると思うので、そこは撮影手法に対してシンプルに整理した方が良かったと思いました。
ただ、厨房とウエイターの軋轢や、料理シーンなど、愛おしい所も色々ある作品だったので、それなりに楽しめました。あと、ラストには「ええーーー!?」と、心底久々にビックリしました。この「ええーーー!?」を体験するだけでも、行っても悪くないかなぁと思います。
では、また。