劇場公開日 2022年8月19日

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「穏やかかつ眩い映像を貫く、率直さと正直さ」セイント・フランシス 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0穏やかかつ眩い映像を貫く、率直さと正直さ

2022年8月22日
PCから投稿

30代の女性を主軸に描く成長物語。と書くと、同類の多くの映画群の中で埋もれてしまいそうだが、いざ本作を紐解くや、作品内を貫く率直さと正直さに驚かされる。映像は透明感に満ち、語り口もとても穏やかなれど、主人公が直面する悩みや葛藤はその後の生き方を変えるくらい重要なものだ。その中心に位置する者こそ主人公ブリジットと、彼女が子守する6歳の少女フランシス。この幼子、最初は意固地で心を開かないところがあるものの、やがて母子や友人とも違う独特の、唯一無二の信頼と愛情で結ばれていく。その存在からブリジットが学ぶことは大きく、自然体の交流を重ねる二人はいつだって眩い光に包まれているかのよう。また、フランシスを育てるレズビアンカップルが吐露する胸中、産後うつと周囲の理解、友人との再会で直面する格差意識に至るまで、我々がつい見ぬふりする気づきや感情を随所に散りばめ巧みに織りなす。そんな確かな手腕の光る一作だ。

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牛津厚信