「エンドロールでまさかの感涙」おそ松さん ヒピポ族と輝く果実 荒野さんの映画レビュー(感想・評価)
エンドロールでまさかの感涙
映画というよりはOVA的なものではという意見をツイッターで見かけていたので構えずに鑑賞。
オープニングはマグリットなどの絵画パロディがあり、アートとの相性の良さを改めて感じた。高尚なものでもすんなり合っちゃうんだよね。
全編、下ネタとクズな大騒ぎが続き、六つ子らしさに安心する。アウトドアを存分に楽しむ彼らの姿を見られるだけで楽しい。ハンモックで語らうシーンや家をつくるシーンは兄弟の絆を感じてちょっとジーンとした。
人気声優さんがワンシーンのために呼ばれたり、過去キャラ総出演等見どころがあるが、お話自体はそう練ったものではなく、果実をめぐり、延々バカ騒ぎが続くだけだった。
ラストのオチも「らしいな」と、ある意味予想通りに終幕を迎えたのだ。
と、ところがだ。
エンドロールの途中で、まさかの涙が頬に流れた。
自分は映画で泣くことは、そうない。まして、おそ松さんだよ。
オチも、彼らが異民族の姿になっちゃってある意味バッドエンドなんだけど
その姿でゆるーい曲に乗って、ゆるーく踊るんだよ。
まあ何度か本編でも死んでしまうような彼等だから異民族になったくらいどうってことないんだか知れないけど明らかに受け入れて楽しんで見えるんだよね
ああ、ずっとばかばかしい大騒ぎをしてたのはこのエンドロールのためにあったのかと思った。
制作陣はそんな意図はないだろうけど自分はそう思った。
意味のない大騒ぎをして馬鹿をやって意味もなく理不尽な結果になっても彼らは、楽しく「これでいいのだ」と踊り続けるんだ。なんか本編で「理不尽な」ってセリフがあったと思う。
理不尽なことが世の中にはあふれていて六つ子もそれは知ってるんだと思う。
そのスラプスティックな騒ぎはこの世の縮図で、だからこそ、あがきと諦めの葛藤の末のエンドロールのあの不思議な舞は不思議なゆるさとともに祈りを込めたメッセージを放っていた。
おそ松さんのアニメでは「来世来世」とか、ギャグマンガなのに妙に哲学的なセリフが出てくる。
赤塚イズムを継承している作品だからこそ、今回の一見ちからの抜けたようなヒピポ族と不思議な果実も何かしら心の奥に沈殿する凄みを持っている。
気晴らしに笑って鑑賞しようと思った映画で「感動的な、いいものを見せて貰った」気持ちになった。