「のんという生き物、ミー坊という生き方」さかなのこ サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)
のんという生き物、ミー坊という生き方
大好きな沖田監督作品。しかも、さかなクンの半生を描くなんて面白くないわけが無い。時間が合わず1週間遅れの鑑賞となりましたが、、、最高すぎた。いい映画すぎた。さかなクンの半生を描いただけの物語ではない。深い、深すぎるぞ、、!!
なしてこんな純粋な演技ができるのだろうか。
俳優としても声優としても、もっともっと世に高く評価されるべき才能の持ち主・のん。彼女が持つパワーが底知れなくて、もはや怖い。役にハマっていたなぁ、とかレベルじゃないのよ。何をどう説明したらいいのか分からないが、今年一の衝撃だったことは確か。演技ってなに?って思っちゃう。胡散臭さゼロ。ミー坊になっているというか、実はのんはミー坊だったって感じ。異次元。
ミー坊はのんしかいない!と思ったのと同時に、この映画を撮るのは監督は沖田修一監督しかいない!と思いました。やはり、この監督は日常を描くのが上手い。そんな些細な日々の中に、小さな光が不意に現れる。その小さな光を見つけた主人公が、前へ前へと足を進める。その姿に心を打たれ、感動し、自分も頑張らなくちゃと思える。この監督の作品はいつもそうだ。「子供はわかってあげない」で超感動したのだけど、更に超えてきた。これからオススメし続けるだろうな...。
「さかなのこ」と言うだけあって、多くのおさかなさんが登場するし、イラストや豆知識だってある。水族館なんて退屈だろ!というひねくれ者の私が、初めて水族館に行きたいと思ってしまった。おさかなさんについてもとことん描かれている。そして、わたしたちは生命を頂いているんだということも。残酷に見えるが、それは普段見ないからそう映るだけ。小学校の授業で見せるにも、いい映画だと思う。長いか笑
ミー坊という生き方に憧れを抱いた。
純粋で素直で、言っちゃえば単純なポンコツ。でも、その性格が周りの人を救い、時に飽きられ、愛される。そして、ミー坊もまた周りの人に救われる。人は一人では生きていけない。でも、一人応援してくれる人がいれば人は変わる。「広い海に出てきなさい」と背中を押してくれるお母さん、「ミー坊のことをもっと知って欲しい」「変わんねぇな」と笑ってくれ、支えてくれる友達。心が自分でも驚いてしまうほど、震え、感化され、癒された。
磯村勇斗、柳楽優弥、岡山天音などのヤンキー集団との絡みには大笑い。ミー坊だけではなく、それぞれの登場人物のエピソードもあり、本当に飽きない。特に柳楽優弥。笑いをかっさらうし、不器用なりに頑張ってる姿がめちゃくちゃ応援したくなる。微笑ましくなったり、くすくす笑えたり、心が温まったりするシーンも多く、のんという強烈な演技をする中で、しっかり爪痕を残していた。岡山天音の雰囲気もたまらなくよかったし、磯村勇斗も相変わらずヤンキーが似合う。磯村勇斗の快進撃が止まらない。「前科者」「ビリーバーズ」「異動辞令は音楽隊!」と全部面白いんだけど。
若干のツッコミどころと、違和感、そして回収出来ていない要素があり、もうちょい長くてもいいからしっかり描いて欲しかったなとは思った。さかなクンの映画、というよりも、さかなクンを元にしたフィクションって感じだから、ん?と思うところはあっちゃう。だから、さかなクンの半生を描いた物語とはあんまし言わない方が良かったのかも。実際のエピソードもあるのだろうけど、本人が登場しちゃってるから真偽の境目が分からなくなったし笑
自分のやりたいことを思うようにやる。
簡単そうに見えて、全く簡単ではない。現実はそんなに甘くない。「夢みたいなこと言ってるんじゃないよ」「大の大人なのにバカなの?」と言われて当然、仕方ない。そんなことを何度言われようと、ミー坊は決して諦めなかった。ずっとずっと、好きを愛していた。こんな風にハッピーエンドを迎えることは中々無いかもしれないけど、周りが言うから、心配をかけたくないから、という理由で挫折してしまうのはなんだか悲しい話。好きに勝るもの、無しでギョざいます。だから、もし夢を追いかけている人がいたら、全力で背中を押したい。心の支えとなる周りの人になりたい。それでもし、その人の人生がミー坊のようになるのなら。
始まって直ぐに出てくる手書きの白文字。
この映画は、夢追い人の話でありながら、気付かぬ間に男女の間に距離を作ってしまっている我々に向けたアンチテーゼ映画なのかもしれない。ミー坊という役にのんをキャスティングしたこと、男が女に素直に好きだということ、分け隔てなく接すること。随所に描かれる男女問題に心を打たれてしまった。どれだけ深いんだ、この映画。
沖田修一監督の秀逸さに脱帽したくなる、最っ高にいい映画でした。間違いなく、ここ2ヶ月でベスト。この映画に対する思いが強すぎるせいか、かなり長いレビューを書いちゃいました。多くの人に見て欲しいのです。映画も少し長いですが、ぜひぜひご覧下さい。特に夢を抱く中高生に見てほしい秀作です。
※追記 2022年9月13日
鑑賞から2日が経ちました。時間が経つにつれて、魅力がどんどん増してくるこの作品の力に圧倒されています。どのシーンも鮮明に、印象強く残るほど濃厚で見応えがある作品。じわじわと作品愛が強くなっていき、「この映画を満点評価にしなくてどうする!」と心の中の自分が叫んだため、★5.0とさせていただきました。
この映画を見ると、心の中にミー坊が宿ってしまう。
いつもの変わらない日常が少し煌びやかなものに見えて、小さな幸せに喜びを感じるようになる。なんだか今までよりも生きることがちょっと楽しい。悩むのも馬鹿らしくなっちゃう。素直に生きること。悪態をつく暇があれば、今できる新しいことに挑戦したい。今まで類を見ないくらい、影響を受けているサプライズです。
さかなクンの半生を...とレビューしましたが、この作品をきっかけにさかなクンについてもっと知りたい!となり、思わず調べたのですが、よく考えたらこれまんまと好きになっちゃってますね笑 実写映画化、大成功じゃん。しかも、忠実に描く必要ないよね。エンターテインメントとしての面白さ、芸術作品としての美しさ、人間ドラマとしての質の高さ。沖田修一監督らしい、ちょっぴりファンタジックな演出もいいエッセンスになっている。映像作品としての大切な要点の全てが兼ね備えてあるこの作品は、完璧と言って過言ではないでしょう。
映画見た直後に席が立てないほど衝撃を受けた、ってのも私が満点評価を付ける評価点なんですけど、鑑賞後に何度も予告を見たり、作品について調べてしまうというのも、観点に入れてます。まさにこの映画はこれ。見てから何度予告を見たか分かりません。見すぎて、ぎょぎょぎょが口癖になりつつあります。
という訳で、レベチで面白く深みのある大傑作。
ぜひ、劇場でご覧下さい。私も、また見たいな。