「ミー坊をさかなクンたらしめた母の愛」さかなのこ おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
ミー坊をさかなクンたらしめた母の愛
魚類に関する知識と特異なキャラで人気のさかなクンの生い立ちを描いた本作。さかなクンの自叙伝が原作のようですが、さかなクン役に女性ののんさんを起用したことで、本気でさかなクンを描こうとしていないのではないかと、あまり期待せずに鑑賞。ところが、意外にもなかなかおもしろかったです。
ストーリーは、幼少期から魚に夢中で、周囲からやや浮いた存在だったミー坊が、母の理解と友達との交流に支えられ、「好き」を貫いていくというもの。ほのぼのとしたシーンの連続で、これといった起伏もないのですが、自然とミー坊に寄り添って観てしまいます。とはいえ、ストーリー的にはまったり感が強く、おもしろみに欠けるのは否めません。
ミー坊は、世間で「普通」と言われる枠に収まる子ではなく、変わり者で相手の気持ちや雰囲気を察することのできない、発達障害が疑われる子として描かれます。しかし、その無邪気な人柄、魚をこよなく愛する純真さ、それがもたらす深い知識などから、周囲の人たちを自然と笑顔にする愛されキャラとしても描かれています。
初めはミー坊をからかったりバカにしたりしていた、幼なじみや級友やヤンキーたちが、いつしかミー坊の魅力にひかれ、大人になっても友達として大切にしているのがわかるシーンは、思わず目頭が熱くなりました。ミー坊が多くの人を笑顔にし、一方でその人たちに支えられていたことがわかる、いいシーンでした。
そんなミー坊がまっすぐに成長できたのは、間違いなく母親のおかげです。絶対的な愛でミー坊を支え、周囲の心配の声にも毅然とした態度で応じる姿に、子育ての神髄を見た気がしました。さかなクンが「好き」を貫く原点は、ここにあったのだと思います。
主演はのんさんで、天然な感じがよかったです。終わってみれば、性別にこだわらず、ミー坊という個性を大切に描くという点では、よいキャスティングだったと思います。脇を固めるのは、柳楽優弥くん、磯村勇斗くん、岡山天音くん、宇野翔平さん、井川遥さんらで、それぞれの演技が涙を誘います。思わず何度も目が潤んでしまいました。さかなクン本人も出演していましたが、やや微妙な存在で、実在モデルがいるのか気になるところです。