劇場公開日 2022年6月3日

  • 予告編を見る

「奇妙な笑い方」シェイン 世界が愛する厄介者のうた 万年 東一さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0奇妙な笑い方

2022年6月9日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

楽しい

興奮

とにかく笑い方が気になる、アル中でヤク中の後遺症からくるものかと思いきや若い頃からの特徴的な笑い方、キース・リチャーズやイギー・ポップは今や健康体で老いても元気な姿が印象的な反面、今現在のシェインは言葉も朧げに廃人ギリギリの様相、シド・ヴィシャスやジョニー・サンダース、The Germsのダービー・クラッシュと重なるような生き様とスレスレで生き残ってしまった痛々しい姿がありながら、歳を取って丸くなる訳でもなく攻撃性が増すばかりのPunkな存在感は今でも健在。

ケルト音楽とPunkを融合したアイリッシュ・パンク又はケルティック・パンクの先駆者でもあるThe Poguesのバンドとしてよりシェイン・マガウアンの幼少期からアイルランドでの生活を丁寧に時間を割きながら描き、北アイルランド紛争とIRAの歴史を絡めながらシェインのPunkで破天荒な人生が色濃く映し出される。

劇映画はイマイチでもPunkのドキュメント映画を撮る腕はピカイチなジュリアン・テンプルだが『ストレート・トゥ・ヘル』繋がりでアレックス・コックスが監督しても面白い作品になったかも、劇中のアニメーションも印象的で手掛けたのはハンター・S・トンプソンとコラボした『ラスベガスをやっつけろ』でも有名なラルフ・ステッドマン、彼のドキュメント映画『マンガで世界を変えようとした男』でも縁のあるジョニー・デップが本作の製作を担った甲斐があった、シェインと会話するジョニー・デップに今現在の裁判沙汰を思い起こすとそんな暇あるのかよとツッコミたくなるノイズでしかないスター俳優の存在感!?

客としてフロアで暴れるシェインの近くにいるのはシド・ヴィシャス?互いにまだ何者でもないPunks時代の若かりし姿、時代遅れと揶揄するThe Clashを御丁寧にジョー・ストラマーからはお褒めの言葉を頂くインタビュー映像、シェインの対談相手にはPrimal Screamのボビー・ギレスピーも参加して、アイルランド・ダブリンで行われたシェインの誕生日を祝ったコンサートにはU2のボノやニック・ケイヴまで登場、シェインは弱々しくも車椅子での姿でありながら存在感が廃れてはいない。

万年 東一