「最近の思い出し映画の中では抜きに出た1本」辻占恋慕 ONIさんの映画レビュー(感想・評価)
最近の思い出し映画の中では抜きに出た1本
たまたまカレルゼマン特集を観にいった際に予告編を観て、このシンガーは誰?…早織?!ということでほぼ早織さん目当てで観にいって大正解。初っ端からグイグイと引っ張られて気づいてたら涙で終わっていた。
ライブハウスでの偶然の出会い、マネージャーと歌手(売れない)の葛藤の日々、そして… という青春の終焉のお話。会話劇が面白く、そして見たことのないこの茫洋とした俳優、しかもゆるんだ肉体の俳優は誰だと思ったら監督だった。それでか。ほぼ1対1の会話劇になっている。カメラが手元だけ映し、人すら映っていなくとも会話は進む、そして歌の挟み方が気持ちいい。そしてまさに30歳前後のこのままどうしたらいいという時代の怖さを体現したかのような睨みをきかす早織の目つきと歌声がいい。まあ予告編でそれを観たくて行ったのだけどたっぷり、そして映画としてもただひたすらにそれを映し続け、最後に人がたくさん集まって歌うはずのライブハウスで予想外の展開で幕引きとなったところで青春が終わる。
このところありがちなちょっと昔を切なく思うタイプの映画でもあるけど、それらの映画にはない決定的なものを主人公ふたりが持っていて、それが美しかった。ひとつはやはり早織さんのあの目つきと歌声、もうひとつは茫洋と歌をやっていた男がサポートに回り、そして幕を引く。とても無様でとても尊い、思い出しただけでも泣ける。
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