劇場公開日 2022年9月1日

「奇妙な日本を舞台とした殺し屋達の物語」ブレット・トレイン bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0奇妙な日本を舞台とした殺し屋達の物語

2022年9月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

伊坂幸太郎の『マリアビートル』が原作の、殺し屋達によるノンストップ・アクション・ムービー。原作も面白かったが、ハリウッドがどう脚色するのか楽しみにしていた作品。原作では東北新幹線が舞台であったが、本作は東海道新幹線の『のぞみ』ならぬ『ゆかり』…?殺し屋達が次から次へと同じ新幹線に乗り込んで、それぞれの目的に向けて、壮絶なバトルを繰り広げていく。

ストーリーや登場人物は、ラスト前までは原作とほぼ同じ。ブラット・ピット扮するレディーバクを中心に、ヤクザ大元・ホワイト・デスに操られた殺し屋達が、大金の入ったアタッシュケースを奪い合い、グロさも満載の殺し合いを展開していく。

そのバトルも、新幹線車内ということで、手元にあるアタッシュケースやパソコン、箸、そして毒蛇までも登場し、あらゆるものを武器にしたバトルシーンも面白い。そして、何より出演者たちのウィットの効いた会話やまさかと思うようなコメディータッチなシーンに思わず吹き出してしまい、怖い殺し屋映画のイメージとは、一線を引いたコミカルな作品ともなっている。

その殺し屋達が、
〇常に運に見放され、しかも気弱で黒メガネの殺し屋『レディバク』
〇我が子をビルから付き落とした奴に、復讐を誓う元殺し屋の『キムラ』
〇キムラの仇とされる、女子中学生。実は悪の申し子である『プリンス』
〇腕利きの殺し屋として名の通っている、凸凹コンビの『レモン』と『タンジェリン』
〇毒針によって、周りが知らぬうちに相手を射殺す『ハーネスト』
〇ヤクザの大ボスに『ホワイト・デス』
〇そして、キムラの父親役の元ヤクザの『エルグ―』
と個性豊かな強面の面々。

ラストシーンは、流石にハリウッド。デビット・リーチ監督は、原作には無かった、ド派手な新幹線衝突シーンと意外な血縁関係を組み込んで、見応えあるフィナーレへと結びつけていた。また、意外なハリウッド俳優が、チョイ役で何人も登場し、最近公開されたアクション映画をモジってもいた。また、最初のトラックが最後に重要な役回りで登場させたり、日本人には懐かしいBGMを流したりと、小ネタを散りばめ、お洒落に仕上がっていた。

但し、日本人からしたら、ここに描かれた日本の様子は、奇妙で違和感しかない。コロナ禍ですべてロスのスタジオで撮影したということだが、新幹線内部やホームの様子、富士山や街の景色、日本人らしからぬ日本人…等々、突っ込みどころは満載。真田広之がアドバイスはしたようだが、現代の日本を舞台にするなら、もう少し日本人が見ても納得する映像を作って欲しいと思う。

まぁ、そこを差し引いて、星4つだから、次から次へと個性ある殺し屋同士のアクション・シーンが続く展開は、面白かったし、あっという間の2時間だった。個人的には、原作を読んでから鑑賞した方が、違いや同じところを見つけながら楽しめると思う。

bunmei21