劇場公開日 2022年9月1日

「ブラピ&真田広之で眼福、パラレル日本弾丸珍道中」ブレット・トレイン ニコさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ブラピ&真田広之で眼福、パラレル日本弾丸珍道中

2022年9月2日
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鑑賞方法:映画館

 詳しい事情も知らず受けたブリーフケースを盗むというミッションのため、新幹線「ゆかり」に乗り込んだとにかく運の悪い殺し屋レディバグが、不運な災難に巻き込まれまくるうちに、ことの全貌が明らかになってゆくクライムアクションコメディ。
 登場人物多めで、複数のユニットの話が並行して進む物語は初見だと頭が忙しくなりがちなので、今回は原作を読んでおいて正解だった。大まかな流れは原作に沿っているものの、大半の登場人物は人種から違うし、細かい設定はいじっているし、終盤は原作と全然違う展開なのに、不思議なほど違和感がない。監督が原作のテイストをきちんと理解して、そのイメージを大切にしながら物語を膨らませたことが伝わってきた。
 ちなみに機関車トーマスネタはほぼ原作通りなのだが、原作の会話自体がタランティーノの映画の中のやり取りのようなリズム(バイオレンスと隣り合わせなところも似ている)。映像として見せられた雰囲気は想像通りで、外国人の会話によく馴染んでいた。
 終盤はギアを上げて一段とぶっ飛んだ方向に行くが、むしろこうした方が確かに映画としては映えるなあ、と納得出来る展開だった。

 ブラピのアクションと飄々としてちょっと可愛げのあるイケメンぶりをたっぷり堪能出来るし、相変わらずカッコいい真田広之と彼の殺陣も見応えがある。個人的にはこのイケオジ2種山盛り感で8割満足。王子役が男子中学生から女性に変えられ、犯行動機も変更されたのは、子供を愉快犯として描くのは……とか、原作通りだと配役に女性が少なすぎるから、とかのポリコレ的事情を感じた。しかも変更後の動機がとても定型的なもので原作の強烈さが薄れ、そこだけはちょっと微妙な気持ちになった。王子の悪意は結構物語のテーマの核だったような。ジョーイ・キングのプリンスもこれはこれでアリという感じで、がっかりしたりはしなかったけれど。
 ラスボスがロシア人に変更されたのもプリンスやサンの配役の都合かな。

 作中の日本描写はあえてデフォルメされたもので、リアルそのものではないところがむしろいい。もし日本のディテール描写だけが異様に現実的だったら、荒唐無稽(褒め言葉)な物語が浮いてしまって、かえって没入しづらくなるだろう。そもそも原作からして色々と日本ではありえない話で、無国籍な雰囲気に満ちている。伊坂幸太郎も「現実とは異なる世界でのお話」と言っているのだから、この路線がベストマッチ。キャスト紹介やエンドロールで漢字とカタカナをオシャレに使ってくれていて嬉しかった。

 音楽もところどころ斜め上で笑ってしまった。いくら日本をフィーチャーしているといっても、ハリウッド映画の一番いいところで突然「時には母のない子のように」とか「ヒーロー」(朝倉未稀)が流れたらびっくりするよ!なんやそれ!でもこれは日本文化圏の人にしか分からないサプライズだと思うとちょっと嬉しい。
 鑑賞中は気付かなかったが「KILL ME PRETTY」は奥田民生歌唱、「STAYIN’ ALIVE」はアヴちゃん歌唱らしい。凝ったチョイス。
 終盤でおバカコメディっぽさが強くなる点は原作ファンの好みが分かれるかもしれないが、個人的にはエンタメ映画化にあたってこの匙加減はなかなかいい塩梅。

ニコ
満塁本塁打さんのコメント
2022年9月3日

ニコさんご教示ありがとうございました。展開が早すぎて、モモもん、違う人に見えました!\( ˆoˆ )/

満塁本塁打
グレシャムの法則さんのコメント
2022年9月3日

アサシン5さんもおっしゃってますね。
知っててワザとやってる〝なんちゃってニッポン〟‼️
分かってないとできない、というところにリスペクトを感じる…
うーん、思ったよりも深いのですね。
また見なきゃ‼️

グレシャムの法則
グレシャムの法則さんのコメント
2022年9月3日

今回は、常連さんも含めて多くのレビュワーの方が、原作を踏まえての投稿になってるのも、なんだか楽しくて嬉しい❗️
例の王子ですが、原作通りだと、あの毒を中和する役目の家庭教師〝鈴木〟も登場させなくてはならないし…
なぜ人を殺してはいけないのか。
についてのやり取りは封印して、エンタメに専念したのかもしれませね。

グレシャムの法則
なないろさんのコメント
2022年9月2日

大共感でございます。的を得ているレビュー読み応えありました!
自分の拙い表現がお恥ずかしいです…

原作では強烈な王子の件をあれはあれで上手く改編してると思いました。王子を緻密に再現したら全く違う、それこそシリアスなサスペンス映画になっていたと思います。まさに王子の存在が原作の核になっていますので、それはそれでもちろん観てみたったです!
イイねありがとうございました(^^)

なないろ