「うっすら反宗教映画」LOVE LIFE ちんくるほいさんの映画レビュー(感想・評価)
うっすら反宗教映画
深田監督の作品は好き。だから楽しみにして行ったけど…
主人公の妙子は一人息子を亡くす。でも再婚したばかりで新しい夫や義父母がいるから、悲しむことすら許されないような環境にいる。息子の死を、母としては向き合いたいのに、妻としては忘れ去らければいけない。
唯一息子の死を共有出来たのが、突然現れた元夫のパク。彼は聾唖で、公園で浮浪者のような生活を送っていた。福祉課で働いていた妙子は、夫の二郎の合意のもと、パクの生活支援を手伝う。
妙子は元夫のパクと接することで、暗い闇から抜け出せるような気がしたんだと思う。それに加え、韓国人だし手話でしかコミュニケーションが出来ないし、自分がいないとこの人は何も出来ないと思うほど、心が救われる。でも。それは勘違いなんだ、と言いたいんだと思う。新しい夫の二郎を振り切ってまでパクについて釜山に帰るが、当のパクは案外居場所があり、妙子がいなくても余裕で暮らして行けそうな感じ。
夫の二郎には、人間はどこまで許容できるか、という問題を背負わせたかったのかな。妙子と同じ福祉課で働く二郎は、聾唖のパクに情けをかけ、妙子がパクの面倒を見ることを許すけど、本当は面白くない。だから元カノと浮気する。そしてパクが自分の家に勝手に上がられてた時にはプッツン。
冒頭にシスターが登場したり、二郎のお母さんがキリスト教に入信したり、宗教的な要素が映画をうっすら覆っているが、この映画は宗教の教えの限界を問いかけているのかと読んだ。人は人を助けることでのみ救われる、これも思い込みだと言ってるようなもんだし。どんな人間にも許容できる限度があるってうのもそう。そもそも神様がいて子どもがあんな状況で死ぬか。
目を見て話す、という表現を使ってたが、心の支えになるのは宗教的な教えではない。人と向き合うことなんだ。なんかシークレットサンシャインみたい。
映画を見終わった直後はよく分からなかったけど、何日かじっくり考えたらこんな内容だったんだなぁと。