劇場公開日 2022年12月23日

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「原作ありものの、正しい映画化の典型例」かがみの孤城 ジュン一さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0原作ありものの、正しい映画化の典型例

2022年12月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

知的

幸せ

珍しく原作既読。

なので文庫でも八百ページ近い長編を
二時間の尺に納めるには、
相応の整理が必要だろうとの気がかり。

とは言え、物語を構成する三つの大きな謎(伏線ではない)、
孤城に集められた七人に纏わる謎
鍵の在りかに纏わる謎
「オオカミさま」に纏わる謎
に関わる部分は省略が効かず、
ではそれ以外をどう工夫するかが見もの。

もっとも原作を閲読中には、
物語の主線となる一番目の謎の見当は
上巻の中ほど前に判ってしまい(「喜多嶋先生」についても)、
既に読んでいる人間にそのことを話したら
「つまんね~やつだなぁ~(「チコちゃん」風)。
もっと物語の世界観に没入できんのかい!」となじられた経験。

おっと、閑話休題。

ため、最初の謎については、巧い処理ができるのでは、とも
思っていたら案の定。

文書を読んで頭の中で想像するのと、
視覚情報として直接入って来るのでは雲泥の差。

ヒントの見せ方も巧みで、遥かに真相に辿り着き易くなっている。

二番目の謎についても同様。

読者であれば作者がぶら下げた「レッドヘリング」にがぶりと齧り付き、
それを離せず最後まで懊悩するも、
絵面で見せられればやはり理解は進もうというもの。

三番目の謎については、手掛かりの出し方が上手い。

他の人の背景は最後の最後まで殆ど語られないにもかかわらず、
肝心のエピソードについては詳細に触れられ、
全体的に、鑑賞者層を想定した、相当に丁寧な造り。

映画化にあたりばさっと省略されていたのは、
主人公のそれを除いて、個々人の背景。

それでも、最後のシークエンスで急いた様に提示し、
それなりの理解をさせてしまうのは、作り手の手練も間違いないが
原作の緻密な構想が奏功したとも言えるだろう。

先に挙げた諸点は当然のこととして、
それ以外の面に於いても、映像の力を再認識。

とりわけ、七人が孤城を去る場面は、
本を読んだ時には取り立てての感慨を持たなかったのに、
本編では思わず熱い想いが込み上げて来る。

多くの鑑賞者が、同じ感情を持ったのではないだろうか。

監督の『原恵一』は
〔嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲(2001年)〕や
〔嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦(2002年)〕の評価が高いけれど、
個人的には『森絵都』の原作を映画化した〔カラフル(2010年)〕の方がツボ。

奇しくもこちらも原作既読。

案内人が存在し、
且つ「再生」の物語りとの共通点があるのは不思議。

ジュン一