劇場公開日 2022年12月23日

  • 予告編を見る

「弱った心に優しく寄り添う良作」かがみの孤城 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0弱った心に優しく寄り添う良作

2022年12月25日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

幸せ

予告でそこまで興味を惹かれたわけではなく、たまたま時間の都合がよかったので鑑賞してきたのですが、思いのほかの良作で、鑑賞後の満足度はかなり高かったです。

ストーリーは、同級生からのいじめで不登校となった中学生のこころが、自室で突然光り始めた鏡の中に吸い込まれると、そこは西洋の城のような場所で、狼の面をつけた少女・オオカミさまから「ここに隠された秘密のカギを見つけた者はどんな願いも叶えてもらえる」と告げられ、先に訪れていた見知らぬ6人の中学生とともにカギ探しに挑む中で、しだいに心を通わせていくというもの。

まずは、開幕早々にこころの置かれた状況、親子関係などをさらっと理解させ、あっという間に鏡の先の城へと場面を移します。舞台のお膳立てまでが早く、訳もわからず不思議な世界に放り込まれ、さまざまな疑問が湧き上がり、観客もこころの心情と同化するような展開がよかったです。その後は、ややゆったりとして少々浸れませんでしたが、中盤で7人の少年少女たちの共通点が明らかになってくるあたりから、この城に隠された謎をめぐってがぜんおもしろくなってきます。

とはいえ、わかりやすいヒントのおかげで序盤で喜多嶋の正体に薄々気づいてしまいました。そうなると、集められた少年少女たちの素性や現実世界で出会えなかったわけにも気づいてしまいます。さらには、リオンの過去が語られた瞬間に、オオカミさまの正体も察しがついてしまいます。おかげで、種明かしで味わう爽快感が薄れてしまいました。ここは、あまり深読みせずに観るのが吉だと思います。

それでも、終盤のさまざまな伏線回収は小気味良く、それとは気づかなかった細かな伏線もあったので、最後まで楽しむことができました。映像的には昨今のアニメにしてはそれほどの魅力を感じませんが、本作はストーリーで魅せる作品なので、とくにマイナスポイントには感じませんでした。

鮮やかな伏線回収も見どころですが、そのあたりの察しがついてなお心に響くのは、悩みや傷を抱える心にとことん寄り添った脚本のおかげだと思われます。不登校が大きな教育問題となり、同じような悩みをもつ若者が多い現代、このような作品が世に出る意義は大きいと思います。本作が、苦しんでいる多くの若者の心に響いてほしいし、周囲の人たちが若者の悩みに気づき寄り添うきっかけになってほしいと切に願います。

キャストは、當真あみさん、北村匠海くん、吉柳咲良さん、坂垣李光人くん、横溝菜帆さん、高山みなみさん、梶裕貴くんらで、タレントさんの脇を一流声優さんが支えるという構図です。全体的には悪くないのですが、中には力不足の方もちらほらいて、劇場版アニメのキャスティング問題は、残念ながら本作でも感じてしまいました。

おじゃる