「ハンカチはイリマシタ」アイ・アム まきもと ゆり。さんの映画レビュー(感想・評価)
ハンカチはイリマシタ
オリジナルの「おみおくりの作法」の方は、上映終了後に紹介記事を読んで、観たかったなあと思った作品です。ラストがどうなるかも記事に書いてあったので知っていました(でも未見)。
本作は、同じく山形県酒田市が舞台の「おくりびと」に比べると、良く練られた脚本とは言えませんが、阿部サダヲさんの演技が良かったです。私は阿部さんの甲高い声でまくしたてる話し方が苦手で、「いだてん」ではヒステリックに感じましたが、本作ではチャーミングでした。
”お見送り係”牧本のキャラクターはなかなか掴みづらいです。
こだわりが強く、自分が作ったルールで行動したがり、ルーティンから外れるとパニックになる牧本。
時には喋り出すと止まらなくなるほど饒舌なのに、内心は明かさない牧本。
48歳になってお見送り係の廃止が決まってしまい、環境の変化に順応しづらい彼は、将来に不安を感じたのではなかったか。
毎日フライパンで調理してそのフライパンから直に食べていた彼が、ある日きちんと皿によそって食事するようになった心境の変化は気まぐれなのか、何か深く感じ入る事があったのか。たぶん、この仕事を始めた頃は、ただただ愚直にこなしていた男が、次第に心から故人の為に奔走する善意の人になったということかなと思いました。
牧本の最後の「がんばった」が、すべてをやり遂げて満足した「がんばった」ではないだろうと思うと、切ないですね。
ラストの二つのお葬式は、対比を強調したいがために、極端にし過ぎました。塔子はお墓を譲ってもらう必要があったでしょうか。父親を母親と一緒にするかどうかも含めて、後でゆっくり考えればいい事ですから。
もう少し、日本人の感覚や人情に沿ったラストでも良かったでしょう。