「まきもと、いま、こうなっちゃっていました~の手振り。せんだみつおの「ナハ、ナハ」のパクリじゃないの?」アイ・アム まきもと カールⅢ世さんの映画レビュー(感想・評価)
まきもと、いま、こうなっちゃっていました~の手振り。せんだみつおの「ナハ、ナハ」のパクリじゃないの?
プロフェッショナル・仕事の流儀(山形県庄内町役場市民福祉課おみおくり係:牧本壮さん(48)の場合
なんであの刑事の神永はあんなにイライラして乱暴な口調なんだろうと思ったが、次第に牧本の流儀がわかって来て納得。孤独死のご遺体は警察で検死して、保冷庫保管になる訳だが、その先がつかえていると困るのだ。神永には公営の火葬場の保管所に強制的に移させることはできないのでしょうね。 ゴミ屋敷の腐乱死体をサダヲとでんでんに任せて去って行く刑事の気持ちもよくわかる。葬儀屋のでんでんが言う。「牧本さんすごいね。オレもすごいけど。」自腹で葬儀代を払うって、地方公務員の給料では考えられないが、公団住宅で非常に質素なひとり暮らしだから出せるのかなぁ。ミニマリスト。【川っぺりムコリッタ】で覚えたての言葉。
おみおくり係最期の蕪木(宇崎竜童)の件がメインストーリー。
携帯の電話帳に唯一残っていた食品加工会社から蕪木の人生を紐解いてゆく。アルバムの少女の写真は実の娘ではと推理。最初は松尾スズキ演じる同僚だった男に接触。「あんた、恐ろしく察しが悪いな」には大爆笑。蕪木のあのエピソードは所長室の陳列棚の表彰カップにしたあのことに直結していた。男気のある蕪木に影響され、リスペクトしていたことの表れだ。バカだけど。 蕪木が入れあげていた酒田漁港の居酒屋の女を探しあてる。2年同棲していたという気っぷのいい美人女将のみはるは宮沢りえ。娘と孫娘がいた。「あんた、子供いる?」「いいえ、要りません。」「あげないわよ。」漁師の常連客から話を聞くと、カッとすると手のつけられない乱暴もので、顔を十字に切られたものもいた。傷害事件で逮捕されて、拘置された時の面会書類から、塔子の存在を掴んだ。まるで探偵。協力してくれる神永がとても粋だった。そして、鎗田(國村準)は重要な役。サングラスのせいで、皮肉っぽいイタズラ好きそうなあの目が見えないので、セリフが沁みた。酒を買ってホームレス仲間に接触。民生委員の千晶。民生委員ってだいたい地域の他人の内情への好奇心がすごく強い世話好きおばさんがやるイメージ。ホームレスまでケアして結婚?
蕪木やるね。モテ期長い。
宇崎竜童は明治大学の軽音の後輩だった阿木燿子を捕まえたことが人生最大の金星。学生街の喫茶店がヒットしたガロの前身のバンドのマネージャーをしていた。本名は木村修史。ガロといえば日高富明が36歳の若さで自殺した。彼らの優れた才能は活かしてもらえず、アイドル路線で既成の作詞作曲家の楽曲を歌わされ、腐って解散してしまう。連続ドラマ「新・座頭市」で石原裕次郎の歌う主題歌や劇中挿入曲の演奏として日高富明とファイヤーのクレジットを見るだびにそれを思い出す。悲しい。
牧本と塔子はなんだかいい感じだった。ウェッジウッドのバラの花柄のペアカップや電車のホームのシーンがそう思わせてくれた。お墓を生前に買って所有しているってすごいけど、それを塔子に譲ると申し出る。牧本は塔子と結婚すれば、じきに蕪木と千晶と一緒にそのお墓に入ることになる。いいじゃないかと思った。
しかし、そうはならなかった。
牧本は無縁仏の納骨堂へ。
神永ひとりが花を手向け、牧本さんの粘り勝ちだと言うが・・・・なんか寂しい。
結局、二人の女とその二人の娘と孫に恵まれた蕪木のめちゃくちゃで豪快な人生のほうが牧本の単調な人生よりも、人生やったもん勝ちで、ずっと華があったと感じてしまう。
しかし、牧本は公僕に徹したのだ。そして、それは彼の信念であったのだから、ちゃんと見届けることさえできていたなら、幸せだったろう。
【アイ・アムまきもと】という作品名はケン・ローチ監督の「私はダニエルブレイク」へのアンサーソングならぬアンサー映画なのかもしれない。
本当に、がんばった。がんばった。
宇崎竜童のオーバーザレインボー🌈カッコよかったぜ👏
素晴らしいレビューです!
ガロにまで言及するとは・・・知らなかった。
さすがに市役所の方では社会保険に加入している限り、自治体で最低限の葬儀は為すそうですが、それでも遺族には請求が行く。自腹じゃなくてもいいのにね。
ホームレスとの結婚では『LOVE LIFE』を思い出しました。