「前前前世でいま、会いにゆきます」月の満ち欠け 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
前前前世でいま、会いにゆきます
どうも廣木隆一監督の作品は苦手だ。
評価の高いインディーズ作品は肌に合わない。かと言ってメジャー作品はあのベタな感じが…。少女コミックの実写化作品なんて特に。
本作はそれでも悪くはない方だったと思うが…。
数年前に妻子を失い、東京のエリート会社から故郷の青森・八戸に戻った堅。すっかり生きる気力を無くし…。
そんな彼の前にある日、一人の若い男・哲彦が訪ねてくる。全く面識無かったが、彼が言うに、かつて愛した亡き女性・瑠璃は堅の亡き娘の瑠璃の生まれ変わりではないかと…。
大切な人を失って今も悲しみが癒えない人にこんな変ちくりんな事を言うのはからかってるのか、頭がおかしいのか、それとも“マジ”か…?
でも、“輪廻転生”という言葉がある。身体は生きている時の入れ物に過ぎず、魂は死しても何度でも生まれ変わる…。
堅はそんな事信じてないが、あからさまに世迷い言と言いきれない節も…。死んだ娘・瑠璃には幼い頃から不可思議な言動があった。
“アキラくん”、7歳の時に一人で訪ねた高田馬場のレコードショップ、オノ・ヨーコの英語曲、高校生の時に描いた見知らぬ若い男性の画、瑠璃という名前の由来…これら伏線に。
世の中には自分のではない、前世としか思えない記憶を持って生きる人がいると聞く。それらもただの作り話とは言い切れず…。
死んだ娘の瑠璃はこの青年・哲彦が愛した女性の瑠璃の生まれ変わりなのか…?
大切な人を亡くした二人の男。やがて常識を超えた接点が見つかった時、その思いが繋がれていく…。
なかなか入り組んだ設定のヒューマン・ファンタジー。
原作ではもっと複雑らしいが、それを分かり易く泣ける感動作に仕上げている。
が、そこに巧みな手腕や作りは見えてこなかった。安全パイに置きにいった印象も…。
それ故本作は演者の魅力によるところが大きい。大泉洋、有村架純、目黒蓮、柴咲コウ、他子役も含め皆好演。
最近役者として売れっ子の目黒蓮の純情の青年は拾い物だったし、やはり有村架純は今何をやっても無双。ミステリアスで儚い年上の女性にKO!
死んでも尚生まれ変わる。それほどまでに会いたい人がいる。
タイトルの意味。月は欠け死んでも、また満ちて生まれ変わる。
生まれ変わり生まれ変わり、また巡り合って思いを伝えられた時、たった一人残って生きるあなたに、きっと…。
確かに感動誘う設定だ。
だけどどうしても引っ掛かる事が…。
娘に前世の記憶が。基本娘だが、その魂や思考に別人がおり、それは本当に娘なのか、赤の他人なのか…。
子供は空の上で親を選んで生まれてくるなんてメルヘンチックな台詞があるが、要はそれは、空の上から赤の他人の魂があの両親に狙いを付けて…って事??
パパとママの子供に生まれて幸せだよ…なんていじらしく言うが、何かちょっとしっくり来ない。
生まれ変わりは瑠璃だけかと思ったら、ある人も…! 執念深い女。本当に。
って言うか、あっちでもこっちでも生まれ変わり。
純愛、一途でピュアな思いに見えて、ある意味ホラー。
死んでも何度でも生まれ変わって、前世の記憶を持ってあなたに会いに行く。
来るぅ~、きっと来るぅ~♪︎