「傷口に盛り塩」月の満ち欠け ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
傷口に盛り塩
原作は読んでないんで分からないところは多いのですが、予告やあらすじを見る限り喪失と向き合う恋愛ものだと思うじゃないですか…。こんなサイコホラーだったなんていうオチがありますか…。
まず褒めちぎれる点として役者陣の演技はとても良かったです。大泉洋さんに有村架純さん、柴咲コウさん、田中圭さん、伊藤沙莉さんと万全の布陣で挑んでいるので演技合戦は見ものです。子役の方々も内容はともかく、表現力豊かで将来楽しみだなと思える子達ばかりでした。目黒蓮さんだけ滑舌が甘いのか何を言ってるのか分からない場面が多かったのが少し残念でした。
ただ他はトンデモ要素のオンパレードでした。まず転生要素が都合良すぎて超速で冷めました。瑠璃という女性が上手いこと転生を繰り返して、求めていた男性の元へ向かうというテンポの良さ。記憶がぼんやり残っているならまだしも最終的に言動も瑠璃本人だし、記憶もガッツリ残っているし、小山内の事をパパって言ったときには失笑ものでした。アキラに出逢いにいくシーンも側から見たら女児とオッサンが抱き合っているという若干怪しい図になるのも引っかかりました。なんなら事故で亡くなった小山内の奥さんまでも、小山内の母親のヘルパーさんの子供に転生して終盤で正体を明かすとかいうクソみたいな所業をするもんですから、ヘルパーさんが不憫ですし、小山内もきっとその子を見る目線が変わるでしょうし、誰も幸せになれそうにないラストは素っ頓狂でした。あと転生に対して順応するスピードが小山内以外とてつもなく早くて、自分の子供が知っている人物の生まれ変わりだったら信じたくないですし、その記憶を忘れさせたいとも思ってしまいます。いくらなんでもえりが娘に瑠璃と名付けるのはお門違いな様にも思えましたし…。
次に観客をバカにしたような台詞回しです。序盤で乗れないなと確信した理由として瑠璃の親友のゆいの発したセリフが「娘の瑠璃さん、奥さんの梢さん」という言わされている感満載で違和感ありまくりでした。伊藤沙莉は素晴らしい女優さんだと思うので、これは監督の指示に問題があるなと思った次第です。
まだまだありまして、時代が進んでいるのに登場人物の変化の無さにも違和感がありました。柴咲コウさんはかろうじて歳の区別が付きましたが、大泉洋さんはまんま大泉洋さんのまま20年くらい経ちましたし、目黒蓮さんは髪型を少し変えただけでは30代半ばには見えません。大学生の頃のエピソードと何も変わっていなかったです。伊藤沙莉さんの女子高生はさすがに違うかなとも思いましたし…。
田中圭さん演じる正木の狂いっぷりもよく分からなかったです(演技は狂気が宿っていて最高でした)。嫉妬深い人物だとは思うんですが、転生後の瑠璃を見つけてとっ捕まえに行った挙句、交通事故で瑠璃と梢が亡くなるというお前が引き金だったんかい!という都合の良い転生の被害者が量産されていました。
感動のかの字も出てきませんでしたし、泣けるわけもないですし、頭を抱えざるを得ない出来でした。特に期待をしていた訳では無いんですが、ここまで相性が悪いとは…。年末の魔物はこの作品だけだと願いたいです。
鑑賞日 12/6
鑑賞時間 12:25〜14:45
座席 A-5