「もったいない(特に目黒さん)」月の満ち欠け れいさんの映画レビュー(感想・評価)
もったいない(特に目黒さん)
原作(小説)既読。
原作とは構成等違うだろう、と承知の上で鑑賞。やはり勿体無い。
演者さん達はとても素晴しく良かった。
けれどストーリーの構成が。
あの内容を1本の映画に収めるのには、やはり難しいのかもしれない。
まず、田中圭演じる正木竜之介(有村架純演じる正木瑠璃の夫)
映画では、執着心の強い典型的なDV夫と言う設定で描かれていたが、原作では浮気夫であり。
浮気相手の女がわざと正木家に電話をかけ瑠璃に存在を匂わせたり、出張と言う名目で家を多くあけ女と会っていたり。また浮気相手の女は2度、竜之介との子供を堕胎しており【1度目は瑠璃との婚姻中(瑠璃はその事実を知らないはず)、2度目は瑠璃の死後(流産)】
ここは、原作に沿っていて欲しかった。
(小山内親子を事故死させてしまう展開的にする為にも、竜之介のDV夫の要素が必要だったのかもしれないが。)
竜之介の先輩が自殺した話、希美ちゃんとの展開、竜之介の最期は一切省略されている。
瑠璃は、竜之介から今この瞬間逃れたく、そんな中、出会った三角を心の拠り所にしていたのか、はたまた、竜之介のDV等関係なしに、三角に惹かれたのか。
(DV夫と浮気夫と言う設定は違えど)
原作では、瑠璃からどちらの気持ちも汲み取れ、瑠璃の気持ちは腑に落ちた。
また、まぁ、、お互い様(浮気)にね、、とも思えた。
が、映画では前者の理由に大きく傾いている気がしてならない。(自制心を効かせたかと思えば、、都合よく、受け身の三角に寄り掛かっているような)
三角とのシーンが先で強い印象として残っている中、竜之介のDV描写が断片的で、、。
映画では、この状況から逃げ出したく、不貞に走った不倫妻のイメージがなんだか拭えず、瑠璃に感情移入しづらかった。朝帰りを竜之介に咎められるシーンも含めて。
『瑠璃は、三角のどこに強く惹かれ、愛し、何度生まれ変わってもあなた(三角)に会いたいと強く思う所以は何か』これが映画ではとても薄く、あの一瞬の描写で、どうしてそんなに愛した?と疑問に感じた。
そして目黒蓮演じる三角哲彦。
彼のインタビューで、演じるのがとても辛く、メンタルも沈みキツかった等の記事を目にしていた為、期待していたが、、。
映画では、彼の言う、そこまでの三角のツラさは感じられず、、。
彼の演技がどうこうでは一切なく。
ただ『なぜそこまで三角は瑠璃さんを強く愛し、惹かれたのか。瑠璃さんの何が、三角の心を動かすのか』等、その過程が映画の構成上、なぜ、が、とても薄く、断片的なものであった為、伝わらず、彼の真摯なまでの役作り、せっかく三角の気持ちを自分自身が苦しいくらいに深掘りして演じた気持ちを考えると、とても残念な気持ちになった。
映画では演出上、瑠璃が初めての相手だったから執着?してしまったのでは?と思わせられてしまう感じ。原作の三角とは違う印象を受ける。
三角哲彦役の目黒蓮さんのインタビュー等のツラい意味を知りたい方は、原作を読む事をお勧めします。少なからず映画より、目黒さんの仰る、ツラいの気持ち(三角)に、少しでも寄り添えるのではないでしょうか。
瑠璃と三角の2人のシーンの映像美、大泉洋演じる小山内堅、柴咲コウ演じる小山内梓、とても安心して観れる役者さんでした。
伊藤沙莉演じる緑坂ゆいは原作とイメージは違いましたが。
個人的に、うるっとくるシーンはあっても、ボロボロに泣けるとまでならず。
原作を既に知っていた為かも知れませんが。
生まれ変わってもあなたに会いたい。と思える・思わせてくれる、相手と出会える事がどれだけ貴重な事か、幸せな事か。小山内夫婦と瑠璃と三角の2組をみて、とても強く感じました。
映画を観た後に、原作を読んだ方がいいかもしれません。映画では描き切れていない4代目までの、るり(希美)の話等、より詳しく理解出来ると思います。ただ梢の生まれ変わりと最後のシーンには少し複雑と言うか、、えどうするの、、と急に現実的に考えてしまいますよね。大人と子供が心で通じ合う描写が。側から見たらロリコンになってしまうのでは、と。そう言うものではなく、愛とは、と言う話をしているのは重々承知ですが。
目黒さんのファンの方は、原作は読まずにまず観て、その後、原作を読み内容を知った上で、再度2回目を観ると、また違った目黒さんが見えるかと思います。